4. 異世界の迷い人 3

 あれから、一時間ほど森の中を歩き回り、木々が途切れた所に目指す村があった。
 そこは一面の田園地帯だ。
 麦畑の緑と金色のまばゆいコントラストが、ずっと続いている。
 まるで、絵画を思わせるような美しい風景に、一同は呆然と立ちつくした。
 豊かな穀倉地帯の中に、まばらに作業をする男女の姿がある。
 村の建物は、その田園地帯の中心に密集するように建っていた。
 建物のほとんどが、森から切り出した木を利用しているようだが、中には石造りの神殿もある。
 村の向こうには、さらに、海のような光景がずっと広がっていた。
「うっそお! これが全部、人工のものだっていうのぉ?」
 裕子が叫ぶと、二トルはあっさりと頷いた。
「そうです。」
「『そうです』なんて、いってほしくないぜ。すべてが地球そのものだ。…この土も。そこらから、沸いて出るようなものじゃない。」
 倉川ジョウは、足元の土を拾うと握りしめる。
「うちらの惑星開発技術って、いったい何なのかって、いいたくなっちゃう!」
 ケインが、両手を大きく広げた。
「さあ、こちらへ。村の広場がございます。」
 別の男に先導されて、一同は、ようやく村の中心にたどり着いた。
 驚きは、村についてからも続いた。
 おもむろに、家の中や農場から出てきた子供たちが、喜びいさんで駆けつけて来た。
 そして、それぞれの男達に飛びついて、甘えたりねだったりしはじめた。
 さらに、女達もやってきて、帰ってきた男達を労わり迎えようとする。
 誰が見ても、心が和む温かい光景だ。
 この男達のほとんどに、養うべき家族がいたのだ。
「やられたな…。」
「うん…。」
 ぽつりといった島村ジョーに、鉄郎が小さく頷いた。
 養護施設で育ったジョーと、両親がいない鉄郎には、詰まるような思いがこみ上げてくる。
 温かい触れ合いが、とても羨ましく思えた。
 家族の触れあいに癒されたのは、他の仲間達も同じだ。
 あのベルモンドやロバートでさえ、安心した表情で村人の様子を見守っている。
 なぜなら、盗賊か悪人にしか見えなかった彼らが、本当は善良な人間達だったのだ。
 二トルの村こそ、理想郷であり、平和と笑いが渦巻まく安息の地だ。
 確かに、身を置くには、とても快適な場所だ。
 しかし、その明るさが、二トルの重い一言で一気に暗く沈んだ。
 トリトン・ウイリアムと一条アキが、独裁者ラムセスとジオリスに、囚われているかもしれないという報告を聞かされたからだ。
 静まりかえってしまった村人達に向かって、鉄郎が強く訴えた。
「悲しむのはまだ早いよ! 二人は必ず生きている! 俺達が必ず救いだす!」
 すると、二トルを含めた村人全員の視線が、鉄郎に集中した。
 口走った鉄郎は、彼らの奇異なまなざしを感じると身を硬くした。
「何? まだ、あたしらのことを疑ってんの?」
 ケインがしゃしゃり出ると、二トルがおずおずといった。
「いえ、そんなわけでは…。しかし、助け出すというのは、あなた方のお力で可能かどうか…。」
「義務だ。」
 鉄郎は断言した。
「俺達には役目がある。そのために、すべてを知りたい。この世界の全部のこと。あなた方のことも。ラムセス親子のことも。…教えてくれるよね?」
「鉄郎!」
 背後にいたロバートが叫ぶ。
 瞬間、鉄郎は、バッと身を伏せた。
 反射的に、ベルモンドを除いたメンバー全員が、鉄郎のカバーに回った。
 飛んできた矢を、鉄郎は、体を丸めてよけた。
 その体勢で、目前にいた二トルに銃をつきつける。
 二トルは動くことができない。
 同時に。
 倉川ジョウとロバートが、銃を撃ち込んだ。
 茂みに潜んでいた三人の男達めがけて。
 三人の男は射竦められた。
