2004年の記録
スーパー和楽器アンサンブル in 曼荼羅 吉祥寺 12.20
井関一博氏のCD発売記念ライブへのゲスト出演。井関氏の演奏を聴くのは初めてだった。井関氏の曲は繰り返しでイメージを焼き付ける感じの曲が多い。曲名にも 風・そら・時・新緑 など自然を取り入れたものが多く、さらさらと心地よい流れの中を17絃のベースがかっこよく引き締めている。琴、三味線、17絃、尺八のアンサンブルなら間違いないという安心感はあるが、決して古典に囚われてはいない。初めての人には敬遠されがちだけれど、絶対一度は聴いて欲しい。ポップスに負けない現代音楽なのだから。
この日藤原氏は黒のシャツと綿の細身のパンツというラフな格好で登場。リラックスしていて普段はこんな感じなんだろうと思う。わたしはライブハウスのこんな雰囲気が大好きだ。大きな舞台へ立つときとはまるで別人と思えるほど親近感が湧く。そして、そのギャップがまたいい。
入場券を買うと「飲み物は何にしますか」と聞かれた。メニューにはステキなカクレルが並んでいたが、よくわからない。「ワインベースのクリスマスカクテルはいかがですか」とお姉さんに勧められそれを注文した。そのカクテルはグラスの下のほうが透明なお酒で、三分の二くらいが赤ワインのお洒落なものだったが、始まるまでの30分のうちに顔がポッポと火照ってきて眠気さえ襲ってきた。何とも情けない。店内はとても狭く、お客さんは60人入るともういっぱい。小さい椅子が置いてあるだけでテーブルも小さな円型のものが4台所々においてあるだけ。お客さんが座るともう通路もなくなってしまい、最前列の人は舞台にかぶり付き状態。だからまさに手の届く距離で聴くことができる。私は少し後ろの方で観ていた。
実はとてもすごい偶然があった。途中休憩のとき、火照った顔を冷まそうとトイレへ立った。するとトイレは裏口から入るようになっていて、一旦外へ出て、外から回り込むように裏口へ続いている。階段を降りていくとそこに藤原氏が立っていた。ここは楽屋口らしい。
「ここは違います。入り口は向こうの通りからです」
びっくりした。 何故ここに彼が???
「あア、こんばんは〜、お久しぶりです」・・・たぶん私は目が点に。
「あ、こんばんは」・・・いつもの笑顔で。
それから1分ぐらいだと思う、ここのライブハウスは狭いとか、初めて来たとか、私もHPでも盛り上がっているとか・・・たぶんそんなことを口早に話してすごすごと引き返した。すごい!うれしい☆ 頬はますます赤く火照っていたこと間違いなし。
ライブがはけてから井関氏が「皆で飲みましょう、忘年会をしましょう」といい残る人もたくさんいた(と思う)。私だって残りたかった〜。でもひとりだし、とても勇気がなくて後ろ髪をひかれる思いで中央線に乗った。道山さんがひとこと「飲みましょう」なんて言ってくれたら絶対残ったのだが。
中央線沿線の新宿から外側は懐かしい。高円寺あたりは学生時代によく来た街だ。その頃とあまり景色が変わらない。何となくあの頃を思う出しながら、今ごろ楽しいのかなと自分にちょっと腹を立てながら家路についた。
B→C バッハからコンテンポラリーへ in 東京オペラシティー 9.21
まったく、本当にこの人の尺八には神が宿っている。尺八といシンプルな楽器一本でどうしてこんなに何でもできてしまうのか。
尺八を両手で持ち、演奏前の祈るような数秒。会場は水を打ったように静まり、神が舞い降りる。藤原氏の息使いだけが演奏の合間にかすかに聞こえ、その瞬間だけ場内の空気も一瞬和らぐ。瞬きも呼吸も忘れるほどに引き込まれる世界。
開演のブザーが鳴りライトが落されると、静まった舞台の正面左側の扉が開き紋付袴の正装で藤原氏は現れた。ピシッと伸びた背筋。長身に衣装が映える。
少し硬い表情で舞台中心へすすみ、正面を向きなおしてゆっくりとお辞儀をするときはじめて顔がほころぶ。
一曲目は「鶴の巣篭」。古典本曲の脈々と吹き継がれた伝統を巧みに誠実に演奏され、時代、文化を超えて人のこころを捉えてきたこの曲の素晴らしさを再度示された感がある。古来から人は自然を愛し、生き物の誕生から親子愛、成長、旅立ちという過程を人の生活の中に重ね合わせてきたのだといいます。
