● こうせいニッキ●
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2007年1月13日(土)
実験連載 塔 121

「わたしの欠点というのは、自分で自分の容姿が好きではないから、公の場に出るのではないかぎり、自分の容姿が人に対してどんなふうに映るかを、あえて考えないところだな。しかも旅をしているということで油断した。失敗した」
「だったら、つぎに生れ変われることがあれば、ごくごく平凡な容姿で生まれてこられるように祈るのだな」
「羌族にも転生思想があるのか、勉強になる。ありがとう、自称・二代目神威将軍
どの」
「その強がりも、これきりで聞けなくなるというのはすこし寂しいものだ。ちなみに教えてやるが、羌族とおまえたちはすべてひとくくりにして考えたがるが、部族によって生活習慣や信仰はちがう。おまえたちが石をつかって逃げた村の部族ではひとつの神しか信仰しなかったが、俺の故郷では多くの神を崇めた」
「そうなのか。それほど違うというと、なにか歴史的に深刻な背景を想像してしまう。もともとまったく別の部族同士が、戦などでむりやり同一化されたということだろうか」
「そんなところだろう。俺もそこまで詳しくは知らん。祖先神アパペゴの語る伝説を聞けば、俺たちの祖先が、じつに多くの敵と戦ったことがわかる。敵のすべてが地上から滅んだわけではあるまい。みな、すこしづつわれらの中に組みいられて行ったのだ」
「そうだろうな。イ族もたしかそんなことを言っていた。この広い大地には、かつてさまざまな民族があったが、つよい力をもつ部族が、ほかの部族を吸収して大きくなっていったのだとな。わたしの祖先とて、いつの時期にか漢族に吸収された、部族のひとつであったようだ。というより、神代よりその血統を純粋なままに守っている部族、あるいは家などというものがあるのか、疑問だ」
「ならば、その疑問に俺が答えてやろう。俺の家は、太古よりその血を汚すことなく守り続けてきた。祖先はムチェジュによって創られた、選ばれたる者なのだ」
「それはびっくりだ」
「おまえたち漢族が羌とひとくくりにして呼ぶわれらとて、文字を持たないというだけで、多くの歴史を持っているということだ。文字を尊ぶおまえたちは、俺たちがよほど野蛮に見えるのだろう。母丘太守とやらは、俺たちのためと言いながら、むりやり、おまえたちの文化を押しつけてくる。このまま黙って従っておれば、俺たちは誇りをうしなう。だから戦うのだ」
「戦うにしても、卑怯ではないか。客を装って太守の城に入り込んだ、そこまではまあ、戦略としてはよかろう。しかし、襲うにあたり、その身の動きをにぶらせるために、あらかじめ毒を盛っておいたなど、いささか用意周到にすぎる」
「汚いというか。どちらが汚いのだ! 平和をもたらすためという名目で、俺たちを手なづけようとするからだ!」
「しかし、太守はおまえたちの宗教そのものを禁止したり、羌族の衣服を禁止したりするような真似はしていないのだろう。文字というものは、文化交流の最たるものだ。文字がわからねば、意思疎通もむずかしい。
もしわたしがおまえの軍師であったなら、こうして語ることばだけではなく、読み書きもおぼえるように、おまえに進言するのだがな。彼を知り、己を知れば、百戦危うからず、だぞ」
「御託はいい。石を出せ」
「あんまり人のいうことに耳を貸さないと、あとで痛い目にあうぞ。せっかくいいことを言ったのに。
いや、うちの主公が聞きすぎる人なのかな。なんだか懐かしくなってきた」


※更新でありますが、まだ準備がいまひとつ、というところで明日を予定しております(^^ゞ 内容は「椒聊」と「覚え書」です。なるべく早めにアップする予定です。どうぞ遊びにいらしてくださいませねー(^^)/

