● おまけの広場 ●
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2007年4月27日(金)
流砂の絶佳 二十六

司馬仲達ともあろう者が、なにゆえ、うさぎなどに変化してしまっているのか?
そのあたりの事情を詳細に語っていくと、たいそうな時間を割かれてしまうので、あえて簡単に説明しよう。

ことの始まりは馬超からであった。
この馬超はアストラルとなっているのであるが、あるとき召喚された先でうさぎに変化する呪詛をかけられてしまった。
この呪詛は噛んだ相手に移る、という厄介なものであった。
つぎに、うさぎに変化した馬超をおもしろがってからかった孔明が、そうとも知らずに怒って噛んだ馬超によって、呪詛をうつされ、うさぎに変化した。
呪詛は強烈なもので、孔明は人として、いっさいのコミュニケーションを断たれてしまい、気絶していたところを、やはり、それを呪詛にかかった孔明だとは知らずにひろった趙雲によって、保護された。
そして、なんやかやとあり、孔明が呪詛にかかっていると知った仲達は、これを助けようとするも、生前のわだかまりを残す孔明がこれを拒否。
傷心の仲達は、天邪鬼なところを見せて孔明にいやがらせ(?)をするが、これに怒った孔明が仲達を噛み、仲達もまた、うさぎになった。
そして紆余曲折を経て、孔明だけは呪詛を解除されたのであるが、仲達はいったいいかなる行いゆえか、ひとりだけうさぎの身のままでいるのである。
しかし本人も周囲も、すっかりその状況になれてしまい、今日があるのであった。

さて、話をもどそう。
回覧板をまわすべく、アトラ・ハシースたちの憩うフロアを行く仲達であるが、ふと見れば、よく見知った者が、むつかしい顔をして柱にもたれている。
だれと話すでもなく、腕を組み、虚空をじっとにらんでいるようだ。

諸葛孔明という人物は、『はなはだ明るい』という意味のあるあざなのとおり、根の明るい人物である。
この場合の『明るい』とは、『にぎやかな人物』というものとはちがう。
孔明はいかなる困難に直面しようと、その根底にある明るさを失わない美質を持った人物だ。
世間をあてにして取り繕っているような明るさとは、まったく種類のちがう明るさを持っているのである。

ところが、その孔明の顔色がおもわしくないようだ。
はて、なにかあったかなと思いつつ、仲達はとてとてと、絨毯のうえを近づいていった。
すると、気配でそれとわかったようである。
孔明は顔をあげると、仲達に目礼をしてきた。
仲達もまた、それに応じてちいさな手を振った。


※さあて、いよいよあしたからゴールデンウィークであります!(^^)! 仙台は晴れがつづくそうなので、いろいろ出かけようと思います。ネタ探しじゃ~(^^♪ ニッキのアップはお休みしませんので、遊びにいらしてくださいませ(^^)/

2007年4月28日(土)
流砂の絶佳 二十七

「そなた一人でこのようなところで立っているとは、珍しいのう。なにかあったのか」
仲達がたずねると、孔明は、腕組みをやめて、仲達のほうに向きなおった。
「子龍と待ち合わせをしているのだよ。そういうおまえは何をしている」

仲達は趙雲と同年で、孔明よりも五つ年上なのであるが、アトラ・ハシースとしては孔明のほうが先輩というわけで、おまえ呼ばわりされても、腹を立てない。
孔明は、いつもは脱ぎ着の楽な洋装をしているのであるが、この日にかぎっては、めずらしく生前の姿をしていた。
上質な蜀錦の衣である。
手織りの布に、細かい刺繍のほどこされた、あざやかなものだ。まるで日輪のような衣であるなと、仲達は思う。
ふつうは、これほど派手な衣となると、衣裳ばかりが目立ってしまい、中身の印象はかえって薄まるか、あるいは印象を悪くしてしまうものであるが、孔明の場合は、いかなる派手な衣裳にも負けることはない。
星々をひきつれた月。まさにそんな雰囲気を持っている。

「回覧板をまわしていたのだ。そなたのところへ行く途中であったのだが、出かけるのか」
「仕事でな。すこしややこしい仕事になりそうだ」
孔明のことばに、仲達はほう、と眉をひそめた。
「仕事の虫であるそなたが、そのようにいうとはめずらしい。それに趙子龍とあえて最初から行動をともにするとは、相当に危険な仕事だとわかっているからなのか」

