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50m走の思い出

自慢じゃないが、いや自慢だが運動神経には自信がない。
生まれてこのかた、はや四半世紀を軽く超えつつあるのにも関わらず、 いまだに「逆上がり」ができないし、なわとびの「2重飛び」も一回しかできない。足も遅い。

しかし、あのときだけはほんと凹んだ。今でも辛い思い出である。

中学3年生の思春期の真っ只中、僕のクラスでは運動場で50m走がとり行われていた。

ヤンキー文化が花開いていた(多分今でも)うちの田舎では、
音楽のテストでは歌わずずっと黙っているのが常識で、
卒業式にはガラスが50枚ばかり割られるのがよくあって、
クラスの9割の男子が校則に反する学ランを着ていて(残り1割はいじめられっ子)、
ちょっと目立つとヤンキーと言われる方々が近寄ってきて 「おまえ調子に乗ってるんじゃねえぞ」とむなぐらを捕まれた。

音楽のテストで歌うのは恥ずかしくっても、運動ができるのはやはりステータスで ヤンキーの皆さんも一生懸命走ったのだった。

先生が50mを測って、さあ名簿順にスタート。僕はストップウォッチを持って タイムの計測をやることに。

3人ずつ走っていき、男子の前半から50m走を走り終えていく。
「カミヤ、走って来い」と先生。
走り終えた人にストップウォッチを渡してスタート地点へ行く。

ちょうど男子が全員走り終わりつつあって、次は女子。
すると、な、なんと僕が女子の名簿先頭の子と走ることになってしまったではないか!!
そして、それはもう隠しはしない。僕がひそかに想い続けていた 色白でキュートな彼女じゃないか!!

これはもう負けられない。
並んで走って負けるわけにはいかない。
何度もいうが、こっちは思春期の真っ只中なのだ!
男女の体力差が出てきて、男子も筋肉がついてきて、女子は丸みを帯びてきているのだ!

「よ〜い、スタート!」の合図。
僕は明らかにフライング気味でスタートを切った。
そんなクラスの50m走にフライングをする奴などいない。
しかし、なりふりを構ってはいられないのだ!

「やった!飛び出した!」と思った矢先、
いきなり飛び出したロケットスタートにも関わらず、あっさりとその右を抜いていく彼女。
僕は50mという短い距離の間にもずるずると差を広げられそのままゴール。

ゴールまで精一杯走った。ああ、かなしい。。。
フライングしてまで負けるなんて。。。
なんのどんでん返しもなく、この物語も終わりを告げるのである。

03.05.11

(そうそう、忘れていた、ヤンキーの皆さんは授業中にシンナーでラリったりもしていた。 とか言いながら、みんないいやつなんだけどね、となにかあったときのためのフォロー)


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