● こうせいニッキ●
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2007年3月22日(木)
きつねのリハウス 趙雲邸 三

仕事がえりに、燃え落ちた屋敷あとを見に行けば、すでに屋敷はきちんと整地され、早くも土台ができあがっていた。
現場監督に聞いたところ、
『ご注文のとおり、耐火性にすぐれた最新のツーバイフォー工法でぱぱっと仕上げますんで、土台さえ出来れば、あとはすぐに組みあがりますぜ』
との言質をとった。

早く一家みずいらずでのんびり過ごしたいものだと思いつつ、法正が趙雲の屋敷に帰ってみたところ、どうやら屋敷の主は夜勤であるらしく、離れの明かりは消えている。
が、興味深いことに、離れの入り口が、ほんのすこしだけ開いているのだった。

法正は、思わず周囲をみまわした。
いまは黄昏どき。
夕餉の支度にいそがしいのか、気配はしているものの、だれも外に出ていない。法正の帰宅にも、だれも気づいていない様子だ。

法正は、さりげなく、従者を厩のほうに追い立てて、ひと目につかぬよう注意しながら、趙雲の離れの扉を、そっとくぐった。
離れは、思った以上に狭かった。
趙雲は身の丈が八尺あり、七尺の法正でも、手を伸ばせば天井に手がとどくほどであるから、もっと狭く感じているにちがいない。
しかも奇妙な構造をしており、入り口を入ると、ずっとえんえんと廊下がつづいており、突き当たると、左に向かって、また廊下がつづき、さらに突き当たると、ふたたび左に廊下がつづく。
その両脇は壁となっており、装飾はいっさいない。
もちろん、ひとがひとり、やっと通れるはばしかないため、置物のたぐいも置いていない。
そろりそろりと先に進みながら、法正は、かたつむりの殻のなかをぐるぐると回っているような感覚に陥った。
そしてわかってきたことは、どうやらこの建物には、おどろいたことに部屋がひとつしかなく、その部屋は、建物の中央にあって、扉がひとつしかなく、窓がないという構造になっているらしい。

窓がない、扉がひとつ、という秘密めいたつくりに、自身も後ろ暗いところをたっぷりと持っている法正は、ぴんと来た。
趙子龍は、秘密を持っているのである。
こうなると、俄然、気持ちが高揚してくるのが法正である。
これはなにも、人の秘密を暴き立てることが楽しいのではなくて、自分と同じく、秘密を抱えている人間がいることを知ることが、仲間ができるようでうれしいのだ。

そして、ついに部屋に行き当たり、法正は、中をそっと覗いてみた。


※またもやおかしな時間にアップ。ブログは夕方以降のアップとなります。なにやら仙台、雨か雪だそうです。そういえば冷えるなあ。あと二日でまたもお休み。みなさまお体にはお気をつけて(^^)/

2007年3月23日(金)
きつねのリハウス 趙雲邸 

『なんだ、これは』
法正の最初に抱いた印象はそれである。
最終的に行き当たった部屋は、それまでの廊下の狭さがうそのように、閉ざされながらもひろい空間であった。
天井はその部屋だけは高く、正方形の部屋には柱もない。
おそらく、周囲の狭い廊下そのものが、建物全体を支える柱のような役目も担っているのだろう。
窓がないために陽が差さないのであるが、かわりに、高級品である蝋燭が、法正がおもわず目を輝かせたほど、立派な骨董の燭台に乗せられ、ちろちろと炎を燃やしている。
その灯りが部屋全体を、意外なほど明るく照らしているのであるが、法正が呆気にとられたことには、その部屋には、中央に夜具と燭台があるほかは、なにもなかった。

棚の類いもなければ、卓もないし、衝立もない。
隠し扉の類いでもあるのだろうかと、法正は呆れながら部屋の中に入った。

奇妙な建物の構造もそうであるが、わざと装飾のない殺風景な部屋にしつらえているわけであるが、この建物をつくったのは、はたして趙子龍なのか、それとも以前の持ち主なのか。
その心中にどのようなふしぎが隠されているのかはわからないが、すくなくとも、趙子龍もまた、この空間を好んで利用しているということである。
部屋のなかは窓がないにもかかわらず、空気が籠もっていることはなかった。
やはり隠し扉があるのかと思い、さらに中に進み、気づいた。
夜具が人の形に盛り上がっている。
そこに気づいて、法正はぎょっとした。
横たわっている者は、頭からすっぽりと夜具をかぶっており、しかも灯りが蝋燭だけという空間のなかにあって、視界がぶれるため、すぐに気づかなかったのである。
趙子龍がじつは帰ってきており、ここで休んでいるのか。
どうやら、自分が部屋に入ってきたことは、まだ知られていないようだ。

