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人の姿をしたなにか。
はじめて『それ』を見た時の印象である。
人としての容姿と外見を、なんとか止めようとしている、奇妙な肉塊。
膝が内側にむかってねじれており、そのつま先が前ではなく内側に向いてしまっているために、ふつうに歩行することができないでいる。
だから、けんめいに足を動かしているのだが、見えない糸でむりやり動かされているあやつり人形のように、全体の動きはぎこちない。
悪魔に魂も侵食されたのか、その表情には、苦悶もなければ悲愁もない。
個性すら奪われた、うつろな白い顔を、それはしていた。
大回廊という名にふさわしい廊下は大理石が敷き詰められており、天井も吹き抜けになっていて、階段を逆さにしたような天井が特徴的である。
掃き清められた、うつくしくも冷たい廊下のうえを、悪魔がたったひとり、ゆっくり、ゆっくりと進んでいる。
「こいつらは、何を狙ってやってきたのだろう」
趙雲の問いに、エピファニーは、画面に目を向けたまま、答えた。
「おそらくは、クロノス機関のシステムの破壊が目的です。もっと内部に侵入してから正体をあらわすつもりだったのでしょうが、この塔には霊的防御網がはりめぐらされておりますので、それに引っかかり、正体をあらわにするほかなかったのだろうと思われます」
「システムというと、バルさんがべり、なんとか、と呼んでいた女の声のことか」
「あれは将校にのみ使用が許可されている、対話形式の端末です。悪魔がねらっているシステムというのは、時間移動装置もふくむ、クロノス機関の中枢をになうメインコンピュータのことです」
エピファニーの淡々とした回答に、孔明が口をはさんだ。
「待て。ということは、もし悪魔がシステムとやらを破壊してしまったなら、われわれは過去に戻れない、ということか」
「申し訳ありません、そういうことになるかと思います」
たがいに顔を見合わせ、蒼くなる趙雲と孔明であるが、すぐに思いなおし、孔明はたずねた。
「しかしだ、われらには乙女たちがいる。彼女たちがなんとかしてくれるかもしれない」
すると、エピファニーは申し訳なさそうに、長いまつげをたたえた瞳をなんどもしばだたせながら、答えた。
「まことにお答えしにくいのですが、アイオーンの乙女たちは、ここ百年ほど、流砂の絶佳に姿をあらわしておりません。もしお二人を過去に戻せるとしたら、アイオーンの乙女のほかはいないのですが、こちらからはいっさいの連絡が取れない状況ですので、なんともお答えできないのです」
アイオーンの乙女、つまりは『われわれの』世界からすれば『魔女』と呼ばれる女神たちの集団であるが、『この世界』においては、たいへんに身近な存在である。彼女たちは確実に存在する、絶対的な『善』なのだ。
それがいない、ということが、孔明としてはどうしても理解できない。
大きな不安に襲われながらも、だからこそ、この国での暴政が見過ごされているのかと納得する。
悪魔のせいばかりではないのだ。
落ち込むふたりに、エピファニーが言った。
「なにかお飲み物でもお作りしましょうか」
「いや、いい。いまはなにも口に入らぬ」
「では、なにかほかに御用事はございませんでしょうか」
と言ってから、エピファニーは自分がずっと手にしていた絵本に気がついた。
「さきほど、同志バルエフスキーに依頼されました、あなたさまがたの伝説について書かれた絵本です。よろしければ、ごらんください」
孔明は、エピファニーの差し出す絵本を受けとった。
※なんだかウソツキになっていないか、わたくし…なんか今週はちょこまかアップする、とか言っていたのに、結局いつもと同じ一回だけ(-_-;)これも見通しの甘さが原因です。待っていてくださった方、いらしたらごめんなさいm(__)m 想像以上にあわただしい毎日です。自分でそう組んだんだけど…土日はきちんとアップできるようにします(>_<)
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