アトラ・ハシースは、まず女神らに召喚されたあと、状況を判断し、その場でもっとも活躍に適したアストラルを召喚するのがふつうである。
孔明の趙雲への評価は、生前とまったく変わらず、非常に高いものであるが、趙雲のアストラルとしての力は、やはり生前とおなじく、戦闘能力にある。
女神から召喚される理由は、いつも戦闘とはかぎらないため、孔明がいつでも趙雲を召喚するというわけではないのである。
しかし逆をいえば、孔明が趙雲を最初からいっしょに連れて行こうという場合は、ほぼ十割の確率で、召喚先で戦闘が待ち受けているということなのだ。

アトラ・ハシースの住まう『塔』は、以前はアストラルは立ち入り禁止となっていたが、最近、『アストラル人倫委員会』によって、こういった差別的な規制が緩和されて、だいぶ自由になった。
魔法がかけられており、日々、内装がいろいろ変化するフロアにも、アトラ・ハシースだけではなく、アストラルたちもいる。
ちなみに、アトラ・ハシースとアストラルとでは、アストラルのほうが、断然、数が多い。

「あまり大きな声ではいえないことだ。しばらく帰れないかもしれないから、その回覧板を先に見せてくれないか……なになに、『春の大カヌー大会・参加者募集のおしらせ』。
もうこんな季節がきたか……去年の優勝者はヘイルダールであったな」
「なにせとつぜんの強風で、波が荒れまくったからのう。まさか新米アトラ・ハシースがコン・ティキ号で大活躍するとは思わなんだ。
われらが周公瑾は、残念ながら選外であったが、今年はどうであろうか」
周公瑾の名を聞くと、孔明は回覧板を持ったまま、ぶるりと震えた。
「あのひとは、今年も出るのだろうな。去年はひどい目に遭ったのだぞ。
コン・ティキ号のフルチューン、面白そうだからわたしも参加させてもらったのだが、それがどこからか漏れて、しばらく顔をあわせるたびに、どうして同民族の味方をしないのかと嫌味を言われつづけたのだ」
「それはわたしも思うぞ。どうして周公瑾の味方をしなかったのだ」
「いや、だって、言いにくいのだが、そのう」
「なんだ」
「……人格の、差?」
「そうか……」
「はっ!」
「えっ?」
孔明がとつぜんに目を開き、フロアのあらぬ方向へと目を走らせた。
仲達がその目線に合わせて振り返ると、フロアにいくつもある、縄文杉のように大きく太い柱のむこうに、なんとなく見覚えのある影が去っていったように見えた。
「あわわ、いまのは、もしや!」
仲達が蒼くなって(灰色の毛に隠れてわかりづらいが)孔明にたずねると、孔明はそれこそ月のように真っ白になって、影の消えたほうを見つめながらうなずいた。
「周公瑾だ……しまった、聞こえていたぞ」


※ちょびちょびと改装をすすめつつのアップです。いやはや、けっこうあれもこれもといろいろでてくるものですね(^_^;) なるべくならお待たせしている休止中の連載を最優先に、としたいのですが、細かいところも気になって、ついつい手が伸びてしまう、という次第。順番としてはインデックスページから、休止中連載の見直し、ついでこうせいニッキと考えております。が、いちばん時間がかかりそうなのがこうせいニッキ関連。ファイルが多いからなー。時間はたっぷりあるし、がんばろう!(^^)!

2007年4月29日(日)
絶佳の流砂 二十八

「えー、ちょっと! 聞こえていたとはどういうことだ! 追いかけよう、でもって謝ろう!」
仲達があわてて言うも、孔明はうなずかず、言った。
「謝ったところで、『なんのことかね』ととぼけられて終わりだ。あのひとの性格からして、いまわれらが直接顔を出しても逆効果。
とりあえず使い魔を使者に立てよう。八つ当たりされて壊れても、問題にならないやつ」
と、いいながら、孔明は人差し指を立てて呪文をとなえる。
すると、その指先から煙が立ちのぼり、ちいさな鯉幟ができあがった。
「そなた、いまから、周公瑾のところへ行って、『さっきのは誤解です』と伝えてくるのだ。
それ以上の文言はいらぬ。周公瑾がなんらかのリアクションをとりそうになったら、全力で逃げよ」
鯉幟は嫌そうな顔をしつつも、あるじの命令を果たすため、空中をふわふわと漂っていった。

