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感想文 古風堂々数学者 藤原正彦(著)

藤原正彦

なんかあったいかい文章が書きたいよね」 あたりから僕はずっと腹が立っていました。何かにつけて、 この藤原さんのように。

例えば、隣の人がいつも裸で、しかもいつも風邪を引いていて、風邪薬ばっかり飲んでいて、 「最近体調が悪くって、ゴホゴホ」とやってます。 すると、「それはあなたが裸だからよ」と教えたくなります。 「裸のまんまじゃあ、どんなに風邪薬を飲んでも直らないよ」と教えたくなります。 でも、その隣人は風邪薬を飲むことをやめず、服を着る気配が一向にありません。 しかも、それは隣人だけでなくって、結構、世の中の人が裸のままで、風邪を引いていたりすることが分かります。 雑誌を開くと、色んな風邪薬のことが書いてあるのですが、「服を着るとよい」と書いてあることはありません。

そうすると、だんだん腹が立ってきます。なんでこうなっちゃうんだろうなあ(怒)、と。

で、そんな状態に僕をさせた本がこの本です。 藤原さんは前にも「論理ではなく情緒」で取り上げました。 だから、もしかしたら、手にとって読んでくれた人もいるかもしれません。 まだ読んでいないのならば、そして特に数学に興味がなければ、比較的新しい本をお薦めします、この本とか。

この本を読むと、今、日本で起きている様々な諸問題の原因がいろいろ分かってきます。 藤原さんは、日本人が本来持っていた情緒を復活させよう、と言います。武士の精神を思い出そう、と言います。 もちろん、ただ昔はよかった、昔に戻ろう、ではありません。 ただ、グローバリズムでなくて、実質のアメリカ崇拝主義でのやみくもな輸入について、 情にもろく情に厚い、題名とは違って決して穏やかでない、半ギレエッセイ集です。

で、現在の日本がなんでこうなんだろう?と不満げに僕も考えてみると、 結局日本は戦争で負けたんだな、ということになります。 太平洋戦争が終わって、もうすぐ60年になりますが、結局日本は戦争に負けたんです。

戦争に負けるってことはきれいごとじゃあありません。 戦争に負けたら、女子供はみんな連れて行かれます。家は全部壊されます。名前は変えさせられます。 侵略者のために肉体を粉にして働きます。宗教もなにもかも変えさせられます。人格も存在も否定されます。

韓国や中国は「傷ついた、傷つけられた」とぎゃーぎゃー言いますが、 戦争に負ける、侵略されるとはそういうことです。当たり前です。 戦争を肯定するつもりはさらさらありません。ただ現実として、日本は、韓国や中国と同じで、 戦争に負けたのです。

そして、日本政府はアメリカに頭が上がらないとか、ぎゃーぎゃー言う人は、政府に文句を言うのもいいですが、 頭が上がるようにしたいなら、日本は独立戦争を起こす必要があるということです。 それは別に、武器を持って殺し合いをするということを一概に意味しませんが、 銃や爆弾を手に持たなくても、つまりは同じことです。

たまたまアメリカには土地が余ってますから、たまたま侵略に興味がなくって、 資源もなにもないですから、お金だけを落としてくれる植民地を欲していたのです。 日本は、経済的に、文化的に、アメリカの植民地です。 アメリカは、かつてのイギリスやフランスとは違って、そういう形式をとったのです。 アメリカは経済を支配するために、日本の文化さえもレイプしたのです。

レイプされた女性は、レイプされたという事実を受け入れられなくて、 その男性との貫通は真実の愛だったと思い込もうとすると言います。 それが本当かどうか、違ってたらゴメンナサイですが、そう思い込もうとするというメカニズムは なんとなく納得がいきます。

日本でアメリカの文化が幅を利かせているのも、日本企業が世界中に工場を建てて軋轢を生んでいるのも、 結局それはグローバリズムという名の弱肉強食で、じゃあそれを全部止めて鎖国すればいいのか?と、 大人げないことも考えてみますが、そんなことは決してなくて、 ただもし、もっともっと!と完璧を求めたいんだったら、 この世の中は、一個人の頭では想像もできないくらい複雑な計算式を解かなくてはならなくて、 なにが起こっているかを考えることを、僕もそろそろ止めて、ただ流れに身を任せて目の前のことだけを考えて みようかと思ってしまうのです。

03.11.03


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