 他の仲間、島村ジョー、ケイン、ユーリィ、裕子は、周囲の村人達を銃で降伏させる。
「信用できない立場もわかるけど、俺達はあなた方の敵じゃない。無駄な争いは避けたい。」
 鉄郎がそういうと、二トルは苦笑いを浮かべた。
「わかりました。戦士としての腕を試させてもらいました。どうか、お許しください。」
「聞くだけヤボだぜ。んなことは。」
 ロバートは呆れる。
 倉川ジョウもいった。
「中にはプロもいる。勝負して負けるのは、おたくらの方だ。」
「失礼いたしました。」
 二トルは姿勢を正した。
 村人達も、それに習って敬意を払う。
「やっと、客人として迎えてくれるわけね。世話が焼けるわ。」
 ケインは皮肉をいった。


※  ※  ※  


 その夜、開かれた宴の席で、二トルは、空白に思われていた、アトランティスの不思議な歴史を語りはじめた。
 時は、およそ紀元前五千年頃。
 当時の王、アエイドロスニ世に対して、幾つもの内紛が起こっていた。
 そのせいで、アトランティスの首都、ポセイドニアの美しい街並みも廃墟と化した。
 しかも、手を出すのをこまねいていた大陸の国々も、アトランティスに軍隊を投入し、征服しようと侵入を開始した。
 アトランティス末期の王朝は、そんな動乱の時を迎えていた。
 だが、その時、アトランティスに救世主となるべき人物が現れた。
 それが、アエイドロスの子、トリトン・アトラスである。
 トリトン・アトラスは、アトランティスだけに存在したという謎の金属、オリハルコンを自由に操ることができる最強の使い手だった。
 彼は、オリハルコンとポセイドニアの人々を救うために、大陸が沈む直前、この異世界に転移して、第二のアトランティスを再建しようとした。
 国の名もアトラリアとし、信用できる民衆らを従えて、オリハルコンを守りながら理想郷を築くことを、一から試みた。
 だが、その望みもすぐに絶えてしまった。
 先に、エジプトから侵入してきたラムセスの一団に、トリトン政権が略奪されてしまったのだ。
 ラムセスは、無慈悲に指導者とはいえ、十四歳のトリトン・アトラスと使徒のアルテイアを処刑してしまった。
「その後は、みなさんがトリトン・アトラスから聞かれた通りです。純粋なアトランティス人達を、オリハルコンの生贄として捧げ、現在もなお、後から生まれたジオリスとともに、このアトラリアに君臨して、アトラリアの民を苦しめ続けているのです。」
 その時、倉川ジョウが質問した。
「ちょい待った。おおよその流れはわかった。だが、なぜ、トリトン王はラムセスを引っ張り込んじまったんだ? そいつも、大陸があった時代に、アトランティスにやってきた侵入者だったんだろ?」
「ラムセスは、トリトンによって助けられたのです。話によると、彼の祖国であったエジプトも、相当、ひどい状態だったようです。王族の血を引くラムセスは、それまで、かなりの苦労を背負ったようですな。トリトンには、他人事には思えなかったのでしょう。何しろ、その時のトリトンは、まだ十四歳の少年でしたから…。」
「相手を信じきっちゃったのは、若さゆえというわけね?」
 ユーリィが相槌を打つと、裕子が憤慨した。
「許せないわ! 人の恩を仇で返そうとするなんて!」
 二トルは、さらに続けた。
「それから時が移り、我々の世代も移り変わりました。もともと、アトランティスは、エジプトとも盛んに交流があったと聞いております。しかし、この街は、半分がエジプト文明、もう半分はアトランティス文明と、二つの文化が融合し、独自の文化を築きつつあります。だが、その繁栄は見せかけです。人々は、ラムセスの独裁政治に諦めきっています。無気力で荒廃しきっているのです。そのために、あらゆる犯罪が横行し、民衆は重税と、王家の命令で強いられる、きつい労働に泣くしかありません。しかし、そんな暗い世界に、明るい光が差し込んできました。」
