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感想文 「姑獲鳥の夏」 京極夏彦(著)

今年の夏の早い時期に読んだ本がこれでした。姑獲鳥(うぶめ)と読みます。 こんなです。

姑獲鳥

怖いっすか?そういう人もたくさんいると思います。

趣味が悪い?う〜ん、甘んじて受け入れます。

ただね、この世界とても面白いので、いつか時期が来たら、手にとって貰えたらと思います。 最近僕は、「妖怪図巻」なんていう妖怪がたくさん載っている画集を買って、 ニヤニヤしながら、眺めているくらいです。とっても愛らしいのです、妖怪って。

妖怪というと「ゲゲゲの鬼太郎」を思い出す人も多いと思います。僕もかつては、それくらいしか 知らなくて、「ゲゲゲの鬼太郎」は小さい頃から、あんまし好きじゃなかったです。 それは多分今となっても、あんまり好きではないです。なんかその妖怪が暗くて。

しかし、この京極夏彦さんの世界は魅力的です、ハマリます。 京極さんの本はバカみたいに分厚くて、 この「姑獲鳥の夏」の文庫本は2.6cm、次に買ってきた「 魍魎の匣(もうりょうのはこ)」 は4.2cm、アホかというくらい分厚いんですが、 それでも一気に読めます、吸い込まれます。

この「姑獲鳥の夏」は、京極堂シリーズという人気シリーズの一冊目です。そして、 このシリーズのお決まりの言葉がこれです。「この世には、不思議なものなど何ひとつないのだよ」

妖怪というのは、科学至上主義の現代では、迷信とか言われて疎まれていますが、 昔の人にとっては、それはそれで科学的で、社会の仕組みを担う一つの論理だったのです。 妖怪という存在によって、何か訳の分からない不思議な現象を説明するとか、 子供に言うことを聞かせるとか、 妖怪というのはただやみくもに怖がらせる為だけの存在でなくて、そこには存在意義が あって、当たり前ですが、役割があったのです。

そういった昔の人の考えとかいうものは、もちろん科学的に出鱈目で、 だから、僕もそういった妖怪なんてものがいるだなんて、信じるわけではないのだけれど、 ただ、そういったものを編み出してその集落なんかで共通認識として共有して、 それを伝えていくというのは、頭悪いとかでなくて、とても愛らしいと思うのです。

そこで、「この世には、不思議なものなど何ひとつないのだよ」となるのです。 ただ、気味が悪くて、怖いだけの妖怪にも、意味があって、もうその日本の昔ながらの システムは破綻してしまったんだけど、それはただ否定されるだけのものでなくて、 今さら「昔に戻ろう」だなんてバカなことは言わないけれど、何かいとおしく 思ってしまうのです。

出産できずに死亡した女性が亡者となってこの世に現れた姑獲鳥(うぶめ)は、 もちろん現代でその姿を見ることはないのですが、家の存続のため、女性にとって子供を産むことが 大きな命題であったかつての封建社会と、子供が欲しくてもできなくて不妊治療 をしている30代中盤から後半の女性たちと、それは決して古臭い迷信なぞではないのです。

と、小難しいことを書いてみましたが、 純粋に妖怪は可愛くて、小説は魑(ち)魅(み)魍(もう)魎(りょう)でとても面白いです。 是非一度ご試食くださいませ。

03.09.21

参考サイトを以下に。

  • 京極夏彦ファンサイト
  • 京極夏彦ネットコミュニティ


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