奄美大島クワガタ採集紀行

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はじめに

5年ぶりに妻の実家である奄美大島へ行ってきました。

東洋のガラパゴスと呼ばれるほど様々な貴重生物を産する奄美大島は、クワガタだけでなく、様々な珍しい鳥類、爬虫類等特産種の宝庫です。私もクワガタムシに興味を持ってから、この島に特産クワガタが多い事を知り、奄美での採集を始めて今回で4回目の里帰りです。

過去3回、実家の母や親戚に呆れられるほど、朝に晩に森に通いつめましたが、それでも漸く成果がでてきたのは前回(5年前)くらいからで、それまでは書物だけの知識を頼りに、樹の種類、生息ポイントもろくにわからず、試行錯誤を続けてきました。

今回も試行錯誤の継続で、狙った種は採れなかったのですが、採集4シーズン目にしてはじめてわかってきた事などを記録として残しておく事にしました。

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今回過去のラベルを調べてたところ、初採集は1994年夏金作原(きんさくばる)です。この時は一週間金作原に通い最終日にようやくたった2頭のネブト♀をはじめて捕獲しました。「リュウキュウノコギリ、スジブトヒラタなどはバナナトラップで容易に採集でき、個体数も多い」などど書かれている書物の記述はなんなのか?しかも金作原は奄美大島随一の原生林。ここにおらんとは??

その後1997年に再訪問、この時も金作原にしばらく通ったのですが、やはりボーズの連続。最終日に思い切って別の峠にトラップを仕掛けようやくアマミヒラタ1♂スジブトヒラタ1♂を採集。翌々年1999年に訪問した時は最初からこの峠にトラップを仕掛け、ようやくリュウキュウノコギリ、リュウキュウコクワ、アマミヒラタ、スジブトヒラタなどを連夜のように採集できました。やはりポイントが重要で、いないところに仕掛けてもムダなのでしょう。

離島採集の基礎知識

採集紀行を記述するにあたり、常識的な知識としてわかって欲しい知識をまとめました。興味のない方や、先刻ご承知だという方は読み飛ばしてください。

(採集できる種類)

さて、前述のとおり奄美大島には特産種、特産亜種が多く、分布する多くの種が、南西諸島のみの分布(つまり本土では採集できない)という点が魅力なのです。カミキリにおいても、国産最美麗種ともいわれる「フェリエベニボシ」の他「ヨツオビハレギ」「アマミニセクワガタ」他珍品が多く、血眼で探しているマニアも多い筈です。

クワガタにおいての代表選手は、リュウキュウノコギリクワガタ、スジブトヒラタクワガタ、アマミヒラタクワガタ(ヒラタの奄美亜種)。トラップ採集でもっとも簡単に採れるため、普通種トリオと言う方もいますが、それぞれ個性、品格を備えたすばらしいクワガタ君たちです。特にスジブトヒラタクワガタは奄美大島と徳之島のみの特産種で、大型のものは得難く重厚なかっこよさを備えた大好きなクワガタです。それと、リュウキュウコクワガタ、アマミネブトクワガタ(ネブトクワガタの奄美亜種)を過去トラップで採集しています。

まだ採集していないのが、アマミミヤマクワガタ、アマミシカクワガタ、アマミマルバネクワガタ。マルバネは希少性だけでなく時期的にも9月がピークとの事なので、難しいと考え、ミヤマ、シカ、それに本土での採集は難易度が高いルイスツノヒョウタンクワガタを採集できるチャンスはないかと考え、この3種を今回の目標にしました。アマミミヤマはトラップには来ないとの事で、入念なルッキングと高所についている場合に備えわざわざ8mのつなぎ竿まで持参。なんとか世界でも奄美にしかいないこのクワガタを採集したいものです。

(採集方法)

トラップとはわなの事です。一般的にはストッキングにバナナを詰めて潰し、シイの木に括り付けクワガタムシをおびき寄せますが、このやり方で今まで苦労と試行錯誤を繰り返して来ました。詳しくは本文中にて。