 二トルの語気は強くなった。
「『トリトンとアルテイアが復活する』という、噂が流れはじめたのです。魂となったトリトンとアルテイアに、我々は導かれました。決起した仲間は家族を伴い、街を離れたのです。そして、このテグノスの森に移り住み、ラムセスの反圧制活動を行っています。トリトン・ディウル・ド・アトラスは、こう告げられた。“今年は、肉体とともに、復活できる運命の年である”と。…。」
 二トルは、ふっと目を閉じた。
「その言葉の通り、あなた方と、第二のトリトンとアルテイアになる者がやってきた。我々は、心待ちにしています。その方々こそ、必ず、かつてのアトランティスの繁栄をもたらしてくれるはずだと…。」
 ケインは深く溜息をつくと、ぼやくようにいった。
「熱弁ごくろうさんって、いいたいけど…。おじさん、今のトリトンには、何も期待しない方がいいわよ。処刑されちゃったトリトンに、外見はそっくりかもしれない。でも、中身はまるで別人よ! 自己中心的、態度も横柄、口も悪い! 人のために尽くせるようなタイプには、とうてい思えないわ。」
「あらっ、それって、ひどいじゃない!」
 ユーリィは目を丸くすると、すかさず、訂正しだした。
「あの子、頭がいいし信頼度も高いわ。勇気もあるし行動力もあるじゃない。それに、オリハルコンもちゃんと扱うことができる。あたしが思う限りでは、とっても優しい男の子よ。いい王様になれる素質は、十分にあると思うけど…。」
「バカね!」
 ケインはユーリィを睨みつけた。
「ここで、こいつらを失望させとかないと、トリトンが、マジに王様にされちゃったらどうすんの!」
「そうですよ。こっちが、もとの世界に帰れなくなるかもしれないのですよ…。」
 ベルモンドが嘆くように言った。
「それにしても、他のみなさんは、ちゃんと考えていらっしゃるのでしょうか?」
 ベルモンドの発言に、ケインとユーリィはムッとした。
 酒を機嫌よく飲み干すロバート。
 ジョウと裕子の兄妹は、しかめっ面をしている。
 島村ジョーとレイコのコンビは、肩を落として元気がない。
 鉄郎は、ずっと押し黙ったままだ。
 じれたケインがわめいた。
「ちょっと、そこのスカラウメンバー! 黙ってないで、なんとかおいい! 何か、いい知恵はないの?」
「深刻になってもしゃーねーだろ! これだけ酒がうまいと、ここに居座ってもいいって気になるぜ! ほら、遠慮せずにお前らも飲め、飲め!」
 ロバートは酒の勢いもあり、陽気に声をかけまくる。
「だめだわ…。」
 ケインは頭を抱えた。
 ケインもそうだが、この世界の住人になりすますために、抵抗もあったが、全員がギリシャ風の衣装を着込んでいた。
 鉄郎がふいに立ち上がった。
 何もいわずに、林の中に姿を消した。
「あっ、どちらへ…。」
 二トルが声をかけようとした時、島村ジョーが口を開いた。
「一番、堪えているのは、あいつかもしれません…。納得はいかないだろうが…。あいつは、姫さん…いや、アキの婚約者だ…。」
「あの方が?」
 二トルは呆気にとられた。
「もともと、トリトンと俺達は違う世界の住人だ。」
 ジョーがそういうと、二トルは言葉をなくした。
 すると、レイコが、いきなり立ち上がった。
 驚くジョーに、レイコがいった。
「見てくるわ。今の鉄郎ちゃん。何をしでかすかわからないよ。」
「確かに、あいつが暴走しだすと、手がつけられない…。でも、お前が行ったって、説得できるものじゃないぞ。」
 レイコは、ジョーを無視して鉄郎の後を追った。
 舌打ちしたジョーは、さらに、レイコを追いかけた。


 鉄郎は、茂みの木の下で空を見上げていた。
 しばらくして、レイコが、鉄郎を見つけると近寄っていった。
