悲しい現実の巻
目的地である、パヤール島に着いた。雨は上がっているが、しかし雲は厚い。
既にシュノーケリングを行っている集団がいる。ここはランカウィのアクティビティの
中でも、最もよく利用されるポイントだそうな。
だが、ここでもまた信じ難いことが。昼食付きなのだが、そのテーブルが我々3人と、
ここまで一緒のボートに乗ってきた別の男3人の集団、即ち男6人で昼飯を食う、という
ことが判明したのである。
「…、このデブガイド、たいがいにしとけよ。」
私は、もう陸には上がらず、ずっと海の中にいることにした。
海に入り、最初は、思ったより岩がゴロゴロしているのが目に付いた。魚影は濃いのだ
が、なにか寂しく、言い換えると、殺風景な感じがしていた。
そして、気が着いた。珊瑚が、無い。いや、違う、生きていたのが、死んでいるのか?

ランカウィ島は、マレーシア政府がキャンペーンを行って観光地化を推し進めている一
方、観光開発を島全体の35%までと制限しているという。また、このパヤール島一帯は海
洋公園に指定されていて、条例で保護されているはずだが…。
「これは、どういうことだ、マハティール。まさか、意図的にここに?」
他のあちこちを壊されるより、ここに集めてしまえ、という事なのか?それとも、予期
せぬキャンペーン効果で、観光客が大勢訪れた為の破壊なのか?
頭の上に手を掲げ(パンが濡れない様に)、頭上からパンをばら撒きながら魚を寄せて泳
ぐ、という器用な若い姉ちゃん達(3人いた)を見ながら、
「この行為、とても素人とは思えん。が、彼女達はこの殺風景な海底を見て、何か感じて
くれるのだろうか?」
人間が訪れて珊瑚は死に、しかし人間が餌をばら撒くので、魚は集まってくる。
これはあくまでも推測だが。
南の島の、悲しい現実。
entrance/
前編へ(全2回)