七月の予定のおしらせ+おとな紙司馬イイ話

かちかち、と拍子木の音が鳴らされる。
もちろん、現代っ子たる文偉と休昭が、その音を生で聞くのは初めてであるし、その積み木のような木の楽器が、拍子木という名前であることすらおぼろげにしか判っていない。
にもかかわらず、なぜだかなつかしい思いにとらわれた。

文偉「というか、くっきー先生、なにをやっているのですか」
文偉にうながされ、灰色の毛をしたたれ耳うさぎは、首から下げた拍子木から手を離すと、壇上に置いた紙芝居を示す。
くっきー「はいはい、良い子は集まれ、集まれ。たのしい紙芝居のはじまりだよー」
休昭「うわあ、紙芝居!」
文偉「知っているのか、休昭」
休昭「知っているよ。むかし近所の公民館に、古い紙芝居が大量にあってね、児童会があると、近所のおかあさんたちが読んでくれたんだよなー」

よほど、そのときの思い出がいい思い出であったのか、うっとりと、そのときの光景を思い出す休昭。
休昭は、大人しく躾がよいこともあって、大人から可愛がられる子供であった。
本人も、早くに母親を亡くしていたので、年上の女性に可愛がられた思い出のほうが、同世代の少女との甘い思い出よりもうつくしく思い出される傾向がある。

文偉「休昭は放っておき、くっきー先生、なんだって唐突に紙芝居なのですか」
くっきー「ちょっと思いついて、昨晩、徹夜で作ってみたのだ。さー、飴玉やるから、そこに座って、とくと見よ!」
文偉「暇だからいいけど……たぶん昔なつかしの民話や御伽噺だろうなー」
くっきー「それでは、はじまりはじまりー!」

そして、うさぎのちんまりとした手によって、紙芝居が開かれる。
が、その絵を見て、文偉も休昭も、思わず、うっ、と言葉を詰まらせた。

休昭「絵、絵が!」
文偉「絵が思いっきり荒木っぽい! なぜにJ○J○!」



くっきー先生の創作紙芝居

GOGHの不器用な冒険

ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ…


ときは1888年フランスのアルルッ!
ひとりの若者がアパルトマンにたたずんでいる。
われわれは、この青年に見覚えがある! 
いや、この青年を知っているッ!

ゴーガン「くそう、スランプだぜッ! なにをするにもうまくいかねぇ。
畜生、それもこれも、ぜんぶゴッホのせいだッ! 
やつがこんなド田舎に住もうなんて誘ってこなければ、俺だってもうちょっとうまくやれたんだッ!」

ふと、何者かの気配をおぼえるゴーガン!
部屋の片隅に、ゆらりと立ち上がる影がひとつ!

ゴーガン「ああッ!」

ゴーガン「そんなッ! バカなッ!」

ゆらりと立ち上がる、蒼白い頬をした金髪の男! 
男の名はゴッホ! フィンセント・バン・ゴッホ! 
孤高の天才画家!

そしてゴーガンは、ゴッホの手に、ありえないものを見る。
太陽の光にぎらりと輝く不気味なナイフ! 
そして天才画家の目に宿る、確実な狂気! 
やつはまちがいなく俺を殺そうとしているッ! 
ゴーガンはそう思った。

ゴーガン「こ、こいつはヤベェーっ! パリ生まれの俺にはわかるッ! ゴッホは一線を越えちまったーッ!」
ゴッホURRRRRYYYYYYYYYYYYY!!
ゴーガン「目を覚ませ、ゴッホ! これは君の意思ではないはずだッ!」
ゴッホ「俺は人間をやめたぞッ、ポォォォールッ!!」
ゴーガン「げえっ! いきなりファーストネームで呼びやがったーッ! 
いまさらだが、俺の名前はポール・ゴーガン、画家だッ!」
ゴッホ「勝手な野郎だぜッ! この都会育ちの甘ちゃんがッ! 
てめーだって共同生活にノリノリだったくせに、貴様の失敗のなにもかもッ! 
俺とアルルのせいにするつもりかッ! あぁん?」
ゴーガン「う、うう……な、なんて殺気だ……」

ゴッホ「貴様には失望したぜーッ! くらえッ! ひまわり色の波紋疾走ッ!!

