廣島旅行記
きっかけはひょんなことから始まった。大阪でちょっとした所用があったために 交通費を頂いて行くことに。その日は代講をとって翌日の授業は1920から。となれば 上手く行けば丸一日分くらいの余裕が出来る。そこからはじき出された結論は丹後でも 紀伊でもなく、宮島だった。新幹線で新大阪から90分、東京まで4時間弱。値段の高さに目をつぶれば、候補地のどこよりも 「帰りやすい」場所であり、かつ、こんなタイミングでもなければそうそう広島へ行けるチャンスなど 巡ってこないのではと思った。来年から忙しくなりそうだしね。
そんなわけで新大阪−広島間の往復2万円は自腹で広島へ行くことに決めた。言い換えれば往復2万で広島 1泊旅行と考えればこんなに条件の良いことはまずないだろう。
さてそんなわけで大阪での用事をさくっと済ませ、1451新大阪発ののぞみに乗り込み、一路広島へ。
今回は目的地も電車も絞れているので時刻表もガイドも何も持たずに出発。岡山を華麗に通過し、広島到着が
16時過ぎ。暗くなってしまうと我が携帯カメラでは満足に撮影できないため、残り少ない時間で観光できる場所を
探す。まぁ、探す間もなく「原爆ドーム」という選択が浮かんできた。
場所も何も分からなかったけど、改札を出てすぐに「広電で20分弱」という看板を見つけ、そこに決定。
広電に揺られること20分。「次は原爆ドーム前」というアナウンスを聞いたとたんに目に飛び込んだのは 広島市民球場であった。何と、こんなところにあったとは。
市民球場を背にするとすぐ目の前に原爆ドームがある。見た瞬間に圧倒された。
それは原爆の「負の遺産」としての存在ではなく、紛れもなく「廃墟」としての
佇まいだった。恰もそれは、一ヶ月前に訪れた田老鉱山を見せられているようだった。
幸いにして時刻は17時を回っていたためか、修学旅行生はおろか観光客も少なかったので、じっくりと一周 周り、写真を撮る。正直「美しい」とさえ思ってしまったほどだ。
ドームのすぐ脇には川が流れており、その対岸から撮ったら綺麗なものになりそうだったので、 歩いて川を渡る。そのときふと思ったが、広島には路面電車(広電)が縦横無尽に走っている為、 道路の幅が非常に広い。それを囲むように商業ビルが立っていたり、ゆったりとした川が 流れていたりと、何となくパリを彷彿とさせる町並みだった。
日も暮れてきたのでそろそろ寝床を決めなければ。原爆ドームを後にして、併設されている平和記念公園、
資料館経由で繁華街に出ることにした。しかしながら資料館周辺は嫌味のように整備されつくし、いかにも
「平和の大安売り」的な雰囲気を醸しだしていた。噴水に囲まれて存在する碑は、かの有名な
「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませんから。」という碑文が刻まれている。
そこのモニュメントからは、ちょうど原爆ドームが最高の角度で臨むことが出来るのだが、悪趣味としか
言いようがないレイアウトだった。「主語がないから混乱を招いた」とか何とか言っていたが、じゃあ、
その主語とは誰を指しうるというのか。とにかく、悪趣味と言う他ない。
繁華街へ移動。昨今は飛び込みで入るよりもネットで予約した方が遥かに安く泊まれるので、
ネット喫茶を探す。けれども、都会では3歩歩けばすぐ見つかるネット喫茶も地方ではそうも行かないのか、
はたまた目が節穴なのか。商店街を端から端まで歩いてようやく見つけた。
そこで素泊まり3780円のホテルを発見。幸いにもこの近くだった為に、すぐに出てホテルへチェックイン。
持ち前の方向感覚のなさを発揮して、予定より20分遅れで到着する。
ホテルにてひと段落。そして明日の朝も早いので、早々に晩酌をすべく外へ出る。
こういうときはチェーンは論外なほか、なるべく「ハズレ」的な店構えのところに入る方が
面白い。なるべく賑わってなさそうで、かつ、店頭に料金の書いてある手ごろな店を見つけ、
いざ突入。
思った通り、というか、ちょっと行きすぎなくらい常連しかいないゾーンへと侵入してしまった。
最初の5分程度こそ一人で呑んでたが、客も少ない為かすぐにおかみさんに声をかけられる。都合上
スーツを着ていたので「出張」とか「貿易商で、広島港に到着した輸入品の検査にやってきた」とか
適当なことを言っておいた。これはこれで結構楽しい。
日本シリーズを見ながら話は盛り上がり、焼酎をロックであおる。話を聞くと、親父さんは 南海の出身のためにカープ愛はあまりなく、かといってソフトバンクに代わったホークスにも 愛着はないらしい。広島という立場上セ・リーグを応援するのが筋だが、今年は 新庄のためにハムに勝ってほしいというようなことを言っていた。
8時をまわり、店がだいぶ混んできたところで退散。ママカリの酢漬けやカンパチ刺しは美味かったけど、 酒肴混みの6品で4000円はまぁ、一見価格としてはしょうがないところか。
良い具合に酔いが回っていたので帰宅後、大浴場・サウナを経てすぐに就寝。夜中に二日酔いのケで 目が覚める。明日は5時半起床。