秋下村塾

突撃隊・森垣秀介情宣

委員長の演説が始まる直前から、突然茶水駅へと向かう若者の大群が押し寄せていた。
そう、今日は2月11日。折りしも大学受験の真っ只中である。おそらくこの若者たちは、 明治大学の入試を受けてきた人たちであろう。

絶好の演説舞台を整えられ、マイクを持った委員長はとても活き活きとしていた。冒頭の掴みは 当然のように学生に向けて。

「おぅ、何か急に人が増えてきたな。なんだこれは、入試の帰りか? どうだったかよ、入試は?
でもよぉ、お前らその入試で、何をやってきたんだよ? それに通ることで、お前の人生、どうなるって いうんだよぉ? 自分はこれをやってきたって、証明できるものを持ってるやつはどれだけいるんだよ?」

煽りから始めるというのは委員長の定番スタイル。素通りしてゆく人の足を止めるための最善の方法と 言って良いだろう。当然顔をしかめる人も、苦笑いをする人も、きっぷの列を待ちながら振り返って見てみる 人もいる。
学生の波はまだ止む気配すらない。ますます弁に磨きがかかる委員長。前半は想定どおりだったのか、この空気に 臨機応変に対応したのか、わざとカゲキな言葉を多用して刺戟していた。

「キチガイが人をブッ殺しても無罪放免なんだろ。でもクマが村に降りて暴れて、ババァを引っ掻き殺したら どうなるのか、そのクマは射殺されるんだよ。クマは射殺でキチガイは無罪放免。だったら俺たちもみんな キチガイになって、永田町のやつらを全員血祭りにしちまえばいいじゃねぇかよ」

「我々突撃隊が(選挙で)当選したら何を守るのか。国民でしょう当然。医療費は全部タダ。鉄道料金も 東京〜大阪は2000円でいい。山手線は一律、20円でいい。そして我々は車ではなく、鉄道に乗って国会に 通勤しようではありませんか。今の国会議員、誰が通勤電車に揺られて行きますか? 誰が『私の給料は 月に10万円でいい。その代わりに税金を安くしよう』と言いますか? そういうことを一人でもして、 通勤電車で痴漢を捕まえて見ろってんだ。『私は今日、電車で痴漢を3人捕まえました』そういう発言をする 議員の方が、遥かに国民の支持を得られるとは思わないのでしょうか、諸君!」

多彩に客いじりをするのも委員長の上手いところ。若者に話しかけたり、「オバチャン!」と言ったあとに 「いやお姉さんだった」とやったり。笑いを起こすのがとても上手い。

演説途中(前だったかな)から他団体の方も拝聴に来ていたし、朝方私が見かけた愛国党の遊説舞台が たまたま通りがかったときも、委員長は「お、あれは愛国党だな。お互い頑張りましょう」と演説を 中断して声をかけていた。
さて演説も終盤に入り、勢いのよい委員長節も終わりに向かう。最後はいつもの
「打倒せよ」「粉砕せよ」そして「偉大なる民族の意志同盟・万歳」で幕を閉じた。正味50分ほど、 演説の長さを全く感じさせない怒涛の時間だった。

久しぶりに突撃隊の情宣に立ち会ったが、演説のレベルは他団体に比べて遥かに上だ。若手の人も、 情に訴えたり勢いで押したり、スタイルは様々だが「つい足を止めて聞き入ってしまう」という 方向性は統一感があり、その実力も相応についている。

委員長はもはや別格。同血社の河原さんや他にも上手い演説をする人をみてきたけど、客のいじり方や 喋りのテンポなど、スタイルの違いという点もあるけれども、私は委員長スタイルの方が聞いていて面白い。
右翼なんだけどちょっと右翼らしくない。そういう点が良いのかもしれない。

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