ゴーガンうっぎゃああああああ!!!

ゴッホの攻撃を、すんでのところでかわすゴーガン!
恐るべし! 天才画家! 
ひまわり色の執拗な攻撃に、同じく天才・ゴーガンも、なすすべ無し!

ゴーガン「く、くそう、ここで死ぬわけにはいかねー。
ゴッホ! 君のことは友人だと思っていたが、これでは仕方ないッ! 
いくぞ! スタンドッ! 『われわれはどこから来たのか、われわれは何者か、われわれはどこへ行くのか』ッ! 
オラオラオラオラオアラアッ!!」
ゴッホ「長ぇーんだよッ! 言いたいことはよくわかるが、ちと長すぎやしねぇーかッ? 
そーゆーところがセンスってもんよ!」
ゴーガン「う、うるせーッ! 君の絵のタイトルだって、ほとんどそのまんまじゃねーかッ!」
ゴッホ「フン! 素人にはわからぬ味わい深さこそ、この俺の持ち味よッ! 
さらにッ! 花瓶の14輪のひまわりによる波紋疾走ッッ!!!

ゴーガンぎぃぃぃぃぃぃやああああああ!!!! やっぱそのまんまーッ!!!」

ゴッホ「あばよ、ポール! 日曜画家がプロを目指そうなんて勘違いをおこしたのが、おまえの悲劇のはじまりだったのさ! あの世でたっぷり後悔するがいいぜッ!」
ゴーガン「こ、このままではヤバイッ! こういう時は、あれしかねぇ!」
ゴッホ「はっ! ポール、ま、まさか、そのアレとは……!?」

ゴーガン「フフフフフフ……」

ゴッホ「な、なにをするつもりだ……」

ゴーガン「逃げるんだよォォォォォォーーーーッ!」

ゴッホ「うわー、なんだっ、この男―ッ!!」

こうしてゴッホの狂気により、ナイフで追いかけ回されたゴーガンは、逃げるようにしてアルルから去った。
かくして、20世紀を代表する天才画家同士の、短い共同生活は終わりを告げたのである。

つづく…


くっきー「以上、くっきー先生の『おとな紙司馬イイ話』。シリーズ第一弾『ゴッホの不器用な冒険』、第四十一回『さらば! 我が友ゴーガン!』でした」
文偉「……先生、なんで荒木なんですか……」
くっきー「時代はいま、荒木。というか、時代はずっと荒木。次回のずんだとリンクしてみました」
休昭「ちっとも『イイ話』じゃないし……しかも、ゴッホの不器用な冒険って、ろこつに切ないタイトルで、ラストの麦畑の銃声がいまから聞こえてきそうです!」
くっきー「史実であるからして、仕方ないのだよ。第二弾『レミーのおいしいタレイラン』も現在着々と準備中」
文偉「タレイランって、またマニアックな……もっと歴史には、本当にイイ話もたくさんあるはずなのになあ」
くっきー「でも新しかろう? 荒木は本当になんにでもマッチするので、先生もびっくりです」
文偉「というより、荒木の個性が強烈すぎて、ありとあらゆるものを荒木色に染めてしまうだけだと思います、先生」
くっきー「んもー。その口調でいくと、あんまり満足しなかったようであるな、諸君。
それでは、ほんとうにちょっと切ない『いい話』をしようかのう。
ゴッホの代表作といえばひまわりなわけだが、そのひまわりに関するギリシャ神話を知っておるかね?」
休昭「ギリシャ神話? 知らないなあ」
文偉「というか、先生、ひまわりって、アメリカ産で、かなりあとになってヨーロッパに渡ってきた花のはずですが」
くっきー「はいはい、細かいところはスルー。

