廣島旅行記2
予定通り朝5時半起床。何故そんなに早いのか。タイムリミットが1428発の新幹線だから。勿論 それも理由の一つだが、もう一つ、もっと大きな理由は、伊勢の轍を踏みたくなかったことだ。
初めて出雲に行った時は感動した。夜行で乗り込み、6時半には大社につき、目いっぱい参道を
歩いた。
初めて伊勢に行った時はがっかりした。参道は人で埋め尽くされ、荘厳さの欠片も感じられなかった。
友人が伊勢に行き、素晴らしいと語った。聞けば彼も朝イチで参拝したらしい。見せてもらった写真には、
私が決してとることの出来なかった、人のいない参詣道が写っていた。
そこから導き出された結論は「神社は早朝に参拝しろ」というものだった。ましてや相手は厳島、
世界遺産であり日本三景でもある。いかに平日とはいえ、混まないはずはないだろう。
というわけで5時半起床で、6時すぎの広電に乗り込み、一路宮島へ。
朝の広島。空気が心地よい。
さて電車が来るまでに蕎麦を食し、いざ宮島へと向かう。厳島神社へは、JRで宮島口まで
行った後に、フェリーで宮島(厳島)へと上陸する。切符は広島駅からフェリー乗車券つきで
買えるのだが、これが曲者だった。
厳島行きのフェリーは宮島観光が運営するものとJRが運営するものの2社がああり、値段はどちらも
170円である。当初私は広島からの連結切符を購入したのだが、宮島口へ到着したときに
次のJRの船は30分後の出発。宮島観光のは即出航だった。
「騙された」と思いながらも、時は金なり、改めて切符を購入して宮島行きの船に乗り込んだ。
遠く向こうにコンビナートから出される煙が見える。あれはどこだろう。呉かな。
厳島到着。続々と船から車が排出される光景は何とも面白い。
7時をまわってしまったのは遺憾だが、人はまだ少ないようだ。早急に参拝してしまおう。
厳島神社と言えば水中に浮かぶ大鳥居が有名である。上の写真の右側に見えるのがそれだ。
ここは干潮時には大鳥居まで歩いて行け、満潮時には逆に拝殿のすぐ下まで海水が押し寄せてくるという
不思議な造りをしている。出雲が「空中神殿」ならばさながらここは「水中神殿」と言ったところか。
今日の最初の干潮は4時半ごろ、満潮は11時ごろだったために、到着した頃は大鳥居の10メートル手前くらいまで 行くことが出来た。
拝観料300円を払って中へ。ここは海水に浸される為に損傷が激しく、こうしてお金を取らないと修繕費も ままならないらしい。そういう理由であれば致し方ないが、順路が一方通行なのはいただけない。それでは 干潮と満潮を一度に体験する事は出来ないと言っているに等しい。何とも残念なことだが、後の混みようを 見ては仕方ないなとも思った。
こんなにも人気がないのが奇跡のよう。出仕さんが神前で二拝二拍手を行っているのが見られた。 やはり朝の神社は清清しい。
唯一持参したガイドブック『神社紀行』で初めて知ったのだが、ここは「稜王の儀」で有名な神社らしい。 折々の祭りの際には陵王が舞いを見せてくれる。以下はその演舞場。日が昇りきっていないため、暗くなってしまったのが 心残りだ。
陵王の儀といえば、ちょうど『神社のススメ』第4巻でそれにまつわる話を見ていただけに 実にタイミングが良かった。ここで舞いを踊るのはちょっと見てみたいな
本殿で参拝を済ませ、受験生への景気付けなどを購入し、一方通行に従って出口へ。時刻はまだ8時前。 これで帰るのも勿体無いので、適当に宮島を参拝することにした。
こういう写真を撮るようになったのもひぐらしの影響は大きい。これを背景に物語を進めるのも 面白そうだ。
厳島には島全体にわたって鹿が闊歩している。奈良公園の拡大版と思えばいい。
この鹿は奈良公園の鹿と関連があるのかと土産屋のおばちゃんにそれとなく聞いてみたが、
満足いく答えは返ってこなかった。後で調べてみたら、どうも「昔から居た」らしい。
厳島神社以外にも、小物の神社がいくつもあることを知ったので、出来る限りまわってみた。
どれも小ぶりなので荘厳ではないが、中には趣深い社もあった。
合間合間に厳島の大鳥居を眺める。水位は着々と上がってきている。
ぐるっと周って厳島へ降りてきたら驚愕した。時刻は8時50分。恐怖の修学旅行生及びツアー観光客の
大群が押し寄せてきた。こうなれば早朝の趣深さも何処へやら、一転して芋洗い場と化してしまった。
こんなところには居たくないと思い、弥山へと向かうもみじ道へ避難。中腹から厳島を眺める。
疲れたので茶店で小休止。内装は綺麗だったけど値段張るなぁ。どこに入っても観光地価格だよ。
お願いして内装を撮らせてもらった。
10時ごろになると徐々に土産屋も開いてくる。厳島の模型が欲しかったけど、ミニで1100円もするので 却下。合掌造りは600円でも立派なものが買えたのになぁ。
そろそろこの芋洗い場からも去ろうかという最後に今一度水位を確認。朝は何ともなかった砂浜が、 見事に海水で埋め尽くされていた。なんていうか、神秘的だ。
ここで三段階に分けて撮った写真を見てみよう。角度こそ違うが、上から7時半、9時、10時半の様子。
水位が上がっている様子が伝わるだろうか。写真だとちょっと見難いな。
さて厳島観光もそろそろ終わり。帰りのフェリー切符を買って船に乗り込む。
総括として厳島の評価。決して高くはない。
水中神殿という神秘性があるけれども、個人的に朱色の鳥居はやはり好みではないことが分かった。
加えて一方通行の参拝路、海辺なために参道がないという点も評価が下がるところ。神社とは
いつでも、誰でもが入ることが出来、参道の木々に神性を見出すというのが、私が好む神社のあり方であり、
厳島はその理想から少し外れたところに位置するものであった。
海水に晒されるという性質上、お金をとるのは仕方ないとしても、いかにも「敷居」を設置してるような 本殿の配置に違和感を持ってしまったのは否めない。それらをふまえた上で、また来たいとは 思いがたいものになってしまった。無論、東京からの距離という面もあるが。
そんなわけで未だ出雲を越える神社には巡り合えず。残すは高千穂しかないのかなぁ。
帰りの船に揺られつつ、そんなことを思った。宮島に到着後、新幹線が遅れているとの情報を得た為に 即帰京という選択をとる。電車は一時間遅れで新横浜に到着した。