2007年1月14日(日)
実験連載 塔 122

「霊魂は千里を駆けることができるという。ならば、おまえの首を刎ねて、おまえの主人にすぐに会えるようにしてやろう」
「痛いのはお断り」
「ぶざまな抵抗はよせ。まわりを見ろ、みな俺の部下だ。外にいるおまえの連れも、俺の部下が捕らえているはずだ」
「どうかな。逆にのされているのではないか」
「俺たちに策略が使えないなどと思うなよ」
「なにをした」
「知りたければ、まずは石がまだ手元にあるかどうかを見せろ」
「見せるだけなら、かまわぬよ、ただし触れるな。触れるような素振りを見せたら、こちらは石を使うまでだ」
「なんだと?」
「石の力が伝説などではなく、たしかに有用であることは、目のまえで見ただろう。おまえのやり口を見るに、石を渡せば、ろくでもないことに使うに決まっている。となれば、わたしはこれを、もともとこの石を最初に掘り出した一族の末裔から預かった身として、渡すわけにはいかん」
「末裔がまだ生きているというのか」
「そうさ。あいにくと、羌族ではない。すでに滅んだ月氏の王族の末裔であったよ。おまえはこれを羌族のものだと思っていたようだが、さて、どうするね」
「羌族のものではないというのなら、漢族のものでもなかろう」
「めげないやつだな。末裔は、この石をもとの場所に戻すことを望んでいる。わたしに石を使わせるな。もしもおまえが石を奪うというのであれば、わたしはこう願おう。『石を奪うものすべての息の根を止めよ』とな」
「…………………」
「わたしの手には、ありとあらゆる望みをかなえる石が五つ。そしておまえには、とりあえず命令は聞くが、望みをかなえてくれるかはその手腕次第な部下たちが、見たところ2百名かな。どちらが有利だか冷静に考えろ」
「俺に手を引けというのか」
「左様。生か死か。わたしはおまえが太守に抵抗することを止めようとは思わんよ。その手法は気に食わないが、かといって、些事にひとつひとつに首を突っ込んでいたら、たとえ百年生きたとて、時間が足りぬもの」
「些事と申すか!」
「気に食わないかね。しかしこの国のすべてを見わたしたなら気づくはずだ。いまようやく少しずつ平和が戻ってきているなかで、そなたたちの抵抗は、時代の流れに逆行しているのだ。
いまでこそ民は、動乱の記憶が生々しいゆえに、漢族を憎み、おまえを支持しているが、しかし時が経てば気づくはずだ。まわりの土地が平穏を取り戻しつつあるのに、自分たちの土地ばかりがいつまでも平和を享受できないのは、いったいなぜなのかと」
「俺たちに誇りを捨てよというのか!」
「俺たち、ではなく、『俺』だ。まことに母丘太守が苛烈な人物であったなら、民に文字を教えることすらしないであろう。文字を教えるということは、知恵を与えるに等しいことだからだ。しかしおまえはそれを汲み取らず、漢族であるからと憎しみを向ける一方だ。それでは、憎しみが憎しみを呼び、太守は圧政をするようになるだろう。事実、おまえたちの抵抗があるからこそ、一部の漢族は、おまえたちを迫害するよい理由を得ているのだ。
神威将軍、おまえに尋ねたいのだが、おまえは漢族をほろぼして何をしたいのだ」


※うう、冷えますねー((+_+))雪が降ってもおかしくないかもしれません。HP関連でやることがいっぱいあるなあ、と思いつつ、まずはアップいたします。ご感想などいただけるとうれしいです(^^♪

