「多磨全生園医療過誤訴訟」の東京地裁判決(1/31)傍聴記と判決要旨紹介
4/27開始された控訴審での「被控訴人山下ミサ子さん」の言葉はこちらから
国立療養所多磨全生園(東京都東村山市)で治療を受けた元ハンセン病患者の女性(66歳)が、
「後遺症が残ったのは同園の投薬ミスが原因」などとして、
国に5000万円の損害賠償をもとめた訴訟の判決が31日、東京地裁であった。
この裁判のことは、私の友人「むらかみあやこ」さんとご夫君が支援していて、
その支援サイト「ハンセン病ニュース」で知っていた。
私はまだ一度もこの訴訟中の裁判の傍聴をしたことがなかったが、
おくればせながら、判決の日の傍聴をすることですこしでも支援の気持ちを表したいと考え、
31日、東京地裁に向かった。
朝10時過ぎ、地裁の一般入場口には次々に人が入っていく。
他にも大きな判決があったのかも知れないが、103号法廷には、ほぼ座席いっぱいの傍聴人がいて、
その中には、多くの元患者さんがいらっしゃった。
友人の著書「もう、うつむかない 証言・ハンセン病」に登場する方も来ていらして、
本で知っただけの方だったが、私にとっては知己の思いがした。
みなさんが明るく、かつ、おだやかな表情と口調なのが、ある意味で私にはおどろきだった。
苦しみを突き抜けてきた方は、このような表情をしていらっしゃるのか!
3人の裁判官が着席すると、開廷前に報道に対しての撮影許可があった。
開廷するとすぐ、裁判長が主文を読み上げた。
国の有罪を認め、原告の請求どおりの全額「5000万」の賠償を命じる判決が聞かれると、
傍聴席から少しどよめきが生まれ、拍手が起こった。
原告の女性は両手で顔を覆って泣いていらした。
主文に続いて、口頭の説明があったが、裁判長の説明は非常に明快で、
耳で聞くだけで、その論理の筋道がすっきりと理解できた。
特に、「医療過誤」を認定するのに、症状の経過毎に3期に分けて、
あり得べき治療と、現実に成された「治療」とを逐一比較して、その「過誤」を判断していたのが、
非常に説得力があった。
最後の「時効」についての被告の申し立てを否定する論理では、
原告は「権利の上に眠る者」ではなく、被害を認識し請求できる状況になかったのだから、
「時効」を申し立てる被告側が「権利の濫用」にあたるとする判断をしめした。
私にとっては、丸山真男氏の「『である』ことと『する』こと」のなかで、
末広厳太郎先生の講義のエピソードとして語られていた「権利の上に眠る者」という言葉が、
こうして実際の裁判で、原告の元患者さんを救い上げる論理の中で判決に生かされていたことがうれしかった。
この判決文をじっくり読んだなら、被告の国は控訴などできないはずだ。
国のすべきことはこの判決をただちに確定し、早急に、全国の療養所内で、
この件と同様な不適切な医療行為が行われていなかったかどうか検証し、即座に改善することだと思う。
閉廷後、判決要旨が配られ、弁護士さんによってコピーされ、多くの人の手に渡ったのだが、
この画期的な判決文が、さらにすこしでも多くの人の目に触れるように、
私たちのちいさなぺージに記録しておきたいと思う。
(2005年1月31日 なみひさ ゆうこ)
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