二曲目からは黒の立て襟のロングジャケット。膝ぐらいまであるマントのような(と私はいつも思っている)上着と黒のパンツ。この衣装は何度か見ている。曲にあわせて選んでいるのだろう。コーディネーターはいるのだろうか、と衣装が変わるたびに思う。バッハの「無伴奏ヴァイオリン・バルティータ第3番 ホ長調」は7曲に分かれ、音域においても繊細な技法においても一本の尺八から出ている音とは思えないテクニック。指が数ミリ動いただけで全く別の音がいとも容易く鳴り響き、一音の間が十段階くらい細かく分かれている。演奏中私はいつもその指を見つめている。というより目が離せなくなる。細くて長い指にいつもうっとりとしてしまう。
後半はグレーの柄の入ったシャツ。一番上のボタンをはずしリラックスした格好に見えるが、袖口はカフスボタンできっちりと止められていた。
神田佳子さんの「尺八はミラクル〜尺八と打楽器のための」で私は目を、いや耳を疑った。ミラクル。確かに唄った。尺八を吹きながら。どんなに高度な技法を備えようと、唄うことだけは無理と決め付けていた私の硬い脳みそは一度ではそれを受け入れられず、確かにそれを「声」だと確信したのは3度目の声を聞いたときだ。唄、と言うには語弊があるかもしれない。音と音をつなぐ声と言うのだろうか。音の一部としての声と言えばいいのだろうか。もう一つのミラクル。打楽器になる。音が太鼓のように「トン、トン」と歯切れよく鳴る。別に何かを叩いているわけではない。確かに吹いている。「トン、トン、トン」とリズミカルに楽しく吹いている。これも私の脳みそではついていけない。
最後の中川哲郎氏の「肖像 2004」はバロック調というか、宗教音楽にも似た不思議の世界へ引き込まれていく。ところが最後には包容力と安息感のある雄大なメロディに包まれ自分の居場所へ優しく誘われる。
シンプルがゆえに出来ることがある。与えられたものが少ない分制約も少ない。自分の力で補えないものは無い。そんなことをすんなりとやってのけてしまう人。
和の音、にほんのことば in
Bunkamura オーチャードホール 9.18
友人からチケットの招待券をプレゼントされ、思いがけずに行けることになった。『親と子のファミリーコンサート』というテーマだったので一人で行くのはどうかとおもっていたが、招待券をもらい喜んで出かけた。友人と待ち合わせをするために仕事は2時間も早く切り上げた。
渋谷という街はいつでも人でごったがえしている。この日は特に連休初日のせいか、いつもに増して人の大きなうねりができていた。台風の後の河の流れにも似た人の波は、進行方向を迷う隙も与えず、信号の変わるのと同時に私達を動かした。
『和の音、にほんのことば』。日本古来の音色、古典芸能を通じて日本のこころと出会うというコンセプト。音楽を感じるこころというのは今も昔もあまり変わりはなく、ただことばがちがうだけということだそうです。古典と現代文のちがい、というのと同じこと。能やつつみとのコラボも貴重な体験。普段はみることが出来ない。
琴古流「鹿の遠音」と都山流「鶴の巣篭」の吹き合わせもおもしろかった。どちらも生き物の自然の営みや親子の情を描いた曲だと思う。
狂言師 茂山一平氏による「牛若丸」は子供の頃から慣れ親しんだ話しでもあり、とても興味深かった。能や狂言というとどうしても敷居が高くて一歩が踏み出せないでいたが、今回はそんな意味でもいい経験になった。
第4回:ジャパネスク・ナイト in Hakuju Hall 5.21
小田急線 代々木上原駅から5分のところにある白寿生科学研究所の七階に ハクジュホール はあった。ホールの大きなガラス窓からは新宿が一望でき、夜景を楽しむことができる。程よい広さのホールは白を基調とした明るい雰囲気で、どの席からも演奏者との距離を感じさせない。
第一部は津軽三味線奏者のはなわちえさんの演奏。スパンコールのたくさんついたジージャンと花柄のミニスカート。素足に黒のブーツと若さ溢れる出で立ちでちょっとはにかんだ様子は いまどきのかわいい女の子でした。ベースの早川哲也氏とのデュオで奏でる秋田民謡。ベースは男性的で演奏全体をやさしく包み込んでいる。こんなデュオもあるのかと感激。はなわちえさん作曲の「脱兎」は自分の家で飼っているうさぎの様子を見て作ったそうで、リズムとスピードが心地よい。