成果報告

今回同行したのは家族と私の実の両親、それにいとこ。両親は久しぶりの奄美という事で、父の傘寿の記念も兼ね観光旅行を堪能させてあげるという目的で、前半はホテルに宿をとり、両親といとこが帰ってからは妻の実家に宿泊の予定でした。もちろん観光旅行が優先ですから、その合間にいかに採集の時間をとるかがポイントになります。

奄美空港に着いたのは夜の7:00。本来ならすぐバナナを仕掛けに行きたいところだが、あまり我儘もいえません。もう遅いのでホテルに入って食事をすることにしました。

ストッキングは持参してますが、バナナの仕入ができなかった事が残念。しかたなく夕食に出たフルーツの盛り合わせから、バナナやパイナップルの切り身を袋にいれて部屋まで持ち帰り、明日朝まずはトラップ仕掛けに行く事にしました。

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翌朝6時にホテルを出て、一路5年前採集した峠に向かいます。ホテルからは約40分。もうすでに日も高く上っており、今朝は仕掛けが主目的で採集成果は期待してません。ホテルの残飯トラップはいかにも貧弱。。。でも仕方なくフルーツをかき集めて作った5こほどのトラップを、林道沿いのシイの木に縛り付けていきます。何個目かを付けようとした時に、誰かが付け忘た古いストッキングを見付けました。「最後は回収するのがルールなのに。。。マナ〜が悪いな。。」と思いつつ、トラップの裏側を見ると真っ黒なバナナの部分にアマミヒラタ♂がついています。

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初日朝の成果

「初回からラッキー!コレはもっといるかも。。。」古いトラップには♀が良く潜り込んでいる事があるのです。さっそくそのトラップを外しストッキングをビリビリに破いてドロドロに腐った真っ黒いバナナを道路に広げて見ると。。いました。アマミヒラタ♀アマミネブト♀です。

初回からヒラタ♂♀ネブト♀GETで意気揚々とホテルに戻ると、「おじいちゃんがクワガタを捕まえたよ。。」え〜っ、ウソ!     朝の散歩をしてたらホテルの前で拾ったとの事。こんな海沿いのいわゆるリゾートホテルという立地でなんでクワガタが?部屋の氷入れに入れてあるというので見せてもらうと。。。

「ひゃ〜っ!でかい!」

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大型のリュウキュウノコギリでした。ノギスで計ると70mmくらいありました。

これはすごい。もっといないか?とホテルの周りをうろうろさがしました。クワガタはいなかったけど、アオドウガネとタイワンカブト♀がいました。

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タイワンカブト♀

さて、それから観光旅行の開始。マングローブのカヌー探検。かけろま島渡航等。ハードなスケジュールながら楽しみつつ、昼間は車で走りまわると、ツマベニチョウ、リュウキュウアサギマダラ、ナガサキアゲハ、イシガケチョウなど綺麗な蝶が豊富に観察できます。

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イシガケチョウ。飛翔中のモノは撮影しにくいので、捕まえてしまいました。

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蝶は多い!写真がうまくないのですが、昆虫館の温室のように乱舞。

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ナガサキアゲハも多く良くハイビスカスに来ています

朝の峠の林内ではルリカケスも良く見る事ができます。ルリカケスを見付けるのはウルサイ鳴き声とシルエット。じっとしていない鳥なので、止まった時の形と飛んだ瞬間の尾羽の白い線が特徴的で、るり色をじっくり観察するのは難しい事です。写真をとるには高性能の望遠レンズを設置して辛抱強く待つ必要があり、出合い頭での撮影はかなり困難です。空港周辺に多いイソヒヨドリと勘違いしている人が多いようですが、イソヒヨドリはツグミのような体型で開けた場所にも多いですが、ルリカケスははるかに大型で林内にいる事が殆ど。でも一度だけ道路沿いの電線に止まっているのを見ました。

