「東洋大日本国国憲案」
植木枝盛が構想した「国憲案」は、第1編から第18編までで、附則1条をふくみ全220条からなる膨大な憲法草案である。
(ちなみに現在の日本国憲法は103条。)
日本を各州からなる連邦制で構想。明確な人権規程(第4編)をもち、その各条の主語は「日本の人民は」と書き出す。
たとえば
第42条「日本の人民は法律上に於て平等となす」と明記する。
第45条においては「日本の人民は何等の罪ありと雖も生命を奪はれさるへし」
と、
死刑制度を否定している条もあり、現行憲法よりもその人権規程は徹底していると言える。
また、司法では陪審制度を採用、土地は国有とするなどが特徴である。
男女平等については、
「五日市憲法草案」が、選挙権の規程において「婦女未成年その他」をひっくるめて
選挙権を持たせず、
女性差別を残しているのに対して、「国憲案」では、すべての「人民」を平等に規定する。
(選挙権を持つ者から「租税を納めざる者」を除く規程があるので、
実質的には女性で選挙権を持つ者は限られた少数の可能性があるが、「婦女」そのものの排除はしていない。)
「男女平等」を明示する個別規程はないが、
植木枝盛自身は、この草案起草後、「男女平等」「家族制度廃止」の論陣を新聞紙上で展開していくので、
彼の国憲案には「男女平等」思想が内包されているものといえる。
(参考文献;「革命思想の先駆者ー植木枝盛の人と思想」家永三郎著・岩波新書)
この草案が、鈴木市蔵らが敗戦直後GHQに提出した「日本国憲法草案」の下敷きになったと言われている。
(草案の本文は、松山大学法学部の「田村 譲先生」のホームページ「たむ・たむ(多夢・太夢)ページ」
に掲載のものを参照しました。
読みやすさを考えて、カタカナはひらがなに改め、濁音表記(例;「得す」→「得ず」)も取り入れました。改行等も変更してあります。)
参考文献
家永三郎・松永昌三・江村栄一編『明治前期の憲法構想』(福村出版)
武相民権運動百年記念実行委員会編『続憲法を考える』
『植木枝盛全集』(岩波書店)
『明治文化全集』
国立国会図書館憲政資料室所蔵牧野伸顕文書
[HOME]]
(c)copyright 2004 ゆうなみ
写真・記事の無断転載はご遠慮下さい
up date:11/2004
byゆうなみ