2002年 道山との出会い
イーストカレント ライブ in Waon
2002・4・10
おおつか駅南口、駅前の小さな雑居ビル。駅前ビルということだったが、それを探すのに少し時間
がかかった。 人がすれ違うのがやっと というくらいの狭い階段。5階まで行くと無機質な鉄の扉があった。ひと気も無く、これからライブが始まるというような賑わいもない。一瞬とまどってから、ゆっくりとドアを開けた。想像していたより小さめな会場だった。 ライブの準備は整っていた。早くから来ている人たちは すでに席へすわって ドリンクを傾けている。
狭い入り口の通路には、パンフレットやCDが並べられ、反対側のカウンターには、予約してあったチケットが並んでいた。そこに数人の男女が立っていた。その中に藤原氏がいた。さわやかな透明感と、物静かな甘さ を漂わせていた。声をかけるのはためらわれた。 空席を探し一旦腰掛けたが、一番前の席が空いていたので、勇気を出してそちらへ移った。
しばらくして、照明はがおとされ、ステージだけにライトが照らされると、みやざきみえこ と 藤原道山 の世界へと 誘われた。 それはとても不思議な空間だった。和楽器が奏でる音 の範疇を越えているのだろう。目を閉じて耳を傾けると、それは、バイオリンにもフルートにもピアノにも通ずるような音色だった。時代を超越した、新しい音楽。新しいけれど、記憶のどこかにあるような懐かしさ。それが、頭の中で共鳴し、胸の奥底まで広がり、血となって身体中を駆け抜けた。
13本の弦 と 5つの小さな穴から繰り広げられる 音のマジック。 どれも素晴らしいが、妖精の踊り、忘却、みやざきみえこの潮流は特に気に入ったし、歌も素晴らしかった。ピアソラの原曲を聞いてみたい。 CDを出して欲しいと思うが、その前に もっとECライブを何度もやって欲しい。ひそかなファンのとっても贅沢な願いとしては・・・。
ライブ終了後、どうしても一言あいさつしたいと、あつかましく声をかけた私に、とても感じよく話をしてくれました。 にこやかに、さわやかに。 ありがとうございました。
パーカッションミュージアム in
紀尾井ホール 2002・ 6・ 6
<<前半>>
舞踏のエチュードはちょっと不思議なアンサンブル。民族音楽の原点がうかがえる。
エレクトリックグラスはマリンバの四重奏で、美しく繊細な響きと軽やかで精鋭なリズム。
そして、田中賢の新曲、尺八と打楽器アンサンブルのための「ACALA U」では、尺八の持つ孤高な響きと力強さが打楽器の多様で自在な音の流れと見事に融合し、厳しくやさしい、鋭く流暢な音楽。
<<後半>>
ゴバック、剣の舞、アイシェの踊り、バラの乙女たちの踊り、山岳民族の踊り、子守唄、クルドの若者たちの踊り、アルメンのヴァリエーション、ヌーネのヴァリエーション、レスギンカ
菅原淳率いる12名の大演奏。何種類もの打楽器の音が重なり、絡み合い、流れては淀み、大きく揺れ小さくつぶやき、どの曲も息を呑む緊張感。
この日、藤原道山は黒のスタンドカラーの長丈の上着と黒のズボン。颯爽と現れた姿は自信に満ち、大きく見えた。舞台に立つプロっていうのは皆まぶしいほどの光を放っている。
戸坂祥子コンサート in 氷川の杜文化館 2002・ 7・ 6
おおみや氷川の杜文化館ー伝承の間ーで開かれた第6回戸坂祥子コンサート。地元に住む私だが、ここを訪れたのは初めてだった。氷川参道から門をくぐると竹林の静かな庭園が迎えてくれた。鳥のさえずりとあずまやのたたずまいが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。 小さな会場だが演奏を間近で聞くことができ、お客様も身内や関係者の方が多く見受けられとても温かくアットホームな演奏会だった。
