常雨

  CHAPTER 3   「マンゲ」は本当に「美味しい」という意味


 また無駄な時間を費やした。空港には、14時過ぎに着いたのが、いつの間にか、18時近 くになっている。空港から30分程度でつくホテルなのに、何故だ。

 ここ、マリアナリゾートは、部屋が独立したコテージになっており、我々の部屋は、フ ロントのある建物からは、公道を隔て、そこからさらに、歩いていくには辛い坂を登って 行かなければならない。ゴルフ場を併設しているためか、通常はカートを使う。コテージ の手前の駐車場まで車で登り、部屋へ。902号室。
 アネックスタイプとかいうらしく、リビングのようなスペースを、2ベッド×2、1ベ ッド×2の4つの部屋が囲むようなつくりになっている。部屋に置いてあったメモに、日本 語でコメントが書いてあったので、読んで見る。
 「ゴキブリが3匹出る。注意。」
 先客の有り難い助言。

 902号室



 さて、このまま部屋で過ごすのももったいないので、外へ出るかと謀り、かといって行 く当てもない。地図を見ると、近くに、最近出来たという“ラ・フィエスタ・サンロケ” とやらのショッピングモールがある、と、そこへ行こうか、と。車で出る。
 入ってみるが、そんなに人はいない。ここで、ビーサン購入。一回りすると、腹が減っ てきた。飯をどこにするか、これは、滞在日数が少ない旅行では、なかなか神経を使う問 題である。
 以前、サイパンを扱っていたTVを見た時、
 「チャモロ語で、おいしいって、どう言うんですか?」
というレポーターの質問に、地元チャモロ人のおっさんが、
 「マンゲッ!
と答えていたのを見た私は、ぜひ地元チャモロ料理を食って、
 「マンゲッ!」
と言わないかん、と心に決めていたのである。

 ガイドブックに出ていた、数少ないチャモロ料理を食べさせる店、“チャモロハウス” へ。あらかじめチェックしていた料理、ヤシガニと、コウモリのスープ、どっちか食おう と、4人で協議。コウモリがお頭つきで出てくるのはどうか、と言うことになり、ヤシガ ニを食ってみんと値段を聞くと、「145ドル」という答えが。しかも、
 「100ドル。あ、ちょっと待って(店の中へ)、やっぱ145ドルね。(英語)」
 「…日本人向けに高くしやがったな。」
と直感した私は、それでも食いたそうな宮下と日出子を押さえ、これを却下。
 「やっぱ高いな。数が減ってるとか書いてあったしね。そんな生き物を食っちゃいか んよ。」
 「…金がないだけだろ。」(日出子)

 今回のサイパンでは、ここが一番良かった。なぜかマグカップに、カップラーメンのス ープだけ入れたような物を出してきたのを除けば。



 食事を終え、ガラパン散策。しかし、人通りがまばらである。まるで地方の温泉街のよ うに閑散としている。時期が悪いのか?
 第一ホテルの前にある店で、松藤が水着を買っている間、私と宮下は、店の奥にアダル トコーナーを発見。そこを見ていると、おもむろに日出子が現れ、
 「やっぱり白人はアレも白くて、だめね。黒くなきゃ、黒く。」
と言って、去っていった。
 「うーん、確かに。」
重たくうなずく宮下。



 部屋に戻り、まず松藤が、バスルームでゴキブリを退治。数分後、私が、トイレでもう 一匹を圧殺。靴で踏みながら圧力をかけ、血を流さずに殺す。
 この2人は、かなりゴキブリ慣れしている。
 早くも、残り一匹になった。

 ちなみに、この面子で旅行に行くと、日中の活動時に、子供の様にあちこち動き回るた め、夜は早い。この日も明日の予定を大雑把に企てて、さっさと寝た。



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