|
「なんとな?」
「なんとな、ではない。もう一度いう。断る」
「自分が劉氏ではないことが引っかかっておるのか」
「そうではない。血統だけで天下は取れない。もともと劉氏の漢とて、秦をほろぼして為った国ではないか」
「おまえはもともと、臥龍などとあだ名されていたのだろう」
「あだ名はあだ名にすぎぬ。龍であると評価されたとしても、それがそのまま素晴らしい未来につながっているわけではない。多少、実力があると評価されたとしても、それを礎にして戦える者でなければ、結局は、評価されたという事実しか残らない」
「これまた珍しく謙虚なことだな。せっかくわたしの力を貸してやろうというのに」
「むかし、もし天になんでも願いをかなえてやると言われたら、天下のことではなにも願わないと約束したことがある。まさかほんとうに願いをかなえてやると言われるときがくるとは思っていなかったが、天下のことは天下にたくさんいる人間が、それぞれ必死に考えている。かれらに任せておけばよかろう」
「もったいないことだ。おまえにとっても、天下にとってもな。わたしはこれで天に還り、人の願いを聞くこともなくなるだろう。それでもよいのか」
「かまわぬ。天下はいらない」
「ならば、なにを望む」
「願いを言うまえに、ひとつ教えてほしいことがあるのだが」
「なんだ」
「天水で別れた趙子龍は、いまどうしているだろう。かれはちゃんと故郷に戻れたのだろうか」
「さて。故郷には戻っておらぬよ」
「なにかあったのか。病に倒れたとか」
「いいや、道の途中で、行くか進むか、ずっと迷っている。足がまるで鉛になったように動けないでいるのだが、かといって戻ることもためらわれるのだろう。頭をかかえて困り果てているのが見える」
「なぜ迷っているのだ。願いはかなえられただろうに。すべてを忘れることにして、一度は故郷へ向かったはずだろう」
「願いは叶えられてはおらぬ」
「すべてを忘れて、苦しみから解放されたいと願ったのではないのか」
「いいや。あの男が願ったのは、おまえが安らかであるように、だった。おまえが安らかになるためには、おのれの存在が邪魔であろうと思ったのだろう。だからこそ消えてしまおうと考えたようだが」
「消える?」
「そう。けれど、結局は思い切れずに、ただ記憶が消えただけになってしまったのだ」
※アップでありますが、明日になりそうです。最近はちょこちょことアップができていますねー(^.^)このペースでがんばろう。さてはて、アンケート、ありがとうございますー。強いな、孔明…でもってキツネ!とくさ様、いつも本当にありがとうございますm(__)m次回の椒聊は、まるまるキツネづくし。最初から最後までキツネであります(^^ゞぜひご覧くださいませね。
|