意 見 陳 述 書 平成17年4月27日 被控訴人 山下 ミサ子 発言の機会を与えていただいたことに厚く御礼申しあげます 私は、この場で3つのことを申しあげたいと思います。 一つ目は、何よりも現在入所している方や、私を含む退所者が、安心して本当の治療が受けられるようになることです。 そして、この裁判がそのきっかけになればと思っています。 この裁判を起こした直接の動機は、私たちハンセン病患者・元患者が一般の病院と同じ医療レベルになった全生園で、 誰に遠慮することなく、いつでも安心して治療を受けられるようになってほしいと言う願いからでした。 これまで全生園では、隠された医療事故を含む恐ろしいこと、許せないことが沢山ありました。治療に絶望して自殺した 患者や浴槽での溺死した患者、投薬ミスによる失明患者、更には医師によるセクハラ等と数え上げればきりがありません。 それも決して数十年も前の話ではありません。 この様なことが続く中で私の医療過誤が起きたのです。この裁判を起こす前に、 厚生労働省に対して今述べたような事故等を手紙で訴えたこともありました。でも、これに対してなんら回答もありませんでした。 私は、このようなひどいことが起こっていることを知って欲しい、もうこのようなことを繰り返して欲しくないという気持ちから この裁判を起こしました。 勿論、私に数多くの暴言を吐いた小関医師を許せないという気持ちも強くあります。でも、それ以上に、全生園を良くしたいのです。 私も何時、全生園にお世話になるか分からない状況にあります。そのためにも、治療を受ける人にとっても、暮らす人にとっても、 働く人にとっても明るい全生園であって欲しいのです。 二つ目は、国が控訴したことが許せないということです。 一審の判決後、国側が控訴をしない様、支援者の方々と厚生労働省に陳情に行きました。でも聞き入れてもらえませんでした。 今、国、そして、全生園は、自分たちの非を認めようとせず、間違いを隠して正当化しているように思えます。 特に、私が、先生の言うことを聞かず、薬を勝手に飲まなかったかのように言うことは許せません。私は、良くなりたいために 一生懸命薬を飲みました。 私は、この裁判が熊本での国賠訴訟の延長線上にあると思っています。国賠訴訟では、国の断念によってハンセン病 患者、元患者は人権を取り戻し、大変喜びました。しかし全生園では、非を認めず、相変わらず隔離政策の延長の中での治療が 行われていると思います。 三つ目は、全生園の現在の入所者のことです。 入所者の中には、私のこの裁判を金目当てだと思っている人達がいます。国にお世話になっているのだから裁判などすべきではないという人達も います。でも、「頑張って、応援しているから」と言って私の裁判を支援してるといってくれる入所者の方、 そして、職員の方もいるのです。私は、国にお世話になっているのだから文句は言えないと思っている人達のためにも おかしいことはおかしいといえるようにしたいと思います。 何よりもまず、国は、おかしいことはおかしいと認めて欲しいのです。そうしって初めて、私のような退所者にとっても、 入所者にとっても医療面で頼りになる全生園になるのではないでしょうか。 最後に裁判長にお願い申しあげます。私の後遺症はご覧のとおりで、今、足の後遺症が特にひどく早い時期にひざに 人工骨を入れる手術をしなければなりません。加えて心の支えとなっている主人が昨年6月に肺がんのステージ4の 末期と宣告され現在入退院を繰り返して抗がん剤で延命を図っている状態です。 この様な事情もあり、一日も早く結審して全生園の医療改善に繋がる判決をいただきたいと思います。 よろしくお願いします。 ありがとうございました。 |
山下ミサ子さんからのお礼状 拝啓 皆様にはお元気で毎日をお過ごしのこととお喜びを申し上げます。 さて、私の医療過誤裁判で、一審での判決では全面勝訴を遂げたことは皆様すでにご存知のことと思います。しかしながら、被告(国側)は一審の判決を認めず控訴に踏み切ったのです。 日本の裁判制度は三審制ですので控訴は仕方のないことですが、被告は己のミスを認めようとせず、あまねく悪を何とか正当化しようともがいている姿は醜くもあり、哀れにも思えます。 しかし、控訴された以上は一審に引き続き勝訴を勝ち取るまで頑張らなくてはなりません。これから二審で審議されることになりますが、その第1回公判が4月27日(水)午後1時30分より、高等裁判所825号法廷で行われることになりました。 私といたしましてはこれ以上の裁判を続けることは本意ではありません。理由としては、私の年齢と医療過誤における身体的後遺症による大変な疲れと、加えて主人が昨年6月に肺がんにかかり、 ステージ4の末期と診断され現在も入退院の繰り返しで、抗がん剤投与によりかろうじて延命しているという状況です。 このような私的な理由もあって、国側が控訴した直後から何とか控訴を取下げてもらおうと、真宗大谷派の酒井義一様・八重樫信之ご夫妻・東日本退所者の会の川邊嘉光様が代表で控訴取下げの署名活動を展開していただきました。 お蔭様でたくさんの署名が日本全国から届けられ、ようやく4月7日、厚生労働省と法務省に提出することができました。 私たちの気持ちが国側にわかってもらえず、あくまで争うということであれば、今後は高等裁判所にて新たに審議されることになりますが、国側の態度しだいでは私も内藤雅義弁護士をはじめ新たな弁護団を結成して対決していかなければなりません。 二審でもなんとしてでも勝訴を勝ち取ることが、これまで私を支えてくださった大勢の方々に対しての恩返しと考えています。また、先の熊本での国賠訴訟の全面勝訴をより一層確かなものとすると同時に、私たち元患者・今現在患者として治療している方々が、人生の終着駅にたどり着くまで心身ともに豊かな人生を過ごせるよう、最後まで頑張りたいと思っています。 これまでご支援ご協力いただきました皆様に、あらためまして心より御礼申し上げます。そして、これからもどうぞ変わらないご支援とご協力を重ねてお願い申し上げます。私も主人と一緒に最後まで頑張ります。 末筆ではございますが皆様のご健康をお祈り申し上げながら、御礼のご挨拶とさせていただきます。 敬具 2005年4月8日 山下 ミサ子 |