では美しくも悲しきひまわりのお話。

むかしむかし、うつくしい水のニンフがおりました。
名前はクリュティエ。
大人しい彼女はあるとき、太陽の神アポロンに見初められ、ふたりは恋人となります。
しかしアポロンは浮気性。
つぎからつぎへと女を渡り歩く神様で、クリュティエもその例に漏れず、やがてあきられて、あっさりと捨てられてしまいます。
アポロンはそれきり、水のニンフのことを思い出すこともありませんでしたが、クリュティエのほうはそうではありませんでした。
彼女は毎朝、夜が明ける前に起きると、日なが一日、かつての恋人が太陽の車を駆って、天空を横切っていくのを見つめておりました。
太陽が沈んで恋人がいなくなってしまうと、クリュティエは、悲しげなため息をついて、仲間のもとへと帰っていきます。
その悲しげな姿は仲間たちの同情をあつめましたが、しかし、アポロンは一向に彼女に見向きもしないのでした。

クリュティエは、毎日、毎日、ひたすら恋人の姿を追いつづけます。
なにを求めているわけでもないのです。
彼女にとっては、ただ失った恋人の姿を、遠くから見つめることができるだけで満足なのでした。

そうしてずうっと眺め続けていくうちに、うつくしかったクリュティエの姿は、次第に変貌していきました。
やがて美しかった水のニンフ、クリュティエの姿は、一日じゅう、太陽の方向を見つめつづける、あざやかな黄色いひまわりの花に変わってしまいました。
クリュティエの心が宿っているので、ひまわりの花は、自分を思い出してはくれない昔の恋人をいまも追いつづけて、大地に立ちつづけているのです」

文偉「悲しいなあ」
休昭「切ないなあ」
くっきー「そうであろう? この神話を知ると、暑さを煽るように能天気に咲いているひまわりの花の印象が、変わってくるであろう?」
文偉「いやー、本気で『ひまわりって、体感温度を上げる花だよな』、とか思っているのは、はさみのくらいなものですよ」
くっきー「仙台の奇人は放っておき、いよいよ夏も近づく八十八夜、暑いさなかに思い出して、ちょっとでも気晴らしをしてくれたまえ」

休昭「気晴らしはかまいませんが、先生、そろそろ長すぎる前フリを終えて、本題に入りませんか」
くっきー「おお、そうであったのう。すまぬすまぬ、それでは、七月のはさみの世界のスケジュールが決まったので、そのお知らせだよ」
文偉「というか、単にお知らせだけなら、更新履歴でも出来るのに…」
休昭「『おとな紙司馬イイ話』を発表したかっただけだよね」
くっきー「カッとなってやった。いまは後悔している」
文偉「ハイハイ、それじゃあ、お知らせをお願いします」
くっきー「むーん、こやつら、もなかさんで対応に慣れているせいか、変にツッコミがこなれていて面白くないのう。
それはともかく、七月のスケジューーールッ!!」

6/29から7/4まで、HP休止
gooブログは連載続行。
アメーバブログはB.Bの世界を29日より再開。6日にいったん、また休止。
HPのアップは、
7/6(日)
7/13(日)
7/16(水)
7/20(日)
7/27(日)
の五回の予定


休昭「要するに日曜日ぜんぶとプラス16日ですね」
くっきー「あくまで予定なので、変更になった場合は申し訳ない。以前よりも間隔を空けないでのアップになっているのではないのかな」
文偉「回数と日程もそうですが、問題は内容かと思います。一回のアップにつき、新作の二作品はアップとしてカウントしてほしいなあと思うところですが、先生!」
くっきー「はさみのに言え。というか、ほんっとに、昔は毎日アップとかやっていたのが嘘みたいだなー。怖いもの知らずだったというか……。計画どおりにこなそうとすると、はさみのは毎日A4で三枚の新作を書かねばならないスケジュール。飛鏡込み。
やっぱけっこうキツイのだよ」
休昭「いまわれわれがいるようなファイルを作っているから、時間がなくなるのだと思います」
くっきー「いーじゃん、息抜き、息抜き! というわけで、来月こそは、内容充実を計るぞ!」
文偉「そう、来月こそは、だな」
休昭「まったくだね」

というわけで、今月は、イマイチ、内容を充実させきれなかった部分があるので、来月こそは、がっちり楽しいお話をアップしたいところでございます。
来月もまた、はさみの世界をよろしくお願いいたしますm(__)m

更新履歴へ戻る