
CHAPTER 9 幼児体験に基く自然観
〜過去に訪れた海の中でも(たいして行ってないが)、サイパンとランカウィ(マレーシ
ア)の魚は、人に慣れていた。それはそれで、楽しいのだが、タヒチの海で出くわした、
小さな黒いスズメダイ、こいつに近寄ると、
「おうおうおう、ここは俺んちだぜ、誰に断って入ってきやがったんでい」
と言う感じで、威嚇して来たりする。せいぜい5〜6cmの小さな奴なのだが。どっちがい
いかと言えば、自然な姿の方と思うが、“自然”と言うものは、結構人間には優しくない。
ムツゴロウ以外の人間は、そりゃあ虎やホオジロザメに出会ってしまえば、
食われることもあるだろうし、小さなマツモムシ(水生昆虫)でも、捕まえ
りゃあ口で刺すし、へっぴり虫捕まえりゃあ屁をかまされる。無条件で「美しい」とか「
すばらしい」自然界では、ありませんな。否定する訳ではなく、そこに畏敬、畏怖が存在
しているか、が問題だと思う
マツモムシに刺されたのも、ミイデラゴミムシに屁かまされたのも、たった1回の経験
でしかないが、あの強烈な体験は忘れられない。考えて見れば、マツモムシの痛みは、普
通の針を指に刺す、しかもチクッではなく、グサッという痛みだ。痛いの当
たり前。蜂に刺されたこともあるが、毒を考えなければ、マツモムシの方がはるかに痛い。
へっぴり虫は、人によっては、カメムシやマイマイカブリと勘違いしているかもしれな
い。これらのタイプは、嫌な臭いを出すもので、ミイデラゴミムシのは、はっきりとした
ガス爆発である。例えれば、前者は知り合った二十歳のころの可愛かった彼女のオナラ、後者は20年連れ添ってアザラシと化したかあちゃんの屁。
ミイデラゴミムシには花園保育園在席時に出会った。目の前を歩いている彼を、何気な
く掴んで見たところに、やられた。激痛です。びびった私を尻目に、かれは去っていった。
後に調べたところによると、体内に蓄積している2種類の化学物質を放出することにより、
強酸性だか高温だかに化学変化させ、それを敵にかける、と。
この時、あまりの衝撃に呆然とした保育園児哲を尻目に、悠然と去っていくミイデラゴ
ミムシの後姿を、今でも思い出せる。〜
サイパンの海と、別れを告げ、サンロケに行く。雨のせいで、日本人の出没率が高くな
っていた。が、ここにはそれほど惹かれる物も無い。DFSにも行ったが、当時ほとんど
働いていなかった私には、免税といえども、高いものは高い。ニットのシャツをひとつ買
っただけで、出る。
夕食は“イージーキッチン”という、日本人が経営しているらしいのだが、まあ、料理
も“イージー”ってな感じでした。
このあと、酒を買ってホテルに戻り、風呂に入って、さて、飲むか、と出てみれば、松
藤&宮下、もう寝ていた。
速やかに就寝した4人だが、翌朝、大変な事態が待ちうけていようとは、
夢にも思っていなかった。
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