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「おやおや、ひどいありさまだな、色男」
「あんたは無事か、よかった」
「おい、神威将軍、やりすぎだぞ。こんなに腫れてしまって、八つ当たりではないか。いい男が台無しだ。抵抗しなかったのか。痛むだろう。動けるか? 冷してから軟膏薬を塗ろう」
「あんたが人質になっていたから、手を出しかねていた。無事らしいな。石は?」
「石もわたしも無事だよ。これが反動なのかな。目を開けられるか」
「だいじょうぶだ。すこし頭痛と眩暈がする」
「いかん、瘤になっているではないか。早く冷そう、おい、そこの、ぼーっとしている何人か、水を汲んでこい。きれいで冷えた水、それから清潔な布も用意してほしい」
「言うとおりにしてやれ。こいつに用はなくなった。
そう慌てることもあるまい。ここで採れる竜骨を飲めば、痛みや腫れもすぐに引くだろう」
「竜骨は内臓によいとは聞いているが、外傷にも効果があったかな」
「ここの竜骨は、まさにその名の通りの代物で、通常市場に出回っている『竜骨』とはモノが違う。たいがいの病に効き目をあらわす、万能薬だぞ」
「ますます現物を見てみたくなったが、いまはそうしてはおられぬ。さっきの小屋を借りるぞ。
立てるか。骨は折られていないようだな。わたしの肩につかまれ」
「なんにもない部屋だが、さして汚れているというふうでもない。すまないな、いっしょに行動するのだった」
「どうやってあいつを説得した」
「物の順序を語っただけさ。あの男は羌族による天下統一という大望を抱いていたようであるが、いかに時機を掴んでいないか、どれだけ向こう見ずな計画かを説明したのだよ。しょげていたので、ついでにいかにすれば、自分たちの力を強くできるかも教えておいた」
「あんたは誰の味方だ。どうして未来に不安の種を蒔く」
「誰の味方というよりも、そうだな、あえて言うなら、平和の味方だ。たとえ蛮族と蔑まされる民族から出た者であろうと、天下を手中にするにふさわしい器ならば、それもよいのではないかと思う。
徳がある者が皇帝になるのが理想というじゃないか。血統にこだわりすぎるからこそ、姻戚だの宦官だのがつけ入る隙を与えてしまう。それを回避するなら、堯舜の時代の手法を復活させるのも悪くあるまい」
「あまりそれを他所で口にせぬほうがよいぞ。頭の固い連中が聞いたら、あんたが間諜の類いか裏切り者かと思うだろう」
「そうだろうね。あなたにだから言ったのだよ。天才はつねにその時代には理解されないものなのだ。嗚呼、悲しい」
「あんまり悲しがって見えないのだが」
「瞼が腫れているからだ。ほら、竜骨だ。毒見をしてみよう。うむ、毒の類いは入っていないようだな。唇も切れているから沁みるだろうけれど、がんばって飲んでくれ」
「まずいな」
「薬だからな。どうだ?」
「すぐに効果が出るというものでもないだろう。すまん、眠たくなってきた。すこし休んでいいだろうか」
「そうだね、寝たほうがいい。わたしはすぐそばにいるから、なにかあったら呼んでくれ」
※ひっそりとずんだ、アップしました。HP開設以降、こんなにアップするかためらった回は初めてかもしれない。えー? もったいぶるほどの内容じゃなかったよ? それならよかったです。反響があるかないか、両極端に分かれるところかな、とも思います。ご感想いただけるとうれしいです。
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