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「おはよう。疲れているようだから、先に起きて、付近のものたちに話を聞いてきたよ。狼がよく出るのは、酒泉に向かう手前の街道からすこしそれた谷だそうだ。それが聞いておどろけ」
「坊主たちが言った塔のある場所と、狼が出る場所とが一致する」
「そう。さすが勘がいいな。そのとおりだよ。狼と石は不思議なことであるが、まちがいなく関連がある。行く先が一致したとなると、気も強くなるというものだ。それと、面白い話も聞いてきたのだが、それは朝食を食べながらにしよう。ほら、食糧もすこし分けてもらった」
「手際がよいな。ところで、今日は曇りだよな」
「? おかしなことを。よく晴れているよ」
「そうか。晴れか」
「まだ具合がわるいのか。顔色もよくないな。場所はもう決まったし、武威の太守への薬も、きっと神威将軍たちがちゃんと届けているだろう。狼を使っている人間がいるかもしれないから、急がないといけないけれど、あなたの具合がわるいのであれば、ここから先は、わたしひとりで行く」
「だから、そんなことが出来るかというのだ。もし相手が一人じゃなくて複数だったらどうする。そのうえ狼。目も当てられぬ状況になるだろう」
「そう決まったわけでもあるまい。と、言い争いをするのは建設的ではないな。もうひとつの話なのだが、その谷というのが、入り組んだところにある谷で、昔はそこに集落があったそうなのだが、水の便がわるいし狼も出るというので、いまではだれも住んでいないし、どころか近づきもしないというのだな」
「ふむ」
「で、聞いたのだよ。どうして水の便もわるい奥まった土地に人が住んでいたのかとね。で、人々が言うには、住んでいたというよりも、仮の宿りにしていたらしい。
はるか昔には、その崖から玉が出るというので、多くの人夫たちが仕事をしていたのだが、戦乱がきっかけで一時は絶えた。おそらく、これはわたしが夢で見た者たちであろう。月氏たちだ。
で、そのあとにこの土地に入ってきた羌族が、玉を得るために崖を掘っていたら、出てきたのは玉ではなくて、骨だった」
「動物の?」
「動物や人だったそうだ。そこで羌族は、その骨を竜骨として漢族の商人に売ることにしたのだそうだ」
「待て。動物の骨ならばともかく人の骨だと?」
「おもしろい話があるよ。人間も動物にはちがいないであろうし、粉々に砕いてしまえばわからなかろうと、動物の骨にまぜて売っても、ふしぎとばれてしまうのだそうだ。
しかしそれでもせっかくだからと、人の骨を煎じて飲んだ者がいてね、効用はどうかと効いたら、なんだかあいまいな返事だったな」
「恐ろしい話だな」
「それはともかく、狼が出るようになったのは、骨を掘り出してからなのだそうだ。崖を見ればわかると思うが、よくよく見ると崖というのは層があって、その層ごとに特長がちがう。
玉が出る層と骨が出る層がちがうことから、骨の出る層ばかりを掘っていたそうなのだが、あるときふと思い立ち、まったくなにも出てこなくなっていた玉の出る層を掘ってみたことがあったそうなんだ。そうしたら、大きな骨があらわれた」
「それは」
「竜の骨だ。これはこれで金になるから、みな喜んで骨を掘ったのであるが、しかし時を同じくして狼が頻繁にあらわれるようになって、人夫を襲うようになったので、結局は骨を諦めざるを得なくなった。
だれかが狼を神からの使者だと言ったことから、よけいにみな怖じて、谷に近づかなくなったらしい。で、その谷にある竜の骨はそのまま放置されているのだが、面白いことを言っている者がいた。その骨は、一度掘り出された痕が残っていたと。どうやら、一度掘り出したものを、わざわざ埋め戻した者がいたのだ」
「なんのためだろう」
「わからないよ。ただね、あらわれた狼を神の使者だとみなに告げたのは、ひとりの老人であったのだが、しかしだれもその老人が何者であるかを知らなかったらしい」
「老人」
「うん、その老人は、赤毛だったそうだ」
※塔、途中から出てきました『竜骨』のエピソードは、歴史好きの方ならピンと来たかもしれませんが、北京原人の骨の発見をめぐるお話から思いつきました。
関係ないですが、それこそ幼稚園か学校にあがったばかりの頃、戦中のどさくさで消えた北京原人の骨のミステリーを探るというドキュメント番組をやっていて(といっても、いまでいうUFO番組に近い感じだったのじゃないかしらん)、情報提供者を名乗る女性とTVスタッフが待ち合わせするのに、「しかし、彼女は現れることはなかった…」とナレーションが入って、結局調べたけどわかりませんでした、というオチだったのを鮮明におぼえています(こういうあんまり生活の役に立たない記憶力には自信アリ)。
噂ですが、この話もあんまり触っちゃいけないものらしい。帝銀事件もそんな噂が流れましたよね。アメリカが絡んでいるからとかいう理由…おっと、本当にマズイ話題だったら怖いのでこのあたりにしよう。しかし触っちゃいけないというのも本当だろうか…。はさみののいうことなんで、気にしないでくださいませ。
ちなみにはさみのの考えは『日本軍が来る前にと、中国人がご先祖を守ろうと隠した。戦中で国民意識を独自に燃え上がらせていた人物がいて、考古学的な価値よりも優先して、異国人からご先祖を守ろう、大切に祀ってあげようという意識がはたらいたならありうるのではないか。いまごろどこかのフツーの墓に埋葬されているかもしれん。最近の墓をわざわざ暴くものはないし…』。根拠0ですが(^_^;)
とと、昨日のアップ分にも拍手をいただけました。ありがとうございます! 身体も回復してきたし、がんばって続きを用意いたしますね(^^♪
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