「大丈夫かのう」
鯉幟の安否をしんぱいしつつ、仲達が言うと、孔明もまた応じた。
「だいぶ規制もゆるまったとはいえ、使い魔に対する暴力はむしろ厳罰化されておるから、あれは問題あるまい。
問題は、わたしの心だ。あのひとの嫌味だけはどうしても聞き流せぬ。わたしの心にさくっと突き刺さるのだよ。
これはほとぼりが冷めるまで、やはり仕事に出かけていたほうがよさそうだな」
「えー?」
孔明のことばに、仲達は、丸い目をさらに丸くした。
「わたしはどうなる? わたしとて、周公瑾にはよい顔をされておらぬぞ!」
「うさぎをいじめる者はおるまい」
「いーや、周公瑾だけはわからない! ひどいぞ、諸葛亮。わたしを見捨てておのれは仕事か! わたしひとりで、この苦難をどう乗り切れというのだー! 
ぜーったい、いじめられる! 嫌味をいわれる! どころかカヌーからこっそり突き飛ばされてシャチの餌にされてしまうやもしれぬ! 
そなたが下宿先にもどったとき、最初にすることは、わたしの葬式の弔辞を書くことになるぞー! 
それでも友か! 超アンビリバボゥ! まことに友なら誠意を見せて、わたしも一緒に仕事につれていけー!」
「無茶を言うな。ただの仕事ではないのだぞ!」
「わたしだってアトラ・ハシースのはしくれ、そなたに出来ることならたいがいできるわい! 
これは差別だ、うさぎ差別!」

おーんおんおん、と派手に泣く仲達に、フロアで歓談していたアトラ・ハシースやアストラルたちが、何事かというふうに孔明のほうに視線をあつめてくる。
事の成り行きのわからない者たちからすれば、泣くうさぎと孔明、これはどう見ても、アトラ・ハシースたる孔明が、大人気なくもうさぎをいじめて泣かしているようにしか見えない。
うさぎであろうとなんであろうと、仲達の力は人間の姿であったときとまったく変わらず、強力なアトラ・ハシースなのであるが。

『うさぎ虐待?』
『いじめ? まさかねぇ』
『通報したほうがいいんじゃ?』

などとひそひそ声が聞こえてきて、孔明は、たらりと汗を流した。
「わかった。とりあえず召喚元に、おまえを同行させてよいか、交渉してみよう」
すると、ぴたりと仲達は泣くのをやめた。
「ほう、そうか!」
「やはり嘘泣きであったか!」
ころりと表情をかえて、仲達は目をぱっちりと開き、孔明のことばを否定した。
「えー? 嘘なんてついていないって。誤解、誤解」
「……千の仮面をもつ男め。ともかく、仕事のことに関しては、ここではひと目が立つ。あそこの人気のないソファのところへいこう」


※いまだ姿をみせないナゾの男(うちのHPでは)周瑜。じつは考えている設定が二通りありまして、どちらにするか、まーだ迷っています(^_^;)。おそらく今後、新連載として発表する『飛鏡、天に輝く』にてあきらかになる予定です、ハイ。(うちの)趙雲は嫌いじゃないみたいなんで、悪い人ではないはずです。さて、ありがたくも本日三周年を迎えることができました! みなさまありがとうございましたー(^o^)丿(うれしいから何度も言っちゃう)。

2007年4月30日(月)
流砂の絶佳 二十九

ソファに座るなり、孔明は切り出した。
「はじめに言っておくが、この仕事に同道するということは、われらと同じく厄介事をかかえることになるということだ。そのことは覚悟しておけ。
それと、この件に関しては他言はならぬ。そなたの子にも、孫にも、もちろん曹一族にも話してはならぬぞ。そのあとのことは、わたしは保証できぬ」
「む、それほどにむずかしい話なのか」
眉をひそめる仲達に、孔明はうなずくと、表情を引締めて、言った。
「アイオーンの乙女と名乗る魔女たちを知っているだろうか。われらが女神たちとはちがって、最高府やふつうのアトラ・ハシースとはいっさいかかわりをもたない特別な女たちだ。
その名は通常は伏せられており、歴史にその名が残るのはきわめて稀だという」
「おお、そういえば、女神さえも会ったことがないと聞いたぞ。
それを、おまえたちは、顔があわせたことがあると言ったな。
孔明は、周囲を気にしつつ、カウチのとなりにちょこんと座った、灰色の毛玉のような仲達にうなずいてみせた。
「時を自在に操ることのできる女たちなのだ。無敵だぞ。
自分たちの望む結果がでるまで、何度でもやり直しをすることができるのだからな。
もちろん、通常はわれらの世界、つまり基本世界や下宿先、汎世界にはあらわれない。
彼女たちは、われらとはちがう時間軸をもつ外世界で活動している」
「外世界、とな?」
「うむ。われらは神々の住まう場所を別次元と考えているが、外世界というのは、われらの世界の忠実なコピーだ。
ただし、その世界の存在には意味がある。外世界が存在するのは、人間をどう誘導すれば、争そわなくなるかを実験する場なのだ。
むかしは辺境世界で実験をしていたのだが、すくなからず基本世界にも影響が出るというので、最近では外世界で実験をおこなっているらしい」
「くわしいな」
「くわしくもなる。昨日、急にメールが来て、問答無用で仕事を受けるようにと指示があった。
拒否はできない。するつもりもないがな。相手は時を操れるのだ。われらでは決して勝てぬ」

