秋下村塾

岐阜旅行記

〜栃洞鉱区再訪〜

前回神岡鉱山・栃洞鉱区を訪れたのが昨年(2005年)の10月。このとき既に解体工事が 始まっていたものの、最深部と思われる工場の隅まで見学でき、感動を覚えたのも記憶に新しい。
今回の旅先を雛見沢に設定したのも、帰りがけに神岡に寄れると思ったからだった。

宿舎を出発し、少し場所を間違えて茂住の方まで行ってしまった。ここはここで一枚壁や 怪しい工場水などがあって見学したかったが、何と言っても今日のメインは栃洞である。いつ解体されるか 分からない場所であるとともに、昨冬の豪雪で更に崩壊してしまっているらしかった。
進路を松本方面に直し、神岡へ。見覚えのある山道を登り、寺の脇を通って栃洞鉱区へと到着した。
朝が早かったせいか、同業者はまだいない。そして連休中ということもあり、工事関係者もいなかった。

敷地内に入り、学校跡の碑の脇を抜け、坂道を降りる。見覚えのある団結小屋が見えてきた。

情報の通り、前回は閉まっていた団結小屋が開いている!内部に入り、組合旗や資料を片っ端から 写真に収める。当時の議事録や、新聞のスクラップなどが大量に収められている。凄まじいほどの 史料価値があり、まさに宝の山だった。

団結

旗

旗

旗

ハチマキ

小屋内部

社会党

ソヴェト研究

欲しいなぁ・・・団結旗。科研費で落としたいなぁ。

団結小屋を後にし、奥へと進む。トロッコ跡が懐かしい。

トロッコ

トロッコ

ここを抜けて外へ出て、そして足場の悪いところを歩いて・・・と行くはずだったのに。
トロッコ小屋を抜けてすぐのところに、最早崩壊が始まっていた。

崩壊

昨秋は大丈夫だったのに。年々劣化が激しいとは聞いていたが、いざ目の当たりにするとショックは大きい。

崩壊

崩壊の目の前まで行ってみたが、とても行けそうにない。行けたとしても奥の崩壊も激しく、最深部の 工場跡どころか絶景ポイントさえも行けそうになかった。

残念だがここで引き返し、今一度トロッコ小屋を撮る。冷静に見ればここの崩壊も激しい。

小屋

崩壊

高台から栃洞を撮る。もう一度ここに来る事はあるのだろうか。そのときはまだ、残っているのだろうか。

栃洞

駐車場まで戻り、脇にある神岡鉱山神社へ。ここも栃洞の解体とともに氏子が離れ、ふもとの 神社に吸収されたそうな。

神社

証書

帰りがけ、一人の人と出会った。遠く風貌からして工事関係者ではなかったので、何事もないように 通り過ぎようとしたら声をかけられた。話半分に合わせるつもりだったが、よくよく聞いてみると当時の 住民だったようで、懐かしくなって来たのだと言う。

当時の神岡の隆盛を誇らしげに話し、あそこのキャバレー(跡)には芸能人が沢山来たとか(具体名まで 挙げてくれたのだが失念。当時のビッグネームだったことは確か)、冬は毎年使い切れないくらいの薪を 分けてくれたとか、聞けば聞くほど当時の神岡の凄さを実感できた。
那須のときもそうだったが、組合運動が盛んだった頃、まさに学生闘争を地で行っていた人々は、 当時のことを昨日のように鮮明に覚えている。そこから見えるものは、組合が身近な存在であったこと、そして 組合の恩恵を沢山受けていたということに集約できる。薪の話にしたって、現在我々が聞けば社会主義の配給そのもの と思ってしまうが、当時はそんな理論ではなく、現実に薪が配られ、一冬を越すのに心配がないという「現実」が 勝っていたように感じられる。社会主義的な配給と、高度経済成長という資本主義的な発展が絶妙に絡んだからこそ、 60年代の所得倍増計画が成功したのだろう。そのことを考えると、理論ばかりが先行し、勝てるもののみが勝てるという 現代において、底上げ的な経済成長は実現出来ないんだろうなぁと思ってしまう。

私は現代の勝ち・負け志向を否定しないし、自分にも成功のチャンスが十二分にあることを理解している。しかしながら、 当時の日本のような、一億総脱平民的な志向にも哀愁を感じてしまう。そうした感覚を忘れさせないでくれるのが、 鄙びた温泉街であったり、戦後日本を牽引した鉱山なのだろう。

十分堪能したところで神岡を旅立ち、一路松本へ。途中少しずつ休憩を取りながら、松本市内を避けて 諏訪大社へ参拝。諏訪は上社、下社とあるうえに、上社は本宮と前宮の2つ、下社は春宮と秋宮の二つがある。
数が多く、車もそこそこ混んでいたので春宮のみを参拝した。

春宮

帰りは諏訪ICから一路東京へ。途中から帰京ラッシュに捕まり、ゆっくりと相模湖ICで降りて下道を疾走。
もろもろ時間つぶしをして、無事帰ってきた。

走行距離は1300キロ強。日本の約5分の2を走行するという強行軍だったが、どれもこれも楽しいところばかりだった。

また行こう。今度は茂住だ。

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