第二部は藤原道山と草間真一氏のピアノのデュオ。「空」は時間に合わせて演奏出来るように最初と最後以外はかなりフリーになっていて今回は息が止まるほど長く音を伸ばして、楽しいアレンジがあった。「早春腑」もCDとはまた一味違いピアノの伴奏が一段と曲の流れをゆるやかにしている。心の中で口ずさみながら聴いていた。ピアソラの「オブリビオン」と一ノ瀬響の「琥珀の道」は無条件に大好きな曲。好きに理由は無くていいでしょう。「金髪のジェニー」は気持ちが明るくなって、こころの真ん中を甘酸っぱく くすぐります。
最後のカーテンコールでは はなわちえ(津軽三味線)、早川哲也(ベース)、草間真一(ピアノ)、藤原道山(尺八)のカルテットで「上を向いて歩こう」が演奏された。こんな組み合わせは滅多に見られない。なんかすっごくいいものを見ちゃった という感じ。すごくお得がいっぱいのライブでした。
スペシャルイベント in 山野楽器 4.28
3月17日、藤原道山の3枚目のアルバム『空-KU』がリリースされた。そのCDを買った人だけこのイベントに招待というものだった。
当日、仕事も早々に終わらせタクシーを拾った。「銀座の山野楽器までお願いします」。6時半のスタートには間に合うはずだった。銀座に入り街は少し混んでいた。山野楽器へ行くのは初めてだ。タクシーが止まり「この信号を渡って向かいのビルです」と言われタクシーを降りた。時計を見る。6時26分。「間に合った」。小走りにビルの前に行って足を止めた。「YAMAHA楽器店」 確かにそう書いてある。え〜違う。チケットの裏の地図を見て番地が違うことを確信した。ここは7丁目。私の行きたいのは4丁目。それから探しまわってやっとたどり着いた時にはすでに20分遅刻。当然始まっていた。いったいこのイベントは何時まであるのだろうとおもいながらそっと会場へ入った。
前半の演奏が終わりちょうどトーク中だった。「恋風」はとてもきれいなやさしい曲でCDでとても気に入っていたがライブで聴くと本当に全身をシルクで包まれたような優しさに包まれる。「アヴェ マリア」ではその技法に驚いた。一番高音のところはたぶん尺八では限界の音だと思うけれど、足で尺八の筒を半分塞いで出していた。見たときは本当に驚いた。限界を超えた瞬間。演奏後サイン会が行われ(受け付け順なので私は一番最後)サインと握手をしていただいた。
ゴールデンウィークのない私に何よりのプレゼント。
スパニッシュ・コネクション in JZbrat 1.15
JR渋谷駅、セルリアンタワー東急ホテル2Fにあるライブハウス、JZbrat。
初めての場所にひとりで行くのは少し緊張する。ライブハウスといっても場所によって雰囲気が全然ちがう。あまり小さいところは近すぎて気恥ずかしい。しかし、大きすぎるのもよそよそしさがあって少し物足りない。そこが微妙。
スパニッシュ・コネクションは、ギターの伊藤義輝、タブラの吉見柾樹、ヴァイオリンの平松加奈のトリオ。タブラというのはスペインの打楽器だそうです。
スパニッシュということで踊り出したくなるような情熱を秘めている。平松加奈さんはステップを踏みながらヴァイオリンを弾く。今にも踊り出したくなる独特のリズムが続く。ゲストに中国の琵琶奏者 ウェイウェイさん。最近中国の楽器がテレビでよく演奏されているのを聴くが琵琶の生演奏は初めてだった。弦楽器の中でも高音がきれいで、ハーブより厚みのある、少しかすれた感じの音。(これは当たってないかも)。二人目のゲストが尺八奏者の藤原道山。残念なことに何と言う曲なのか分からない。黒のレザーのパンツと黒のシャツ。最近こんな感じが多い。吹いているときの顔がステキなの。いつもあんなにやさしそうで控えめな感じなのに、演奏がはじまると揺ぎ無い厳しい顔になる。それがいいの。
ライブハウスのあの雰囲気が好きで、何回か行っている。ひとりの贅沢な時間。いいえ、夫に振られただけなのですが。