● こうせいニッキ●
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2007年2月23日(金)
くっきき。 16かいめ

「ふん、一応、約束は守ったというわけか。ダイムラーのやつめ、儂と諸葛亮の因縁を知っておりながら、あやつが絡んでいるとはひと言も言わずに樹液を採って行きおった。まったく最近の若い者は、これだからいかん」
ぶつぶつと、なおも釣り糸を川面に垂れながら、大亀は文句を言っている。
なるほど、愚痴っぽい性格でもあるらしい。
亀の癖に眉があって、ぽやぽやと白いのであるが、それが皺だらけの顔に特に目だって見える。
「で?」
「は?」
「は? ではない。わざわざここに来た以上は、おまえのための自転車とやらを持ってきたのであろうな。見せてみろ」
命じられるまま、仲達は『おでかけチャリンコ・りんりんくっきー号改』を大亀に見せたのであるが、大亀のほうは、ちらりと一瞥しただけで、もう自転車のほうを見ようとはしなかった。
そうして、ぼそりとつぶやいた。
「ひどい色だ」
「そうでしょうか」
「気に入っておるのか」
「はい、とても」
「悪趣味だな」
仲達は忍耐づよい性格をしていたが、このときばかりはカチンときた。
なにせ、りんりんくっきー号は、孔明がわざわざ人をあつめて作ってくれた、世界ひろしといえど、たった一台きりのたいせつな自転車なのである。
その心遣いまでもあざけられたような気がして、落ち着かない。
とはいえ、相手は祟れば一国を滅ぼすこともできる精霊である。
孫や孔明の姿を脳裏に思い浮かべ、がまん、がまん、と仲達はおのれに言いきかせる。
「それでですね、あのう、諸葛亮からお怒りの件は聞いたのでございますが」
「おまえのその垂れた耳で、人の話が聞けるのか」
耳が垂れていようと、聴覚にまったく問題はない。
またまたムカッときた仲達であるが、やはり同じように、孫や孔明や息子たちの姿を思い浮かべてがまんする。
「はい、ちゃんと。むかしに桑の樹の精さまと諸葛家とのあいだに諍いがあったのは存じておりますが、そこはひとつ、広いお心で、諸葛亮とわたしがこの自転車を利用することを許してくださいませんでしょうか」
「諍いはー」
「はい」
「あったわけだが」
と、大亀は言葉をきると、それまで水面にしずめていた釣り糸をぴんと引っ張って、釣り針を確認する。
見れば、針の先にはなんにもついていなかった。
「やっぱりとられたか。おい、うさぎ、そこに小エビがあるから、寄越せ」
「はい、ただいま」
いそいそといわれるまま小エビを用意する仲達に、大亀は、いまさらながら、おや、というふうに目をきょろりと動かして、たずねてきた。
「諸葛亮の口上はわかったが、おまえは何者だ」


※スギ花粉、来了! 来るな~! 嫌な季節がいつもより早くやってきました。勘弁してくれい…。 そして小説のアップは明日を予定しております。どうぞお越しくださいませね(^^)/

