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「聞くが、それでは、軍師将軍が趙将軍の屋敷の離れで、ぐうぐう眠りこけておったのは」
それを聞くと、董和はろこつに、その意志のつよそうな眉をしかめた。
「やはり実験と称してさぼっておられたか」
「さぼり!」
「趙将軍は、あのとおり、軍師将軍にはやたらと甘いところがあるゆえ、軍師がたまに実験施設に入り込み、仮眠をとっているのを、放置しておられる」
「左様か……」
要するに、あの奇妙なかたつむりのような構造物は、趙雲の私室ではなくて、『ぬくぬく君』の実験のためにつくられたものであり、廊下がずっとつづいていたのは、長い一直線の廊下をもつ建物だと、どうしても場所をとるために、ああいう建物になった、ということであったらしい。
そうであれば、あの殺風景にすぎる部屋の理由もわかる。
いくら私生活の読めない男だとはいえ、あのなにもなさは、異様にすぎる。
あれが趙雲の私室ではなく、べつに私室があるというのだ……
いや待て。
それはそれで妙だな。ほかに建物があっただろうか。
趙子龍は、いったい、どこで寝泊りをしているのだ。
やはりナゾな男である。
そんなことを考えている法正の横で、董和はダンボールを見つめて、ため息をついた。
「まったく、『ぬくぬく君』とて、まことに売れるかどうか怪しい商品。それをこんなに大量に発注したうえ、おんぶ紐を取り付けるのは手作業、しかもそれは左将軍府の人間が内職でこなさねばならぬ。売れなかったなら、どうするつもりなのだ」
ぶちぶちという董和であるが、法正は、ふと、地面におちた、『ぬくぬく君』を背負った休昭の影を見て、ひらめいたことがあった。
ひと目を気にして、恥ずかしそうに『ぬくぬく君』を背負う休昭のシルエットは、まさに蛹を思わせる……
もしや。
法正はたずねてみた。
「聞くが、左将軍府の人間が、これの試作品をつかってみているとのことであったな。もしや、劉曹掾もそれを使っておらぬか」
法正がたずねると、董和はおどろいて顔をあげて、答えた。
「よくご存知ですな」
やっぱり。法正は確信し、ひとり、うなずいた。
※おお、なんとか早め(平日にしては)のアップができそうです。よかったー。でもって、このお話も今週でおしまい。ご感想くださった方、ありがとうございます。次の連載のプロットも、練っておかなくちゃ(^^♪
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