昨今の大型プロジェクトにおけるリスクの所在
昨今の大型化、複雑化した海外プラント建設プロジェクトにおいてプロジェクト推進上のリスクはいっそう高まり、実際に巨額の損失を被った多くの例を見ることが出来る。このような状況に至った背景としては次のような諸点が着目される。
- 従来は損失の要因として設計ミス、製作ミス、資材・人件費の高騰といった品質あるいはマーケット理由によるものが中心であった。昨今は加えて、プロジェクトの大型化、複雑化、グローバル化が進み、それらに対応すべきリスクマネージメントの不在あるいは失敗による損失が増加している。
- プロジェクトの大型化に伴い、経営資源とリスクの分散、得意分野の分業化といった目的で国際コンソーシアム(あるいはJV)による応札とプロジェクトの実行が増加した。このような国際コンソーシアムへの対応力不足が問題を引き起こしている。
- 過去数年、資源エネルギーを中心としたプラント建設ブームの過熱により資材費、人件費、輸送費、工事費の高騰と共に、エンジニアリングリソースが払底した。必然的に第三国のリソース起用が大幅に増加したが、同時に多くの設計品質問題を引き起こしている。設計エンジニアリングのグローバル化への対応も重要な着目点である。
- 国際的に通用する人材はとりわけ、PM (Project Manager) と PCM (Project Control Manager) の分野で顕著であり、それら人材の育成と共に、諸管理ツールの使いこなしが課題である。
- 過去数年、複数の企業において、海外プロジェクトでの損失を理由に大幅な減益が発表されている。リスク管理体制の欠陥と共にン、タイムリーに損失を把握するための手法や会計基準等の不備が発表の遅れを招いたといえる。内部統制の一環としてのJSOX法等によるプロジェクト会計処理の透明性も課題である。
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