気づかれぬように退散しようとすると、ふと、夜具がもぞりと動いた。
しまった。
法正は息を殺し、夜具の動きを見つめた。


※なにやらフィギュアスケートにどっぷりとはまっています。うー、みんながんばれ! わたしもがんばれ、というわけで、HPのほうの準備に取り掛からねば(^_^;) まだどれをアップするかは未定であります。日曜日アップ予定ですので、お時間あるかた遊びにいらしてくださいませね。

2007年3月24日(土)
きつねのリハウス 趙雲邸 五

もぞもぞと動く夜具のなかの者は、もはや外に出ることができないでいる法正の視線の先で、やがて、顔を出し、がばりと起き上がった。
その勢いが激しかったので、法正は、自分がここにいることに気づいた夜具の人間が、怒ったのではないかと怖じた。
どちらにしろ、非は、だまって忍び込んできた法正にある。
どうしようと、汗をだらだらとかきながら、凍りついていた法正であるが、夜具から起き上がったものは、法正のほうを見ると、ひとこと、よく聞きなれた声で言った。
「あ、きつね」
ほっとけ! 
と反射的に心の中でツッコミを入れる法正であるが、ぼけたほうは、文字通り、寝ぼけているらしく、法正のほうをじっと見ると、ふたたび、ぱたりと横になり、不明瞭ながらも、
「もうちょっと寝る。借りるぞ」
などと言って、ふたたび横になった。

そうして、寝息をたてはじめたのを見ると、法正は、一目算に離れから逃げ出した。
荒い息を吐いて、自分たちの宿泊先としてあてがわれている部屋に駆け込むと、妻と子らが、怪訝そうな顔をして出迎えた。
「どうされたのです。野犬にでも襲われたような顔をなさっておいでですよ」
と、妻は言ったが、野犬に襲われたほうが、法正としては、混乱しなかっただろうと思う。
なんだって、軍師将軍があんなところで寝ていたのだ?
「軍師将軍が来ておるのか」
と、息が落ち着いてから、妻子たちにたずねると、逆におどろかれた。
「それならば、ご挨拶申し上げねば」
「いや、おまえたちが来ていないというのなら、それでよい。なんでもないのだ」
答えつつ、法正は、おそらくは、いま離れで眠っているであろう軍師将軍こと孔明が、なんだってまた、よその家に来て、ぐうすか眠っているのか考えた。
趙雲と孔明の仲がよいということは周知の事実である。
が、孔明は、人の家に上がりこんで、かってに眠ってしまえるほどの仲であったのは知らなかった、というよりも。
『いくら仲がよいとはいえ、そこまでゆるせるものなのか?』
法正は、そこから先のことを想像しようとしたが、なにか恐ろしい結論が引き出せてしまいそうな気がして、そのままにすることにした。
君子危うきに近寄らず……まさにその心境なのである。


※もしかしたら、わたしが観ないほうが真央ちゃんは調子がいいのかもしれない…(←見事に気のせい)。もー、朝から親戚のオバちゃんのようにはらはらしております。メダルとかもういいから、楽しんで滑ってくれるといいなあ、などと考える一ファン。さー、応援に入ります。うー、緊張してきた(-_-;)

2007年3月25日(日)
きつねのリハウス 董和邸 一

妻と娘がユンさまなどと言ってのぼせているのも、法邈が仔馬に夢中になっているのも横目に、法正は、落ち着かない日々をすごしていた。
というのも、あの奇妙な離れにおいて、軍師将軍と顔をあわせたことは事実なのであるし、寝ぼけていたようではあるが、ふとした瞬間に、孔明が、あれは現実のことであったと思い出さないだろうかと、気が気ではなかったのだ。

法正のそんな心配をよそに、淡々と日々はながれ、竣工中の家も、ほとんど組みあがり、あとは内装を仕上げればよいだけになっていた。
趙雲の屋敷を出ることは、妻子たちはいやがったが(最初とはたいした変わりようであると、法正は、呆れた)、かえって迷惑をかけると嫌われてしまうぞという法正のことばのもと、しぶしぶと、つぎの宿泊先へむかった。

