制度からみた介護保険
|
2000年4月に介護保険が施行され4年が経ちました。50年に1度の福祉法大改正の時に福祉現場に身をおいていることは大変幸せなことだと思います。 介護保険制度は、暮らしに不安を抱く高齢者やその家族をシステマティックに保障する新しい社会保障制度として短期間のうちに定着しました。サービス基盤も急速に整備され、在宅サービスの三本柱(デイサービス、ホームヘルプサービス、ショートステイ)は施行時の3倍にまで事業拡大が成されています。職場には毎日のように新事業の営業者があいさつにくるところを見ると今後もまだまだ民間企業の事業参入は続くと予想できます。 しかし、一方で課題も見えてきました。介護保険の基本理念は『自立支援』です。自分の残存能力を充分に活かして、自立した質の高い生活を送るための支援です。サービス利用者が自ら選択したサービスを『契約』し、対価を払うことで権利意識をもち、利用者本意の質の高いサービスを選択できるものです。しかし、サービス事業者の拡大でサービス量の競い合いがみられるようになりました。それは、報酬が質に対するものではなく量に対するものだからです。その結果、「サービスの質」に対する苦情が年々増えてきているのも確かです。また、不正により指定取り消しを受けた事業者も急激に増えています。 ケアマネジャーは「公正、中立」の立場で、利用者本意のサービスをマネジメントする重要な役目を担っています。しかし現状は多忙すぎて本来充分に時間をかけなくてはならないアセスメントやモニタリング、サービス担当者会議の開催などができていない現状があります。この背景には介護認定者の増加や、ケアマネひとりの持つプラン数の多さがあります。また、ケアマネの事業所がサービス事業所や施設と併設していて、自社サービスをプランに位置付ける志向がみられ「公正、中立」の立場を貫けない現状もあります。ケアマネジャー有資格者の就業率の低さや、一事業所への定着率の低さもこのような問題が潜在しているからです。 施設サービスではサービスの質の向上の点から『個室における個別のケア』(ユニットケア)への取り組み、在宅復帰に向けたリハビリの実施、ターミナルケアへの対応などの整備がなされています。また、人材の資質の向上、専門性の強化、労働環境の見直しなどがあげられます。サービスの量を優先するあまり専門的知識の無い者を簡単な研修のみで専門職種に就かせることにも特に規定はされていません。これは知識の裏付けに基づいた経験を積むということにはならず、ただ職場に慣れる、職場の状況に適応できるとうことに制限されてしまいプロフェッショナルな人材の育成には繋がりません。 在宅サービスでは『在宅ケア』の推進という介護保険の目標から在宅サービス事業の拡大が図られ、内容も多様化されたことで施設から在宅へと利用者の意向も変わってきています。しかし、重度の要介護者は施設志向が強く、施設入所を最後の砦とするにはもっと在宅サービスの基盤強化が必要です。同時に軽度要介護者の急増と過剰のサービス供給の傾向があり『在宅ケア』、『自立支援』の目標からみると制度が充分に機能しているとも言ません。 保険者は市町村で、他の社会保険と同様強制保険です。市町村は介護保険を主体的に実施し運営しています。保険料は3年ごとにサービス見込み量をもとに算定されています。しかし、サービス見込み量を超える事業者の指定や施設の増加があります。サービス利用量の増加は保険料の増加に繋がり、地域格差が出てきています。特に施設利用者の多い地域は保険料も高くなってきています。このままでは年々保険料は値上がりし大きな負担となってしまします。 介護保険法において法施行5年を目途に制度全般の見直しを行うと規定されています。現状から見えてきた新たな課題への対応、将来を見据えた法改正が必要な時期が来ています。
|
|
|