ここまでくりゃ、誰だって自分の身の程を知らないわけじゃない。
だが、それでも通りかかる美人を視線が追ってしまう欲望(というよりも反射)を止めることなんて
できやしない。
なぜ男は美女が好きなのだろうか?
それは本能が美女を求めるのである。
本能は、種の保存を求める。種の保存を求めるとはつまり、SEXをして健康な子どもを生ませることである。
男はそんなに子どもを生ませたいのだろうか?
あなた、あるいはあなたの周りの男は子どもをそんなに欲しがっているか?
そうでもないだろう。
しかし、男の本能は子どもを可能な限り女に産ませ、一人でも多くの子孫を残そうとしている。
射精を済ませるとその場から逃げ出すのが男の本性だ。
それでも比較的賢明な男が子どもを欲しがらないのは、少ないながらも社会性が残っているおかげだ。
社会性は、子どもができたら、女子どもの世話をする義務を感じさせる。
だが、やはり男の本能は、古い子どもは古い女に養わせておいて、
次の若くて活きのいい女に、次の若くて活きのいい子どもを産ませたいと思う。
女は子どもが欲しくないのだろうか?女は男ほどSEXをしたがらない。
女が男ほど見境なくSEXをしたがらないのは、できた子どもを育てなければならないからである。
一人の女で産み育てられる子どもの数は限度がある。
昔の女は閉経まで、子どもを産んでは授乳し産んでは授乳していた。
女は自分に稼ぎを運べる力を持ち、かつ、子育てを手伝うやさしい男でなければ、SEXをしたがらない。
そして、男は何歳になってもSEX、子作りが可能であるのに対して、女は閉経になれば子どもを産めなくなる。
女は閉経によって、子どもを産み育てる永遠とも思える連鎖から、自らの生命のリスクを減らそうとしているのだ。
授乳を終えたバストに雄は群がらない。
男はなぜ美女とSEXしたがるのか?
それはより優秀な子孫を残すためである。脂肪が多すぎる、あるいは少なすぎる女は平均的な女に比べ
健康面で劣る可能性が高い。張りのある肌、艶のある髪の女は、そうでない女に比べ、順調なたんぱく質の摂取を示し、
生命力のある子どもを産む可能性が高い。
まるいお尻は順調な出産を示し、くびれたウエストは内臓に余計な脂肪がないことを示す。
整った顔立ちは優れた健康と機能を示し、若さは生殖能力の高さを示す。
処女であることは、別の男の子どもを産んでいないことを示し、自分の子どもがよりよい環境で育つことを示す。
では、人間はそんなにも、知識ではなく本能に振り回されるバカな存在なのだろうか?
かわいらしい処女が好きな男は軽蔑すべきバカな存在であろうか?
そうでもあるまい。そういうことを訴える女もやはり、経済力があり美しい男を求めている。
それも本能である。本能を否定するならば、異性を愛することもないし、死に恐怖することもない。
我々は本能によって、なんの理由も知らされずに、恋をし、死に恐怖し、無目的に生き続けている。
いくら人の知性が発達したとしても、本能がそれに追いついてくるのはまだまだ時間がかかる。
人工知能の世界的権威マーヴィン・ミンスキーによれば、
人は美しいものを目にすると、脳の評価・選択・批判を停止するよう信号が送られるという。
美男美女には、それを見た人の脳を機能停止させるほどの力を持っているということだ。
人間の美への執着は計り知れず、また現実は残酷である。
<追記>この本の邦題はキャッチーに過ぎる。原題は、「SURVIVAL OF THE PRETTIEST-The Science of Beauty」という
大真面目に美男美女について分析した本なのだ。あまりに大真面目で取り付く島もないほどである。面白い。
05.02.09