孔明のめずらしくむずかしい顔の意味がわかり、仲達はなるほどと合点した。
「そなたは、いつも妙な苦労をしておるのう」
「好奇心は失敗のもと、だな。どうやら、アイオーンの乙女たちに接触したということは、イコール、彼女たちへの絶対服従を意味していたらしい。
なんでもかんでも仕事を請けるのは、いけないと学んだよ」
「おそるべき魔女たちだな」
「まったくだ。ただし、まったく慈悲がないというわけではないらしい。
わたしが召喚される先は外界なのであるが、その世界の説明によれば、そこはわれらの時代のコピーであるらしい」
「ほう」
孔明にしきりに同情していた仲達は、そこで興味を引かれて目を大きくひらいた


※やっと仙台、晴れた一日でした。やっぱり気持ちいいですねー(^^♪ さて、明日もまたアップであります。そして、遅ればせながら、アンケートに愉快なご意見をくださいまして、みなさまありがとうございますm(__)m ちとこちらも企画として考えていますが、実現するかな? 明日をお楽しみに~。

2007年5月1日(火)
流砂の絶佳 三十

「三国時代か。それでは、おまえやわたしもいるのだな」
「うむ。ただし微妙な差がある。その世界はアイオーンの乙女らが徹底的に干渉
しまくった効果で、われらの歴史とくらべると、おどろくほど戦争や扮争のたぐ
いがすくない世界なのだ。
なにせ宗教が統一されているから、扮争の種が激減する」
「む? 待て。となると、われらの時代の黄巾賊はどうなっておるのだ」
「別な理由で、漢が三国にわかれた状態になっている。われらのときとはだいぶ
ちがうから驚くぞ。
まず、漢王朝は、やはり腐敗していたのであるが、これを糺すべく立ち上がった
者たちが、どれもこれも、とっても人格者だった」
「はい?」
「国がボロボロになっているのを見て、まずは広すぎる国土を分割し、平和を取
り戻そうと言い出した。それが董卓」
「はあ?」
「董卓の意見に感動した曹操が、幼なじみの袁紹とともに、中原をふくむ北部を
担当することになった。で、袁術と孫堅がとっても仲良しで」
「はあ」
「ともに江東と荊州の一部を治めることになった。
で、おなじ劉姓ということで、わが君と劉表と劉璋が三人でタッグを組んで、荊
州の南部と蜀を治めることになったのだが、劉表が病弱で、劉璋がやっぱり優柔
不断だということを理由に、主公を蜀の主に推挙した」
「………なんだ、その素敵な三国鼎立。争いの要素、まるでナシ」
「そうだろう。なにせ董卓は国の父と呼ばれて、人民から慕われまくっておるし
、呂布に至っては国の守り神として神殿まで出来上がっておる。
あんまりみなから慕われると、ああいう者たちもかえって丸くなるものか、呂布
なんぞ人相がまるで別人だぞ。まるで天使のようだ。ほれ」

と、孔明は、手にしていた携帯電話から、データを取り出して、仲達にみせた。
これは基本世界の人間がつかっている携帯電話とはちがい、霊力を源にして稼動
するもので、データをホログラムにして再現することもできるすぐれものである


あらわれた呂布の、目じりの下がりまくった、いかにも優しげな顔に、仲達は呆
れていった。
「だれ、これ」
「そうだろう。呆れるだろう。基本世界の過去にさかのぼって、おまえも人に優
しくすれば、こういういい顔になれるのだと、教えてやりたいところだ」
「そのまえにばっさり真っ二つにされそうだが…」
「それはうれしくない。呂布から離れるが、こういう事情なので、その後の歴史
もだいぶ変わってくる。
で、話は大きく飛ぶが、その外界の『現在』、『外界の三国時代からすれば未来
』の世界で、ちと問題が発生している」
「ややこしいのう。行く先は三国時代ではないのか」
「どちらか、という話だった。で、その現在が、非常に厄介な状況に置かれてい
る。
悪魔の軍団が、外界に住む人間の魂の質のよさに目をつけて、大挙してこれを狩
ろうとしているというのだ」
「ふうむ、ややこしい。で、その現在も蜀なのか」
「いいや、ちがう。その国の名は」


※仙台、なんだか雨が降りそうです。えーい、天気のわるさに負けないぞ! というわけでつづくニッキ連載でありますが、これから以降、『現世』に連れて行かれた孔明らと『過去』のアトラ・ハシースの孔明が、交互に登場する展開となります。ちょっと複雑ですが、読みやすく仕上がるように気をつけています。どうぞ読んでやってくださいませねー(^^)/