「よかった。このまま、この村を出て行っちゃうのかと思ったわ。」
「そこまで無謀じゃないさ。」
 レイコに気づいた鉄郎は、苦笑しながら空を見上げた。
「不思議な世界だな…。ちゃんと星が見える…。」
「日本じゃ、こんな星空、もう見られなくなったものね〜。あれ、本当の天の川かな…。ものすごく綺麗…!」
 無数にまたたく、星に似た輝きを見つながら、レイコも感激した。
 澄みきった空気の中で、こぼれんばかりの光を発した無数のものが、満天の夜空を彩り、美しい輝きを放っている。
 そんな夜空を見つめていると、吸い込まれそうな感覚にふと襲われる。
 鉄郎が、また黙りこんでしまうと、レイコはさらに声をかけた。
「やっぱり、アキのことが心配?」
「そりゃね…。でも、どうしていいのかわからない。何も、アイデアが浮かばなくて…。」
 鉄郎は深い溜息をついた。
 レイコは鉄郎をじっと見返した。
「それだけじゃないでしょ? ほんとは、トリちゃんとアキがくっつかないか、そっちの方が心配なんじゃない?」
「それは…。」
 鉄郎はいいかけて小さく笑った。
「アキの気持ちしだいだ…。」
「う〜そだ! ちゃんと顔に書いてあるわ。やせ我慢してますって!」
 レイコがニヤリと笑うと、鉄郎はそっぽを向いた。
「からかうな!」
 レイコ鉄郎に言い返した。
「ごめん、ごめん! でもね、そんなことになったら、あたしが、アキをおもいっきりひっぱたいてやるわ。なんたって、あたしは鉄郎ちゃん支持派ですから。」
「ありがとうって、いっておきます。」
 鉄郎は苦笑した。
 そこへ、ジョーがやってきた。
 鉄郎の姿を見つけると、安堵したようにいった。
「どこにも行かなかったんだな。」
「俺をいったいなんだと思っているんだ? 二人して。」
 鉄郎がぼやくと、ジョーは肩をすくめた。
「普段のお前の行動を見ていたら、信用なんかできるか。」
「お前の相棒なのに…。」
 鉄郎は、そういって肩をすぼめた。
 しかし、すぐに険しい表情になった。
「本音をいえば、あんまりのんびりとした気分でいられない。かなり、ヤバイことになってるかもしれないんだ…。」
 鉄郎がぽつりというと、レイコが首をかしげた。
「どういうこと?」
「レイコは知ってる? 古代エジプトの歴史。」
「世界史で習ったくらいのことはね…。でも、第十七王朝っていったら…。」
 鉄郎がいった。
「一番、はっきりしない時期さ。調べたことがある。ツタンカーメン王がいた頃よりも、前の時代にあたる。この時は、エジプトも異民族の制圧を受けて、暗黒の時代を迎えている。その混乱の中から脱出してきたのが、この国の王となっているラムセスだ。」
「随分、詳しいな。」
 ジョーが感心した。
「ラムセスというファラオは、その後のファラオの中でも偉大な王の名として、いくつも継承されている。ラムセスと名のついた王は、どの王も偉大な王とされてきた。歴史はなくても、今のアトラリアのラムセスは、自分の国の混乱を切り抜けて、この別世界で権力を誇示している王だ。それだけでも、今のラムセスの功績は大きい。」
「だから?」
 ジョーは目を細めた。
「トリトン・ディウル・ド・アトラスは、ラムセスの力を見抜くことができなかった。俺なら、力のないラムセスに情けをかけようとは思わない。当然、後の国の再建問題で、強力なライバルになることくらい予想がつくからね。」
「そりゃ、お前がお家騒動を経験してるからだ。」
 ジョーがいった。
 鉄郎は口調を強めた。
「“織野鉄郎”の洞察力を甘くみてほしくないな…。その男が、最高権力者だ。しかも、数千年を生きている。それに比べてたら、今のトリトンは十七歳だ。相手の人生経験が豊かすぎて、あまりに不利だ。力でぶつかっていっても、本質が見抜けなかったら、勝ち目はないかもな…。」