藤原氏の古曲を聞くのは初めてだった。やはり邦楽の原点という安心感と落ち着きを感じる。特に気に入ったのはキビタキの森。福島の白河の鳥のさえずりを表現したというこの曲は筝と尺八が軽やかに掛け合い鳥たちの戯れ 飛び立つ姿が脳裏に鮮やかに広がった。夏の曲、最後の双漁譜もとてもすばらしい曲だった。最近私は尺八の新しい形にこころ躍らせそういう曲を聴くことにとらわれ過ぎていたかも知れない。改めて古曲、本曲を聴いて、本来の邦楽の美しさを突きつけられた気がした。すべて、ここが原点で、芸術的なアレンジが加えられ藤原氏の世界は創造されている。
それにしてもこの人はいくつの顔を持っているのだろうか。会うたびにイメージが違う。演奏会の内容の違いでも面持ちが違ってくるのだろうけれど、プロとしての自信が裏付けされているのだろう。
終了後少しお話をさせていただき、サインもいただいた。やっぱり変わらない道山さんでした。今日の事は私の中ではかなりの自慢です。ありがとうございました。
Kokoro
目を閉じて しみじみと
貴方の音を聴く
ふるさとの曲が流れている
それは 澄み切った透明な色
無限に広がる宇宙にも似た
大きく包み込んでくれる 母の愛
美しい音は心を美しくしてくれる
こだわりも 悲しみも 苦しみも
そういう 醜い魂が
溶け出して いつしか
なだらかな 穏やかな心になっている
いつも 美しい音に触れていたい
美しい心でありたい
心穏やかにいたい
そうありたいと こころが叫ぶ
目を閉じて たおやかに
貴方の音に触れる
赤とんぼの曲が流れている
それは 繊細で柔軟な手触り
海の奥深くまで届く光にも似た
力強く守ってくれる 父の愛
美しい音は心を美しくしてくれる
憎しみも 嫉妬も ずるさも
そういう汚れた魂が
溶け出して いつしか
清らかな さわやかな心になっている
いつも 美しい音に触れていたい
やさしい心でありたい
平静なこころでいたい
そうありたいと こころが叫ぶ
創明合奏団アンサンブルの夕べ in けやきホール
2002・12・4
渋谷 古賀政男記念館内にある けやきホールで行われた ”創明合奏団アンサンブルの夕べ” では箏、三絃、十七絃 のほかに賛助出演として、フルートの紀谷恭行氏と尺八の藤原道山氏が出演した。 けやきホールの厳かな雰囲気の中、小野衛作品が次々と演奏され、藤原氏も 箏四重奏曲一番、箏四重奏曲二番に参加した。 音の掛け合いの美しい曲だった という印象がある。久しぶりに落ち着いた純粋な邦楽を聴いた。 落ち着くし、安心して聴いていられる。 驚きも裏切りもない 穏やかな時間が流れた。
Dream Power ジョン・レノン スーパーライブ in さいたまスーパーアリーナ 2002・12・9
「Dream Power - ひとりひとりが夢をもつこと、それが世界を変えてゆく力になる/オノ・ヨーコ」
12月9日、朝から降り続く雪。午後になってもやむ気配もなく、4時を過ぎてやっとあがった。平年より24日も早いという。足元に5cm程積もった雪も水分を多く含んでいるためすぐにシャーベット状になり、解けていった。
この日 さいたまスーパーアリーナ でジョン・レノン スーパーライヴが行われた。このコンサートは ジョンとヨーコが設立した 「スピリット・ファンデーション」(Spirit
Foundation)を通して、売上金の一部をアジア、アフリカの子どもたちの学校建設資金にドネーションするというもの。昨年のコンサートの寄付により、5カ国、10の地域に11の学校の建設、改築、増築がされた。
1万3,000人の人で埋め尽くされた会場は、今から始まるビッグアーティストたちへの期待に高鳴っていた。 私も トータス松本、山崎まさよしの曲はCDではよく聴いていて、特に山崎まさよしの「one