2007年2月24日(土)
くっきき。 17かいめ

「わが名は司馬仲達と申します。諸葛孔明とは同時代に生きた者でございまして、君主は曹魏の……」
仲達の説明をうるさそうにひれで止めると、大亀は釣り針に小エビをくくりつけながら言った。
「司馬仲達ならば知っておる。たしか諸葛亮の晩年に敵将としてこれと戦い、勝利をおさめた男であろう。
そうか、どこぞのアトラ・ハシースが不運にも解明のむずかしい呪詛にひっかかって、うさぎになってしまったという話を聞いたが、おまえのことであったか」
「左様でございます」
「ふーん。で」
「はい」
「諸葛亮は、アレか、来ていないわけか」
自分をぐつぐつ煮て食った男の叔父にあたるのが孔明であるから、そう何度も顔を見たいとは思わないはずであろうにと、仲達は怪訝に思ったが、そこは正直に答えた。
「精霊さまのご機嫌が悪いのを気にしておるのです。自分が顔をだすと、精霊さまはかえってお怒りになるだろうから、わたしひとりで行ったほうがよい、という話になったのでございます」
大亀は、ふたたび顔を水面に向けると、まったく気が乗らないようすで、
「ふーん」
とだけ言った。
仲達も性格は素直ではない。
だから、大亀の、言葉は乱暴だけれど、どこか寂しげな口調に、ピンとくるものがあった。
そうして、とてとてと、大亀のとなりまで近づくと、たずねる。
「精霊さま、もしや諸葛亮を嫌っておられるのではなく、その逆で、じつは楽しみにしておられるのでは」
それは図星であったらしい。
それまでむっつりしていた大亀であるが、とたんに碧の顔を赤くして、くわっと口をひらくと、怒鳴った。
「なにを言い出すか、このトンチキうさぎめが! わしがあんなもんを楽しみにするわけがなかろう! わしは静かな生活が大好きなのだ! あやつときたら、まったくどういう因縁があるというのか、なにかというとわしの静かな生活を乱すのだぞ。そんなものを楽しみにできるはずがなかろうが!」
大亀がどなると、同時に、大亀が背にしている桑の老樹も、大亀の剣幕にあわせて、風もないのにざわざわとおおきくさざめいて、仲達への抗議をしめす。
雪のように桑の葉が舞い降りてきて、仲達は、あわあわとあわてた。
とっさに頭に思い浮かぶのは、『タタリ』の三文字である。
この精霊を怒らせたら、司馬家とてタダではすまない。
「あわわわ、申し訳ございません、精霊さま。出すぎた事を申し上げました!」
「まったくだ! おまえはもうよい、さっさと塔へ帰れ! 自転車は好きに乗るがよい! 諸葛亮にもそう伝えよ!」
「はい、ありがとうございます。でもって失礼いたします!」
仲達は、大亀が、今度はおまえを煮込んでやろうと言い出さないうちにと、あわてて走って、りんりんくっきー号のところへ向かった。
ともかくこの場を離れようとハンドルを握ったとき、それまでナビゲーターとしての役割しか果たしていなかった、ちいさな液晶画面が、自動的にピピピという耳障りな音とともに。ぱあっと光を放ち始めた。
そうして、無機質な自動音声がはじまった。
『搭乗者の危機を察知いたしました。これより攻撃態勢に入ります』
「はい?」


※本日はアップの予定でありますが、まずは先行してニッキをアップ(^^♪ 小説のほうは夜になるかと思います。どうぞお越しくださいませm(__)m

2007年2月25日(日)
くっきき。 18かいめ

『総員、対ショック体勢、総員、対ショック体勢。これより攻撃態勢に入る』
「なにを言い出したのだ、この自転車は! というか、なんだ、かってに動き出した!」
混乱する仲達をよそに、自転車はというと、ピピピ、という信号音を発しながら、ゆっくりと、釣りをつづけている大亀の方向に自転車が向きを変えていく。
すると、ナビゲーター画面を映していた液晶画面が切り替わり、自動照準器が、ゆっくりと鎌首が持ち上がるかのような動作で起き上がる。
画面には、
『照準照会中……』
と文字が出ている。
そのあいだにも、自転車はがちゃん、ごとんと、およそ自転車らしからぬ騒音を立てて、いったいどこからパーツが出てきたのだろうと首をひねるほど、おおきく展開しはじめた。
「なんだ、これは! 自転車がトランスフォームしておる! というか、こうなるともう自転車ではないぞ、これ!」
おどろきうろたえ、なんとか自転車の動きを止めようと、あちこちを動かそうとする仲達であるが、焦り、うろたえればうろたえるほどに、自転車の動きは活発になっていくようである。
「ええい、止まれー! って、うぉい、なんだか自転車が、いつのまにか戦闘機みたいになっているのは、なぜですかー!」
あわてる仲達をよそに、自転車は自動的に標的を探しており、一方で、変形したはがねのあいだからは、超小型ミサイルが不気味ににぶい輝きを放っている。
「ちょっとー! 戦争になるって! だれだ、自転車にミサイルなんぞつけたやつは! 
おおい、もしもし、亀よ、亀さんよー!」
叫ぶ仲達の声に、釣りに集中していた大亀はうるさそうに振り向いた。
「ええい、やかましい、うさぎだからといって、セオリーどおりにわしを呼ぶ……な?」
大亀は振り向いて、いつのまにやらそこに、自転車とも戦車とも砲台ともつかぬ、奇妙な、しかしともかく危険な金属の塊が、おのれに向かってミサイルを発射しようとしているのに気がついた。
「なにを考えておるのだ! 貴様はこのわしにミサイルを発射する気か!」
「発射する気はさらさらないのですがあ、この自転車が勝手に!」
そんな問答をしているあいだにも、液晶画面のなかでは、射程距離範囲内にはいった大亀をとらえ、照準器が、さらにその精度を高めるべく、マーカーを調整しているところであった。

