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「どこへ行くのだ」
親しさゆえの無礼というわけで、挨拶を飛ばして趙雲は目が合うなり、孔明に問うた。
そしてさすがは目がきくことに、御者がいつもの男ではないことに、すぐ気がついたようである。顔をしかめ、たずねた。
「いつものやつはどうした」
「どれから答えればよい」
平静をよそおいつつ、孔明はちらりと御者の背中を見た。
御者のほうは、まるで緊張した様子はない。
さきほどの夢のような話がほんとうならば、自分のほうがつよいと分かっているので、恐怖もない、ということになる。
なんとも不遜なやつだと思いながらも、どこか憎めない男であるとも思う。
異国人の年齢はよくわからないものだが、肌つやのよさや双眸の表情から、おそらく自分とさほど変わらないだろうと孔明は判断した。
趙雲は、孔明のほうをじっと見て、それからなにやら考え込むように、おのれの顎をなぜながら、首をひねった。
「おまえ、さっき、錬兵場にいなかったか」
「宮城のか」
「そうだ」
「いないよ。左将軍府にずっと詰めていた。朝から一歩も外に出ていない」
だよな、といいつつも、趙雲は、まだ納得してないらしく、怪訝そうにしている。
「おかしいな。さっき、おまえに会ったのだ。具合が悪そうであったから、自邸へ送り届けてやろうとしたのだが、途中でいなくなってしまった。だから探しにきたのだが」
「わたしを」
「うん、おまえをだ」
孔明は、奇妙に思いながらも首をかしげて答えた。
「そうは言っても子龍、わたしは今日は宮城には出かけていない。あなたが会ったわたしというのは、ほんとうにわたしであったのか。だれかと間違えたのではないかな」
「おまえに似たやつが、そうそういるものか。まちがいなくおまえだった」
ふむ、と趙雲の話に首をかしげながら、ふと、孔明は気がついた。
本名・エウゲなんとか、現・来哲(仮)がいうには、孔明がさきほど千里の彼方を見ることができたのは、孔明にちかい何者かが近づいているからだと言っていた。
孔明はそれを、縁者のことを指しているのだと理解していたのだが、もしや、それではあるまいか。
そうして、思わず来哲の背中を見ると、趙雲もその視線につられて、来哲のほうを見た。
「いつもの男はどうした」
ああ、それは、とうその理由を言おうとした孔明より早く、来哲のほうが先に趙雲に答えた。
「ちょいと腹具合をおかしくしましてね、代わりに頼まれました」
男があきらかに胡人であったので、趙雲はおどろいたらしい。率直にたずねてきた。
「どこの国の者だ」
「安息国よりさらに北西の国ですよ。この時代には奄蔡(アラン)と呼ばれているんだったかな。どんな生活をしているんでしょうねぇ」
趙雲がどういうやつだ、と問いたそうに孔明を見たので、孔明は答えた。
「すこし変わり者なのだよ。気にしないでやってくれたまえ。名前は来哲という。本名がエウなんとかというのだが、呼びづらいので変えてみた」
「エウなんとかとは、なんだ」
「わたしにもわからぬ」
※昨日のうちにお話を途中までまとめました。頭のなかで出来上がっているものを、実際にカタチにすると、やっぱりズレが生じる…このズレをどんどん縮めることができたら、技術が向上した、ということなのかな、などなど考えます。早くそうなりたいもんだ。やはりここは、数をこなすことが重要? がんばろう…
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