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「戻ってきたか、わが故郷、流砂の絶佳よ」
そんなつぶやきに、孔明は目を覚ましたのだが、まず最初に気づいたのは、その手に触れた床の冷たさであった。
目を覚まし、おのれの輪郭をうつす床の、磨きぬかれた鏡のような質感におどろく。
頭がまだぼんやりしている。刺客に襲われたのであったか。しかし命はあるようだ。
視界が明るいし、身体のどこも拘束されているというわけではないので、軟禁されているというわけではない、つまりは敵意ある環境におかれているのではないと、すぐに理解できた。
それにしても明るい。
屋外に放り出されたというわけではない証拠に、風はなく、そして孔明が気がつくほどに、空気ににおいというものがなかった。
かわりにあるのは、すきま風がひっきりなしに通っているような風の音と、痛いほどの太陽の光だけである。
まぶしさに目をほそめつつ、孔明が周囲を見回すと、ぞっとするほどに蒼ざめた空を眺める、来哲ことエウゲニー・バルエフスキーの姿があった。
そして孔明は思い出した。
馬超の屋敷にいたのである。
ところが馬超のもてなしていた客を来哲が殺してしまったために、揉め事が起こって、なにがなんだかわからないうちに光につつまれて、ここにいる。
そうだ、この男に、なんであんなことを(といっても、孔明は、何が起こったのかをまだ正しく認識できていなかったが)したのか詰問しなければと、責任感にかられて、孔明は立ち上がった。
と、ふと見れば、来哲の背後に、剣を抜いた趙雲が立っている。
来哲はそれに気づいているのかいないのか、腰に両手をあてて、じっと外の光景を見ているのである。
来哲がなにを見ているのであろうかと、ともに周囲を見回して、孔明は絶句した。
雲ひとつない蒼ざめた空の下、砂色の砦にぐるりと取り囲まれている。
砦の規模は途方もないもので、逆に奇怪な砂色の街が、砦のなかに陥没してしまったのではないかと錯覚するほど、大きくせり出している。
砂の津波がそのまま凍ってしまったような形状の砦のなか、砦をはるかに見下ろす尖塔がいくつもそびえている。
そのうちのひとつに、孔明たちはいた。
塔の斜面を、大きな団子虫のような奇妙な形状の、象ほどに大きなものが、音も立てずに往来している。
おどろいたことに、その虫のようなものには窓があり、そこには人の姿がみえる。
さらにおどろいたことに、窓の中にいる人々の肌は、孔明と同じ者もあれば、透き通るように白い者もあり、一方で漆黒の闇のように黒く輝く肌のものもいた。そして、その者のひとりが、同乗している者に、孔明のほうを興味深く指差したのである。
「……………!」
声にならない声をあげて、思わず身を引いた孔明に、来哲が振り返った。
※本日よりおはなしは『現世』に移行。SFファンからしたら「ヘンテコだなあ」と思われる箇所が多々あるかと思いますが、お目こぼしいただけたらと思います(^_^;) 話があちこち広がるのはいつものことですが、大風呂敷にならないようにしないと、いや、ほんとに。明日はアップの日であります。お時間あるかた遊びにいらしてくださいませ(^o^)丿
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