『ロックオン、完了いたしました。ミサイル発射まで、あと10秒』

「ぎゃああ! 逃げてくだされー!」


※短いようでなんだか長い、2月がそろそろ終わろうとしていますね。あと3日。HPの展開としては、どこかまだもたつきがあった気がします(-_-;)うーん、なかなか「これだ!」といういい方法がないな。どうしたら連載を並行してバランスよく進められるだろう…。来月は年度末というわけでみなさまお忙しくなるかと思いますが、合い間にぜひ遊びにいらしてくださいませm(__)m

2007年2月26日(月)
くっきき。 19かいめ

『カウントダウン、開始します』
自動音声のアナウンスのあと、突如として変形した自転車に据えつけられていたスピーカーから、好戦的な音楽が流れ出した。
「はわわ、これは『踊○ 大捜査線』のRhythm and Police! あせる! これは焦る! とんでもなく攻撃モードではないか! どこを押しても止まらぬー! 精霊さまー。すみません逃げてくださいー!」
「やかましい! 貴様の降伏勧告は受けぬ!」
「降伏勧告ではなくて! もはやわたしでは止められないのです。どうかお逃げくだされー。でもって恨むなら、やっぱり諸葛亮を恨む方向でおねがいします!」
「またあいつかー! というより、操縦しているのはおまえだろうが!」
「勝手に動いてしまうのですよ! だれか止めてぇ!」
そうこうしているあいだにも、カウントダウンは進んでいく。
『7……6……5……4……』
大亀は、ゆっくりとおのれに照準をあわせて発射されようとするロケット弾に向かって、完全と立つと、ヒレを宙に躍らせるようにして、叫んだ。
「ロケット弾ごときに負けぬわ! 来るなら来い! 霊力で防御壁を編んでやる!」
『3……2……射程距離範囲内にATフィールドを確認しました。中和します……』
「ATフィールドってな……だれだ、またもやジャパニメーションにハマったやつは! っていうか、ほんとうに精霊さま、お逃げくださいってば!」


ミサイルにもいろいろ種類があるが、一般に耳慣れているもののひとつに、弾道ミサイルがある。
その弾道ミサイルのなかでも有名なものは、現在、日本の各所に配置されている米国のパトリオットミサイルかと思われる。
これは迎撃用ミサイルであって、某北の国からテポがどーんと発射された場合(てぽどんも弾道ミサイル)、これを打ち落とすのに活躍する(予定)。
ひとたび打ち上げられると、レーダー誘導によって、いったん、宇宙に行って、発射された敵方のミサイルを迎え撃つ。
そんなんで間に合うのかと心配になるところだが、短距離弾道ミサイルであれば、発射してから着弾するまでに(宇宙に行くわりには)たった五分しかかからない。
ただし、逆に、このクラスのミサイルが敵から発射されてしまうと、これを迎撃することは不可能となる。
(だからミサイル開発やめてね、そんなの作って、あんたそれをどこに打つつもりなのさ、と申し入れているわけです)。
ちなみに気になるお値段は、たった一本で約3000万ドル、日本円にして約31億円ってマジで? 
打ったらもうおしまいの消耗品にこのお値段。軍需産業って儲かるはずだ。
さらに命中精度が低いという最悪ぶり。
これだけ武器が高いため、国としての防衛費が毎年五兆円かかってしまうよ、というわけです。
いい悪いは別にして、たしかになっとく。