つぎの宿泊先は、董和の屋敷なのであった……が。
もともと古い家を、董和みずからが手をいれて、父子で暮らすこじんまりとした屋敷に建て直したのがそれである。
法正一家がやってきてみれば、門の前には大量の段ボール箱が置かれており、それをまえに、董和と、その息子の休昭が、ぼう然としているのであった。
法正は、もともと、身分のわりにはたいへん名声の高い謹直な董和が苦手であった。
董和が高潔で立派にすぎるため、目のまえに立つと、そうであれと信じてしたことではあるが、前に仕えていた君主を裏切ったおのれの狡猾さが、妙に目立つ気がしてならなかったのである。
それでも、尚書令という立場から、慇懃無礼な仮面をかぶって、法正が、どうしたのかとたずねると、董和は困りきった顔をして、答えた。
「いやはや、申し訳ござらぬ。どうも手違いが起こったようでして、内職のための荷が、いまになって大量にやってきてしまったようなのです」
「内職とは」
法正は、素直に呆れた。
というのも、董和のいまの身分は中郎将。父子二人で暮らすにはじゅうぶんな禄をもらっているはずである。それなのに、内職とは、どういうわけか。
思ったことが、顔に出たらしい。
董和は、法正に言った。
「軍師は、尚書令どのに、なにもおっしゃっておられなかったか」
「軍師将軍が? なぜに」
「はて面妖な。軍師が、尚書令さまにお会いしたというので、てっきりなにもかもご存知なのかと」


※呆れたことに、頭のなかがフィギュアでいっぱいで、ブログの更新を忘れてました…皆勤賞があ(ToT) いやしかし、ひたむきに頑張る選手を見るのはとても励まされますねー。わたしもがんばらねば。と、いうわけで、本日は二本立てに再挑戦であります。見てやってくださいませ(^^ゞ

2007年3月26日(月)
きつねのリハウス 董和邸 一

「会ったとは、どこでだ。宮城でか」
法正はどぎまぎとたずねた。
脳裏にあるのは、趙雲の屋敷の離れで、ねぼけた孔明と顔をあわせたことである。
「いや、宮城ではなく、実験施設にて顔をあわせたとか」
「実験施設とな? それはどこであろう」
「趙将軍のお屋敷にあります離れでござるよ」
「待たれよ。実験とは、いったいなんの実験なのか」
「それは、このダンボールにありますとおり」
いいつつ、董和はダンボールのガムテープをべりべり、とはがし、中に入っている布団を見せた。
たしかに、その布団は、趙雲の屋敷の離れにおいて、孔明が頭からかぶっていたものと同じものである。
「左将軍府が、外貨獲得のため、DEATH NEED LANDをはじめとする、観光事業に力を入れているのをご存知か」
法正はうなずいた。
「それは知っておる。だが、それと布団と、どのような関係があるのだ」
「観光事業と、蜀錦、このふたつだけでは心もとないので、別の目玉商品をつくろうということになって、いろいろとアイデア商品が生まれたのですが、そのうちのひとつが、この布団。『寒い夜でもぬくぬく君』」
「は?」

ぽかんとしている法正に、董和は、ダンボールから布団を取り出すと、かたわらにいた息子の休昭を手招いて、その背中に布団をかぶせた。
「寒い夜ですと、たとえば用足しをするのも億劫になりましょう。そこでこう布団をかぶって移動したことはござらぬか。
しかし、これだと両手がふさがり、用を足すために手を離せば、当然のことながら布団はずり落ち、肩が冷える」
「それはそうだ」
「そこで、この『ぬくぬく君』。ふだんは夜具としてふつうに使う。しかし、寒い夜に移動するさいは、この『ぬくぬく君』にとりつけられたおんぶ紐に両腕を通すだけで、布団を背負えて、寒くない。
しかも廊下をいざるときに、どうしても床にこすれて布団が汚れてしまう。それをかいしょうするために、床に触れる部分には抗菌仕様の特製クロスが縫いこまれております。
寝るときには、マジックテープでクロス部分を敷布とつけますので、足が汚れる心配もない」
と、ここまで説明し、董和はため息をついた。
「という軍師のアイデア商品なのですが、まこと実用に耐えうるものなのか、怪しい部分がございましてな」
「うむ?」
「左将軍府の主だった人間が、これの試作品をつかって、いろいろと実験をしておるのですよ」
「つまり?」
「たとえば、長い廊下をぬくぬく君をつかって歩いてみると、どれほど布が汚れるものなのか、あるいは肩が重くなったりしないのか、など。
うちも手狭で、軍師将軍のお屋敷も似たりよったりなので、趙将軍のお屋敷の敷地の一部をお借りして、実験をしているのでござる」

※残業ってきついなー(^_^;) しかも花粉が今日は飛びまくり。薬を飲みながらでないと、とてもじゃないですがお仕事できませんでした。うーん、一応、明日アップできるかな? やっぱり残業がつづくようなので、すこし遅くなるかもしれませんが、明日、お時間のある方は覗きにきてやってくださいませm(__)m