秋下村塾

フランス旅行記 3月22日E エトルタへ

 

7:00、アラームにて起床。昨夜は早く寝たのに寝たりない。慣れてきた証拠だ。
メトロに乗りサン・ラザールへ。急行で一路ル・アーブルを目指す。今日の目的地であるエトルタは サン・ラザールから急行で2時間の後、バスでまた1時間行ったところにある。バスの時間は全く知らないので、 場合によってはル・アーブルまでしか行けないかもしれない。ル・アーブルは港町で、そこもそれなりに 楽しめそうだったので、最悪それでもよかった。

急行は8人用コンパートメントと普通の客車の二種類があり、どちらの席も値段が変わらない。 特に指定せず切符を買ったら、行きはコンパートで帰りは客車と書かれていた。

写真。今日はまた大きいサイズ。コンパート席の様子。

発車時刻よりかなり 早くついてしまったので、しばし車内で待つ。すると一人の男性が 入ってきた。同行者かな、と思っていたらおもむろに一枚の紙を差し出してきた。そこには 「子供がいるが仕事につけず困っている」という趣旨の内容が書かれており、同様のことを 話してきた。演技なのか判断がつきにくいが、まぁその紙を「買う」代わりと思い50セント硬貨を 渡す。するとその男は「その紙をまた他の人にも見せなきゃいけないから」と言い、紙を持って 去っていった。「俺の商売道具だ」ということだろう。少ししか読解できなかったので残念だった。
フランスにはこうした類の物乞いが非常に多い。メトロ車内でも「私は今定職についておらず・・・」といった 大演説をカマした後で手を出しながら車内を徘徊する老女や、歌いながら車内に入ってきて目が合ったら 手を出す輩などもいる。なるべく関わりあいになりたくないが、今回のように個室で攻められては 渡さざるをえない。

そんなこんなで9:10、定刻どおり列車は出発した。結局8人がけに同行者はスーツを着た サラリーマン風の男性一人だった。
発車してまもなく、検札と車内販売がやってきた。男性がホットコーヒーを頼んだので私もそれに倣う。 珍しく砂糖入りの、甘いのをお願いした。

男性はそれとなしにコーヒーをすする。私は折角のコンパートだし、何か話してみたい気もあったが、 きっかけがつかめない。
そんな時は、この手に限る。

「May I smoke here?」

尋ねてみた。「OK!」と男性は笑顔で語り、そこから会話が始まった。無論ここは喫煙席。禁煙席も ある為、こんなのはきっかけにすぎない。けれども、こういう時、煙草ってすごく役立つアイテムだと思う。

男性は化学会社のお偉いさんらしく、これからルーアンで大学教授と新薬について色々聞いてくるそうだ。
ルーアンといえばジャンヌ・ダルクの故郷である。もしエトルタへ行けなかったらルーアンで途中下車もいいな。

その後男性とは日本のことや、パリについて、日曜はどこも閉まってて大変だったことなど、色々話す。
前に聞いたことがあったが、やはり西洋人は我々東洋人の区別がつかないという。なので私を最初見たとき、彼は 私がチャイニーズかコリアンか、ジャパニーズか分からなかったという。付け加えて、チャイニーズは基本的に 同族で固まる傾向が強く(実際パリ13区にあるチャイナ・タウンのことを引き合いにしていた)、また、 ビジネスで来ているから貴方(=私)もビジネスでどっかに行くのだろうと思っていたという。逆に 私がジャパニーズならばきっと観光だろうとも言っていた。私は日本人だと答え、これから観光でエトルタまで 行くと話した。
会話の最初、彼はフランス語と英語を混ぜて喋っていたが、私が英語ばかりで話したので「英語とフランス語、 どっちがいい?」と聞いた。恥ずかしながら「英語で」としか言えなかった。
フランス語は難しい、と嘆くと、とにかく会話をするのが一番だよとアドバイスをくれた。 「like a child」の精神を忘れるな、とも教えてくれた。
話し続けること1時間、男性は名刺を渡し、ルーアンで降りていった。彼とは今もメールでのやりとりが 続いている。

