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「店の主の主らしい小男が、それじゃあ、こちらの気が済まないからと言って、だいぶ値引きして尚書令に腕輪を売った。
尚書令は大喜びして、さっそく自慢の宴を開催した、と」
「で、めずらしくおまえを呼んだのが、尚書令のまちがいだったな。
尚書令は黄金の腕輪をさらに引き立てるために、屋敷のなかでいちばん器量のよい娘をえらんで、これに腕輪をはめさせて披露したのだ。
ところが、それをおまえがはめてみたら、これが存外に似合ってしまったため、なにやら場が気まずく」
「待て。間がだいぶ省略されている。それではわたしがしゃしゃり出て、腕輪を自分の腕に嵌めたみたいではないか。
事実どおりにいうなら、酔っ払った許長史が、娘のより肌の白いわたしの腕に似合うはず、とかわけのわからぬことを言い出して、わたしの腕に無理にはめたのだ」
「おまえが逃げれば問題なかった」
「足が痺れていたのだ。だいたい、娘より色が白いなどということがあるか。
思うに許長史は老眼が進みまくっている。そのうち、蕪よりわたしのほうが白いとか言い出すぞ」
「あれはあれで、おまえを持ち上げたつもりであったのだろうさ。
なにせ、あの宴の客のほとんどが尚書令の知己。左将軍府側は、それこそ数えるほどで、だいぶいじめられていたから、酔ったふりをして意趣返しをしたのだろう」
「わたしをダシにすることはないのに。おかげで尚書令との仲が、またも険悪だ」
「いつだって険悪だろう」
「もっと険悪になったのだ。うまくいえないが、新月の日の夜空に墨を混ぜ込んだような」
「同じだろう」
「余人にはわかりづらいかもしれないが、もともと真っ暗だったのに、さらにどす黒いものが混ざりこんだのだよ。この違和感ときたらないぞ!」
訴える孔明であるが、ふと、違和感つながりで思い出したことがあった。
いまは大人しく馬車の御者をしている盗賊の来哲、この男が忍び込んだ高官は、すべて法正の宴に呼ばれていた者たちだったのである。
なにか関係があるのかなと、ちらりと目線を向けると、敏感な男であるらしく、来哲のほうも孔明のほうを、その青い瞳で見ているところであった。
油断ならぬやつと孔明が思っていると、来哲は言った。
「盛り上がっているところ申し訳ありやせんが、平西将軍のお屋敷に到着しましたぜ」
※ゆうべはまたもや遅くなりました…ごめんなさい! 拍手くださった方、どうもありがとうございました。とても励みになります!(^^)! この連載も、今週末で方向が見えてくる予定。楽しんでいただければと思います(^^♪
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