2007年1月15日(月)
実験連載 塔 123

「なにをしたいか、だと?」
「そうだ。おまえの漢族に対する憎しみはよくわかった。だが、その憎い漢族を滅ぼす、あるいは征服したとして、おまえはそのあと、どうするのだ」
「王国を作るのだ」
「どこに。都はどうする。体制はどのように整える。他の民族との外交政策はどうする。遊牧民たるおまえたちが、農耕を主とするわれら漢族をどう支配するのか、その方針もちゃんと練れているのだろうな。
たとえ、石をつかって天下を手にいれたとしても、そのあとのことがおざなりならば、その天下はさほどもつまい。おのれの民族のみを愛し、漢族を差別するおまえのその態度が、民の心をつかめるとも思えない。おまえを討つべく、各地で暴動が多発するであろう」
「ならば、石にこう願う。『天下の人々が、すべて俺に従うように』と」
「では、人心がおさまったとして、さあ、おまえの手に入れた広大な大地は、何十年とおよぶ戦乱のために荒れ放題に荒れているぞ。これをどう元に戻すつもりだ」
「有能な官吏を側近にそろえて決めさせる」
「有能な官吏とやらが揃わなかったらどうだ。それに、政治に明るいものとなれば、当然、そのほとんどが漢族であろうよ」
「石に願う。『絶対に裏切らない有能な官吏を俺に与えよ』と」
「さて、三つの石をおまえはすでに使ってしまった。残りは二つだ。よく考えろ。おまえには、天下と、有能な官吏と、従順な民、この三つが手に入った。有能な官吏たちが政策を決めて、おまえに忠誠をささげる民が、それに従う。すばらしい国になるであろうな。おまえは何もせずに、ただそれを眺めているだけでよい。そう、見ているだけだ。実際は漢族によって運営されている漢族の国の、お飾りの皇帝としてだ。贅沢はし放題、どんな願いもお望みのままだ。楽しかろうな」
「ならば、石を使うことは、よいことではないか。俺ばかりではない、天下を安んじることすらできるのだから」
「おまえが死んだら?」
「む?」
「石はおまえの願いを聞いて、おまえのいうとおりのものを与えた。だが、おまえが死んだら、願いは費える。当然のことながら、民は目が覚めたようになるであろうし、有能な官吏であればあるほど、大きな権力を実際に手に入れているのは自分だと思えば、お飾りの皇帝なんぞないがしろにして、おのれの好きなように振る舞うであろう。
天下はふたたび乱れるぞ。おまえの子孫がたとえ帝位を継いだとしても、もはや再興はむずかしかろう。そもそも、おまえの力で築いたものは、なにひとつない。ないものをどう受け継げというのだ。すべて石の力なのだからな」
「ならば、こう願えばよかろう。『俺を不死にせよ』と」
「四つ目を使ったな。しかし、生きてどうする。おまえ自身にはなんら力がないのに、ただ石の力を長引かせるために、永遠に生きるわけか。血族も、みな先に死んでしまい、おまえはそのたびに苦しむことになるだろうな」
「それでは、『俺の血族すべてを不死にせよ』という」
「五つ目だ。もうないぞ。ではおまえも多少は寂しくなくなったわけだが、今度はおまえたちの血族のあいだで、争いが起こる可能性もある。なにせ皇帝とその血族なのであるから、思うままの生活ができるわけだ。その利害が衝突して戦いになるときも、長い時間のなかではあるだろうな。
いまとて、おまえも長を名乗るのであれば、仲間うちのいざこざが日常茶飯事なのはわかっているだろう。その争いがひどくなったら、おまえはどうする」
「どうもこうも、争いを止める。どちらか非のあるほうを処罰する」
「どうやって。慢心して、おまえの言うことをまるで聞かなくなっているかもしれない」
「仕方がない、そのときは命を奪う」
「奪えるはずがなかろう。不死であるのに」
「…………………………………」
「石は願いに対しての反動をかならず求める。しかし、もし反動がなかったとしても、いまのおまえでは同じことだ」


※昨日のアップで拍手をいただけましたー。ありがたいことです!(^^)! お返事は今週中にあるもう一回のアップ時にさせていただきますm(__)m いやはや、いろいろと今年はHP中心に計画をたてております。うまく行くといいなー。もちろん共倒れにならないように、がんばりますので、お楽しみにー(^^♪

2007年1月16日(火)
実験連載 塔 124

「貴様」
「剣を抜き、わたしを斬ったところで、なにも変わるまい。もし剣を抜いた時点で、わたしは石を使うぞ」
「それより先に斬る」
「どちらが早いか、賭けだな。どちらにしろわたしの言うとおりになるであろうがな。天下を変えることができるほどの英傑というのは、かならずといっていいほど、なにをしたらよいのか、わかっている者たちばかりだ。
わかっていないおまえは、たとえ石の力を利用したとしても、やることなすことが行き当たりばったりなので、行き詰まってしまうのさ」
「最初の願いを変えればよかろう。『永遠につづく羌族の王国をつくれ』とすればいいのだ」
「それはいい願いであるが、王はだれだ」
「俺が」
「で、国の体制はどうする」
「有能な官吏を…………」
「どうどうめぐりだ。おまえがまことに同族を安寧に導きたいと願うのであれば、石をどう使うではない。おまえ自身がどうするか、なのだ。このまま憎しみばかりにとらわれて、目についた漢族を、ただ漢だという理由で、片っ端から始末していくか? 
魏は大きいぞ。おまえの動きが目に余るようであれば、大軍を差し向けてくるであろう。馬孟起が興した軍がそうであったように、おまえの軍も敗走する」
「決め付けるな!」
「戦略のないものに勝利はない。魏は老獪だぞ。いいことを教えてやろう。魏は馬孟起を敗走させることに成功し、国の半分はほぼ手中におさめた。のこりは蜀と呉であるが、これはそれぞれに攻めるのがむずかしく、兵を動かすためにはそれなりの国力を蓄えねばならぬ。
それゆえ、魏はここ数年、おおがかりな戦を起こしていない。じっと力を貯めているのだ。
そこへ、おまえが軍を起こす。わたしが曹操であれば、今度こそ叛乱が起こらぬように、大軍を差し向けるぞ。一度ならず二度までもということで、今度はまったく容赦のない戦となるだろう。多くの民が犠牲となる。おまえを恨みに思うものも増えるだろう。たとえばなんとかおまえは助かったとしても、この土地につぎにやってくるのは、占領と圧政だ」
「勝つかもしれぬ。われらの勇猛さは、漢族の比ではない」
「力だけでは勝てぬということは、すでに証明されているだろう。馬孟起でさえ敗れたのだ。あの男の羌族のなかでの人望の高さは、わたしよりおまえのほうがわかっているはずだ」
「俺が、神威将軍より劣るというのか」
「それも、わかっているはずだ」
「……………………………」