「うおぃ、たしかにためになる話だが、今、この状況ではどうでもいいー!」

『標的に向かって発射しました』

「ぎゃーーー!」


※本日はいつもより遅いアップとなりました…朝、洗濯をしていたら時間がなくなったのであります(>_<) 明日は早めにアップできるといいな~。しかも怪しい雑学つき。一応調べはしたのですが、『はさみののいうことなので、怪しい』としてくださいませ。さてはて、次回アップでありますが、水曜か木曜を予定しております。はっきり決まり次第、あらためてご連絡いたします(^^ゞ

2007年2月27日(火)
くっきき。 20かいめ

その日、下宿先に不吉なきのこ雲が浮かび上がり、それを見たひとびとは、こぞってインドの聖典ヴァガッド・ギーターの一節
「我は死なり、多くの世界の破壊者なり」
を思い出した………
ということはなく、とりあえず仲達も宙に吹き飛ばされる程度ですんだ。

宙に放り投げられながら、ちらちらと銀色の紙吹雪がおなじように舞っているのを、仲達は見る。
「チャフか?
(チャフ=レーダーを混乱させるために空中にばら撒かれるアルミを塗ったプラスティック片)」
なんでこんな妙に凝ったものをつくるかな、とあきれつつ、仲達が銀色のかけらを手にとると、それは金属片ではなく、ふつうの銀紙であった。
しかもなにやら字が書いてある。イタリア語である。
「イタリア語といったらダ・ヴィンチか。なになに、『ふとんがふっとんだ。このギャグでみんなトモダチ』。笑えるかあ! 只人が相手であれば死んでおるぞ! ダ・ヴィンチのばか、おぼえておれ!」
しかし呆れているばあいではない。放り上げられたら、あとは落ちるのみ。
仲達はこのまま激突するのを察し、宙でなんとか姿勢をかえると、地面にむかって叫んだ。
「でえい! 宣帝が命ず! 土よ、我を受け止めよ! トランポリンになあれ!」
とたん、土はやわらかく変化し、落ちてきた仲達を、ぼすりとやわらかく受け止めた。
地属性の仲達だからこそできる術であったりする。
猫のトイレの砂のようにやわからくなった地面から起き上がり、周囲を見回すと、甲羅に亀裂のはいった桑の木の精が、それこそいまにも火の玉になって、塔にいる孔明のもとへとんでいきそうな具合になっている。
見れば、桑の木のうろの部分が、いまのミサイル爆撃によってえぐれてしまったのだ。
桑の木の内部は大亀の家になっていたらしく、木の破片ばかりではなく、中におさまっていた家具や家電製品などもばらばらになっている。
そんななかで気まずいことに、ミサイルを発射した呪いの自転車、おでかけチャリンコ・りんりんくっきー号は、まったくの無傷で、つんとすましているかのように、平然とそこにあった。
大亀は怒りでぶるぶると震えている。
仲達の脳裏には、ふたたび『タタリ』の三文字が浮かび上がった。
『なんとか精霊の気持ちを鎮めねばならぬ。うちも危ないが、いまの時点でもっとも危ういのは諸葛亮だ。友として、それは止めねば』
しかしどうしたらよいだろうと、懸命に考える仲達のうえに、爆風で飛び上がった、大亀の蔵書の一部がひらひらと舞い降りてきた。

『毎日たった五分読むだけで、だれからも好かれる精霊になる本』
『スマイル・アゲイン~素直になれないあなたのためのヒーリング』
『こんなときどうしよう! HOW TO けんかしたトモダチと仲直りする方法』

※のんびり連載、そろそろ終盤であります。書いていても、なにやら長閑なうさぎ。うさぎはいいですね(^.^) 早いもので明日で2月も終わりでありますね…三月もがんばろう。というわけで、そのまえにアップ分の作成をがんばります(^^ゞ