さらに電車にゆられること1時間。ようやく列車はル・アーブルへと到着した。かつての日本の田舎駅のような 風格ある、綺麗な街だった。
早速バス案内所へ行き、「エトルタへ行きたいがバスの時間はいつか」と尋ねる。すると バスの時刻表をくれ、今11時だから次のバスは12時半だねと教えてくれる。ちなみに3.5ユーロだそうだ。

もらった時刻表から計算するに、エトルタでは3時間ほど時間があることが分かったので、充分観光が出来そうだった。 駅前のパン屋でフランスパンとコーラを買い、時間を潰す。
待つこと1時間、観光バスのような大型バスがやってきた。運転手はいかにも「西洋のマダム」といった感じの 女性だった。「エトルタまで」と告げ、代金を払う。
定刻どおりバスは出発。車内には有線だろうか、かすかにクラシックがかかっている。こういうところが日本とは違う。

バスに揺られて1時間、エトルタに到着。まずは奇岩城の舞台である断崖めざし、海岸へ向かった。
海岸での景色は筆舌に尽くすほど綺麗だった。まずは右手の断崖に上り、丘の上の教会近くで一服つく。 ついで左手の奇岩に登り、強風に煽られながら眼下の海を眺める。
日本にも東尋坊という絶壁が福井県にあるが、そんなものとは比べ物にならないほどの絶壁が広がっていた。何より ロープなどは一切ない。覗いて落ちようが強風に煽られようが、それは全て自己責任なのである(まぁ、 足場が悪いから気をつけろ程度の看板はあったが)。
丘の上を満喫しつつ、写真を撮っていたのだが、ここに来てついに電池が切れてしまった。あと 数時間持ってほしかったが、まぁ、しょうがない。最初に右側に登って良かった。ガイドブックに 載っている奇岩は向かって左手であり、そちらに登ってしまうと当然その写真は撮れなかったからだ。

というわけで、写真。断崖とか、鳥とか。

       

この絶壁、登るのにそれなりに体力を要するため、良い運動になる。右も左も見たところで 下に降り、続いての目的地であるルパンの生家に向かう。ここは冬季(10月〜3月)の間は 殆ど営業しておらず、今日も休みであることは事前に知っていた。中に入れれば音声ガイドつきで 楽しめるらしいのだが、生憎今日は外から家を眺めるに留まってしまった。

やることも大体終わったので、食事の場所を探す。海沿いのレストランに入り、オムレツと ビールを頼む。頼んだ直後にわかったのだが、頼んだビールは昨夜呑んで失敗した テキーラ割りのやつだった。銘柄しっかり覚えておけばよかったなぁ。
まぁほどよい運動の後ということもあり、そんなに不味さを感じることなく呑む。気分が よかったので食後にもう一杯頼んだ。今度は普通のカールスバーグだ。

満足したところでレストランを出る。バスの時間まであと40分ほどだったので軽く街を 散歩する。
エトルタは典型的な田舎町で、10分も歩いたらもう家がなくなるくらい小さな街だった。しかしながら そこは観光地。バス停を中心として店に事欠くことはない。土産やを物色するも、日本にも売ってそうな カモメやらマグカップやらしかなかったので何も買わない。最後にクレープを食して バスを待った。

帰りのバスもほぼ定刻どおり来て、再びル・アーブルへと戻る。ここでもまた1時間ほど あったので街をふらふらし、煙草を買って駅に戻る。ちなみに煙草は1箱4.5ユーロ前後。
大型バスで1時間ゆられるよりも煙草1箱の方が高いという現実に違和感を覚える。

結局ル・アーブル、エトルタを満喫した為にルーアンへは行けず、大満足のまま帰宅した。
パリに戻ってきたのが夜10時すぎ。いつもの店が閉まっていたので、今日は違う店で ハイネケンを購入し、帰宅した。

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