また人気のキノボリトカゲは、金作原を走行中に車中より発見!大急ぎで取り押さえ撮影しました。ホントは木を登っている場面が撮影したいのですがすばしこいので、捕まえて撮りました。木に止まっている様子はとてもかわいいです。いつもは何回も目撃するのですが、今回はこの一回だけでした。観光地になっている公園内の植樹にもよくみかけます。

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キノボリトカゲです。爬虫類ファンに人気。とてもかわいいです。もちろん撮影後リリース。

でもクワガタムシの方ですが、二日目はかけろま島に遊びにいく為、バナナトラップの追加ができず、その晩と翌朝はまったく採集できませんでした。

これは早急に対策を立てなければいけません。まず考えられるのがトラップ。やはり皮付きバナナでないといけませんし、バナナも腐りかけて匂いを発するまでに数日かかりますから、時間がない!!

翌朝名瀬市内のグリーンストアで、黒ずんだバナナを処分販売しているのを見付ました!「ラッキー!」在庫全部を買い取りこれで追加トラップを仕掛ける事にしました。「こういう色になってるほうが美味しいのよね。。。」とレジのオバチャンが声をかけてくれます。「そうですよね・・・」とアイマイに返事しつつ大量の処分バナナを車に積み一路峠へ向かいます。

今回からは仕掛けの範囲も、峠の狭いエリアに集中してかけていたのを、比較的標高の低いところから広い範囲で仕掛けをする事にしました。

この対策が功を奏し、ようやく3日めから採れ始め、スジブトヒラタの小型のもの♂♀数頭と、リュウキュウコクワ♂も一頭とれました。でも狙っている希少種アマミシカは採れません。樹上も慎重にルッキングしましたがアマミミヤマもいない。そう簡単にはいきませんね。

でももう翌々日は帰京しなければなりません。もうあとは時間との戦い。時間さえあれば必ずとれるのに。。しかも台風16号が迫っています。

翌日帰京するという最終日。外は風雨です。台風の影響か??「あ〜今日は無理かな。。」と思いましたが、とにかくラストチャンスなので峠へ向かう事にしました。。

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アカマタです。この峠には多い蛇。その代わりハブが少ない?

いざ峠につくと風もなく意外に静かで、雨も上がっており蒸し暑く、いそうな雰囲気。まずは標高の低いところにかけた新しいトラップをチェック。

いた〜!やりました。今回最も大きなスジブトです。

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トラップで採集した後で、再度止まらせて撮影したヤラセ映像である。

その後いつもの峠でも大型のスジブト♂を追加し、全てのトラップを回収し、今回の採集を終えました。明日はもう絶対ムリだろうと思ったからです。

翌日は予想通り飛行機は全便欠航で、島内の暴風雨はすさまじく恐ろしい程で、採集は不可能でした。お陰で帰京が一日遅れてしましました。

反省点(今回ははっきり言って不本意な結果でした。次回にむけて以下のような反省点をまとめました。。)

@バナナトラップは、島についたらすばやくできるだけたくさん仕掛ける

バナナトラップが発酵して、虫をたくさんひき付けるには数日後〜一週間後がベストでは?と思います。滞在期間は限られていますから、島についたらすぐ仕掛ける事が重要です。今回は着時間が遅かった為、初日にトラップを仕掛けられませんでした。すくなくとも翌朝にしっかりとたくさん仕掛けることが重要です。空港から市内に向かう途中に「ビッグU」という大きなディスカウントショップがあり、そこでは格安のストッキングも売ってますしバナナも購入でき、時間がないときには便利です。

Aバナナトラップは、できるだけ広い範囲に仕掛ける。

いままでとれたところから、とった事のないところまで、幅広く仕掛ける事が重要である事がよくわかりました。

でも、奄美にはそう簡単には行けません。こんどこそは、目標達成をしたいものですが、次に行けるのは何年後でしょうか??

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