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「ゴホン、はげしく話が逸れたが、というわけで、だ。解毒の薬の在り処を教えてやるゆえ、わたしのことは黙っていてくれぬか、お願い!」
「お願いされた……どうする」
「黙っていてくれたら、わがこれんくしょんの中から、諸葛孔明の少年時代の手習いを、涙をのんで進呈しようぞ! 持っていけ、どろぼー!」
「いらん! というか、なんだってそんなものが流出しているのだ」
「聞くところによれば、劉子初が荊州に滞在していたおり、諸葛孔明の姉を言葉たくみに誘導し、少年時代の手習い集を収集したようとしたらしい。
しかし、そこはさすが血縁、劉子初の様相に、なにやらただならぬものを感じた諸葛孔明の姉は、手習い集を劉子初に渡すことをやめた。それゆえ、収集家のなかでは、その存在は知られているけれど、門外不出の幻の逸品となっていたのだ」
「ただの子どもの落書きじみた文字の練習帳であろう」
「そこはそれ、素人ゆえの思い違い。諸葛孔明の少年時代から、いまの姿を想像し、ひそひそするのも、収集家の醍醐味!」
「ひそひそするな!」
「ふん、この高尚な趣味がわからぬとは、あわれなる俗人どもよ」
「ちっともわからぬ。わたしは世俗にどっぷりつかった一般人で結構だ」
「ま、というわけで手習い集であるが、荊州をわが主公が征服した際に、とある豪族の家に遊びにいったある男が、その家の子どもが、使い古しの紙で文字を練習しようとしているのに行き会った。
見ればおどろけ。それは諸葛孔明の姉が「こんなボロ紙でよかったら」と、ただで譲った、幻の逸品『諸葛孔明の手習い集』であったのだ! 紙は高級品ゆえ、ちょっとでも隙間があれば、文字の手習いに使おう、というわけだな。
そうして、その男は、もう、なんでもしますと頭を下げて、その手習い集を手中におさめた。それをわたしが一部、これまた、なんでもしますと頭をさげて、手に入れたわけだな」
「ただの手習いに……ばか?」
「ばかは禁止。ばかは言ってはならぬ。というわけで、苦労して手に入れた収集物を手放してもよい」
「いらんわ。どうする、子龍」
「おかしなやつではあるが、悪い条件ではない」
「手習い集を手に入れる条件かが。利に聡いやつよ、野武士!」
「野武士と呼ばわるからにはそのこれくしょんとやら、当然、一枚だけではないだろうな?」
「なんの交渉をしておるのだ! まったく、おい、シバチュー」
「名前まで知られているとは」
「いいから聞け。そなたの言葉以上に、なにか思惑があるふうでもないし。解毒の薬がどのようなものかはわからぬが、それがうまく太守の命を救ったら、僧侶たちも救われ、そなたの名が傷つくこともないというわけだ」
「信用するのか。悪気はなさそうだが、なんとも不安定な男だ。居丈高に威張ってみたり、急に低姿勢になってみたり。あとになって、やっぱり俺たちを信用できないといって、兵を差し向けてくるようなことはないだろうか」
「それほど、大胆に動けるならば、一人であらわれたりしないだろう。物陰に人の隠れている気配はあるか」
「ないな」
「不安定なのも、普段の生活が息苦しいものゆえであろうよ。というわけでシバチュー」
「なんだ」
「そなたの話に乗るまえに、確かめたいことがある。解毒の薬がある場所は、ここからどれくらいかかるのだ」
「そうさな。二日もかからぬであろう。貴殿らよそ者は知らぬであろうが、この近在の人間ならば、だれでも知っている岩壁がそれだ」
※本日はうさぎも無事に最終回を迎えることができましたm(__)m やっと本格的に動かせつつあるなあという感じです。今日は七草粥も食べましたし、ほんとうに無病息災の一年でありますように(^^♪みなさまもお体にはお気をつけくださいませ。やっぱり健康が資本です♪
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