「そんな…!」
 レイコは叫んだ。
 だが、いきなり身を乗り出すと、決然といった。
「街へ行こうよ。鉄郎ちゃんは、最初からそのつもりだったんでしょ? だったら、こんなところでくすぶってるなんて、もどかしすぎるわ!」
「おい、レイコ…!」
 ジョーが慌てたように声をかけたが、レイコは、耳をかそうとしない。
「あたし達が力になってあげなきゃ! いつも、あたし達は鉄郎ちゃんとアキに助けてもらってるんだよ!」
「そうだったっけ…。」
 鉄郎は照れた。
「街へ行くのはいいが、どっちの方向にあるんだろう。」
 ジョーは考えた。
 すると、レイコがいった。
「どうせ近くよ。あたし達、そうやって、いつも反旗を翻してきたじゃない。」
 鉄郎は頷こうとした。
 その時、視線の先に人影が見えた。
 思わず、鉄郎は駆け出すと、茂みの中に手を伸ばして影の腕を掴んだ。
 引っぱり出してみると、相手は十三歳くらいの村の少女だ。
「離してよ! このオジン、何すんの!」
 鉄郎の手を払いのけると、少女は、鉄郎をキッと睨みつけた。
「誰がオジンだ!」
 鉄郎が怒り出す。
 その様子を見ていたジョーは笑いだした。
「鉄郎がオジンだなんて、どういう目をしてるんだ?」
「鉄郎でも、老けて見られることがあるのね〜!」
「あのな…!」
 鉄郎は、身を震わせた。
「もう、静かにしてよ!」
 少女は三人を憎らしげに見つめた。
「今のうちに、街の“踊り場”に行こうとしてるのに〜!  大人の連中に見つかっちゃうでしょ〜!」
「街?」
 三人は思わず合唱した。
「街の行き方を知ってるのか?」
 鉄郎は、また少女の腕を掴む。
「痛い! 村の若者はみんな街に憧れてるわ。だから、みんな内緒で出入りしてるんだからね!」
 少女はいいながら暴れだす。
「それより離してよ! でなきゃ、わめいてやる! 痴漢〜! 助けて!」
「お前のようなガキなんか相手にできるか!」
 鉄郎は呆れた。
「それに、悲鳴っていうのはこう出すんだよ。―助けて!」
 少女はひっくり返った。
 鉄郎はお得意の発狂レベルの悲鳴をあげた。
 それで、すっとんでこない人間はまずいない。
 少女は、村人全員に発見されてしまった。
「バカァ…!」
 少女は嘆いた。
「また、村を抜け出そうとしていたのか。ドーラ!」
 二トルが雷を落としかけると、鉄郎が少女をかばった。
「この子を責めないでやってよ。街に案内してもらうことにしたから。」
「そんなバカな!」
「すべてを確かめさせてもらいますよ。」
 鉄郎は断言した。
「俺は街へ行きます。止めてもムダです。」
「そういうことか。」
 倉川ジョウはニヤリとした。
「だったら、右に同じだ。」
「そういう話は、うちらの前でしてくれないと…。」
 ケインがその気になった。
「しかし…。」
 二トルが渋い顔をする。
 ロバートが身を乗り出した。
「俺も同行する。だったら文句はないだろ。保護者つきだ。」
「やもえませんな…。」
 二トルは溜息をついた。
「で、街にいって何をする気だ?」
 ロバートがそういったのに、地球人メンバーとケイン、ユーリィは一気に卒倒した。
「アキとトリトンを探しに行くんでしょ? そのくらいピンと閃いてよ!」
 裕子がわめいた。
「あの…、私は…。」
 おどおどしながら、ベルモンドがしゃしゃり出ると、鉄郎は軽く声をかけた。
「おたくとは一時休戦だ。ここに残ってな。ついてきても、身動きがとれないだろ?」
「わけが解らないのもいるけど、善は急げね。早く行きましょう!」
 ケインは一同を促がした。
「よろしくね、お嬢ちゃん!」
 ユーリィがそういうと、少女はフンと鼻を鳴らした。


※  ※  ※


 一行は、すぐに街に向かった。