
CHAPTER 4 ムラサメ
朝食は、ホテルのカフェ。しかし、暑い国ってのは、なんでこんなに冷房を効かせるの
だ?寒い。しかも、今日は(今日も)天気が良くなく、気温も低いのに。
食事をしながら、今日は、いかにして過ごすか、という話をしていた。というのも、天
気があまりいい感じではないからである。昨夜は、
「まあ、明日の朝には南の太陽が俺達を寝かしておかないだろう。外に出て、朝日に
白い歯を輝かせながら、俺はこう言うのさ、『ああ、まぶしいっ』てね。」
ところが、そんな宮下の言葉とは裏腹に、どんよりとした空、しかも、結構涼しい。だ
が、せっかく南の島に来て、海に入らんというのも、如何なものか、ということで、とに
かく一発海に入ろう、ということに。
ビーチ前でマスク&フィンを借り、海に入る。寒い。が、餌付けされて慣れているから
であろうか。すぐに、魚どもが寄って来た。
「お、なんかカワハギ系の魚がいるな。こいつ結構綺麗じゃねえか。」
これが、彼と私との、始めての出会いであった。私は、子供のころから図鑑を見るのが
好きで、また、『生き物ばんさい』や『野生の王国』、またいまでも『生き物地球紀行』
は片っ端から見ているので、だいたい、大雑把な種類の判別は出来る。TV画面の魚を見て、
「おっ、ミシマオコゼだ。」
と呟くような、自称日本一の陸ダイバー。
ここで出会った彼も、明らかにカワハギ系の魚なのだが、その色のバランスが良くて、
気に入ってしまった。

後に調べた結果、“ムラサメモンガラ”であることが判明。
〜新婚旅行でタヒチに行った折、彼に再会。沖にボートで出て、日出子と一緒に海に入っ
たのだが、ほとんど泳げない(ジャケット着用)日出子を置き去りにして、ムラサメを追
いかけ、ふと顔を上げると、二人の距離は50mを越えていた。周囲には2人
以外、誰も居ない。
「新妻を置き去りにするなんて、信じられん。別れるか。」
と、彼女は思ったそうな。〜
閑話休題。とにかく、俺は魚が好きだ。宮下は泳ぐのが好きだ。宮下と、もう一人吉田
(西憂紀参照)という共通の友人がいるのだが、この2人は、一緒に海にいくと、必ず、
“ここから先は遊泳禁止のブイ”が浮いているところまで行って帰ってくる。そのとき、
彼らの周りに人影は無い。
この時も、見えなくなるまで離れていった宮下は、
「不発弾を発見した。」
と言っていた。
このビーチは、その地理的条件により、マリアナビーチリゾートのプライベートビーチ
の様になっている。僻地だからか、あるいは天候のせいか、我々以外には、2グループの
計5人しかいなかった。そこそこ魚影は濃い。ただし、噂には聞いていたが、すさまじい
数のナマコが、足下にすっ転がっている。泳いで行くと、ナマコの群れに突入し、足を着く所が無いため、泳ぎ続けなければ行けないのである。さすがに、ナマコは踏みたくない。
そう、欠点はナマコと、不発弾。
昼食は、ピザ屋の“ルドルフォス”。ボリュームがある、ということだったが、注文時
にお互いの意思が疎通せず(店員と我々、ではなく、我々と我々)、なんか色々注文した挙句、タコスが3種類出てきて、腹が膨れた、いや満足満足、というところにピザ登場。
しかも、まずいぞ。ガイドブックを読むと、
「うん、美味いとは一言も書いてない。」
なるほど。ただ、マンゴーと、クランベリーのジュースは美味しかった。
そう、熱帯ではフルーツ食っとけ。
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