more time. one more chance」「振り向かない」は、大好きな曲。 女性アーティストの 大貫妙子、杏子 もパワーあふれるステージでその世界にひきつけられた。全体の構成としてもあまり創られているという感じが無く、とても自然で、順番に出てきてビートルズナンバー、ジョン・レノンナンバーを歌っていく。 誰もが楽しみながら 思いっきり自由に歌っているのが伝わってきて 観ていても本当に気持ちいい。 そして最後に 坂本龍一が登場。 坂本氏の放つオーラ、存在感は他に随をみない。坂本龍一はデビューの頃よく聴いていた。 YMO 時代。シンセサイザー が出始めた頃で、YMO の曲はどれも斬新で こころ躍らせた。弟がファンで かなり影響され、自分でもシンセサイザーを何台も並べて作曲をしていたことを思い出す。 坂本龍一とともに オノ・ヨーコ がステージに立ち、世界平和へのメッセージが読まれた。ジョンに愛され、そして永遠にジョンを愛し続けるヨーコさんの人柄が会場の1万3,000人の心に響き 涙する人もいた。
しかし、私がこのライヴに行きたかった一番の理由は他にあった。 坂本龍一のユニットとして 尺八奏者の 藤原道山が出たからだ。藤原氏の尺八は 磨ぎ澄まされた繊細さと 嵐のような激しさ、力強さを兼ね備えている。私は想像を絶するようなこの尺八の音に魅了され続けている。 坂本龍一の隣に立つ藤原氏は その鼓動が聞こえてきそうな程 カチカチに緊張していて、尺八を吹くその手元も震えているように見えた。 舞台慣れしないぎこちなさが私は好きだが、それにしても この大会場、大観客、おまけに坂本龍一との共演。 緊張は頂点に達していた。 しかし、演奏に何のひるみもなかった。力いっぱいの素晴らしい演奏だった。アコースティックな大音響に あの繊細な音は消されてしまうのではないかと 余計な心配をしていたが、すぐにその心配も払拭された。さすが、坂本龍一ならではのアレンジ。よくぞ 藤原道山に目をつけてくれた と感謝。 だってかっこ良すぎる。
あのステージを思い出すたびに涙しそうです。 よかったね、こんな立派な舞台に立てて。 興奮冷め遣らぬ日々。
ひとりひとりが夢を持つこと、ひとりひとりが平和を願うこと、生まれた国・肌の色ーそんなことで差別しない。人間は生まれたときから幸せになる権利を持っている。幸せになりたいと願う権利を持っている。夢を持つ権利もその夢を叶えたいと願う権利も、皆平等に持っている。 少しだけ自分の周りを見渡して、小さな小さな幸せになるための一歩を踏み出すことが出来れば・・・ 世界の人を救うことは出来ない。でも、隣の人を救えれば、それが世界中に広がれば 地球はもっとやさしい天体(ほし)になれる。
■参加アーティスト■
■ヨーコさんからのメッセージ■
今年も、ジョンのスピリットを伝えていこうという呼びかけに応えて日本のトップ・アーティストが集まってくれました。昨年に引き続いて、今年のコンサートでも、貧困や紛争により学びたくてもその機会が失われているアジア・アフリカの子どもたちに学校をプレゼントしていきましょう。
ジョンの歌をみんなで歌うことで、アジア・アフリカの子どもたちの未来に希望をもたらすことができれば、すばらしいと思っています。どんなささやかなことでも、ひとりひとりが『夢』を持つこと、それが世界を変えていく力になるのだと信じています。
オノ・ヨーコ
曠の会 in 紀尾井小ホール 2002・12・22
男性ばかり11人という荘厳な雰囲気で行われた 第2回曠の会。 テーマは「流れ」。 残念ながら私には邦楽の何たるかを語れる知識が無い。これまでいろいろな演奏会を聴いたということもない。 だから、何かと比べて などということはとうてい出来ないが 男性ばかりのこのような演奏会はあまり無いと思う。全身に差し込んでくる音を感した。 包み込まれる音。特に3曲目の 尺八三重奏曲「橅」は メロディーの美しさと みごとに息の合った三人の音の融合に 全身に鳥肌が立つような緊張と、力がスーと抜けてしまうような心地よい脱力感。 こんなに深い音があるのだろうか。解説にあるように「自然の中の何ひとつ無駄の無い世界」 まさに言いえている。作曲なさった山本真山氏の鋭く豊かな創造の世界に触れたような気がした。 どんな世界でもそうであろうが、極めるということはないのだろう。 この「曠の会」の男性たちには 静かに しかし強く もっと上を上をとめざしているように見える。 力強い演奏会だった。