※ようやくラストのエピソードに入りましたが、しかし、122で石を最初に持った一族を『匈奴』としておりました。まちがいで『月氏』です。自分で書いたものなのになー(-_-;) さてはて、今週のアップですが、明日か明後日、ひっそりとアップ予定。なんでひっそりとかは、内容が内容なだけにひっそり。こればかりはお楽しみに、とはいえない…先に謝っておこう。ごめんなさい。でもって、昨日も拍手をいただきましたー。ありがとうございます(^^♪ 作品の質向上とさらなる実力アップで、納得の仕上がりの作品を届けられたらいいなーと思います。それではまた明日もよろしくであります(^^ゞ

2007年1月17日(水)
実験連載 塔 125

「気の毒だから、ひとつだけ付け加えさせてもらう。いま最良なのは、母丘太守がせっかく示している宥和策に乗っておくことだ。
そなたたちの部族のなかで、文字を知る者を増やし、われら漢族が脅威に思うほどに勇猛で学識の高い子弟を育てればよい。時間がかかるが、やがてはその者たちのなかから、おまえの望むとおりの天下を得ることが出来る者があらわれるかもしれない。
おまえの生きているうちにそれを見ることはかなわぬであろうが」
「なぜだ」
「漢族のなかに、わたしがいるからだ」
「呆れるほどに不遜なやつだな」
「事実を述べただけなのだが、まあよい。おまえがもし、歴史に名を刻みたいと願っているのなら、あいにくと時期が悪かったな。
だが、絶望なんぞすることはないのだ。武ばかりが歴史を築くのではない。いつか、おまえの血を引く者のなかから天下人が出たときに、振り返って、おのれの栄光を築いてくれた者の名のなかに、おまえの名を見つけることだろう。
おのれの身を屈めて、あえて礎に徹したその奥ゆかしさゆえに、感激されるし、感謝されるであろうな。そういう栄誉も美しいとは思わぬか」
「……………………………」
「そういうわけで、石はあきらめろ。わたしと子龍を解放してくれ」
「そうはいかん」
「なんだ、これほど言葉をつくしたのに、まだ通じぬとは」
「そうではない。おまえの言葉はたしかに届いた。石のことはあきらめよう」
「素直でよろしい。まだ問題が」
「ある。おまえは石を封印するために西の塔へ向かうと言ったが、本当にそうするかどうか、見極めるまでは安心できぬ。
たとえば、おまえでなくても不埒なほかの民族がそれを手に入れて、俺たちを滅ぼせと願わない可能性もないではないか」
「さて、これは憶測なので申し訳ないが、以前に、そういう願いをかけた者もいたのではないかな」
「なんだと?」
「その対象が漢だったか羌だったかはわからぬが、しかし、みじかい期間に全滅した民族なんてものをわれわれは知っているかね。
おそらく、石の力にも限度があるのではないかな。多くの人命にかかわる願いはかなえることができないのかもしれない。
最初にこれを使った王は、漢に攻め入ったわけだが、最初に『漢を滅ぼせ』と願ったはずだ。そのほうがてっとりばやい。
しかし、実際には漢は滅びずに、そのあとにふつうに戦になっているということは、願いは叶えられなかったと見てよかろう。とはいえ、憶測だがね」
「その石は、いったい、なんなのだ?」
「わからん。崖から掘り出されたものだというのはわかっているのだが」
「そこの崖から掘り出された竜の骨のようなものだろうか」
「ほんとうに竜の骨があるのか? と、いかん、いらざる好奇心に動かされている場合ではない。子龍はどこだ」


※昨日拍手をくださった方、夜に拍手をくださった方、ありがとうございました。HPのアップですが、まーだ迷っておりまして、2回分をアップするか、それとも3回分にするか? どうにも煮詰まってしまっていますので、ごめんなさい、明日アップとさせていただきますm(__)m でもって、ブログのほうもお休みさせていただきます。とにもかくにもまた明日ー(^^)/