● こうせいニッキ●
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2007年1月3日(水)
実験連載 塔 111

「危険な賭けに出たものだな。太守のあの顔色は尋常ではなかった。あれは死相だ。死に掛かっているものを救い出せる薬など、いったいこの世のどこにある。いっそ、石を使えばよかろう。そうすれば、あるいは」
「あるいは、あの太守は救われるであろうが、しかし、石はわたしの手から離れ、そしてまた不幸を呼ぶであろう。それでは意味がないのだ」
「あんたは律儀にすぎる………どうした、顔色がわるい」
「すこし思い出したのだよ。ずっとわたしたちを、無言のまま睨みつけるように見送っていたのは、あの男の息子だろうね。怒りをどこにぶつけたらよいのかわからないという顔をしていた。泣くこともできず、怒りをぶつけることもできない。すでに父を害したものは死んでいるのだし、薬を取りにいくこともできない。つらいだろうな」
「太守の息子と同じ経験をしたことがあるのか」
「あまり思い出したくない」
「そうか、すまない」
「あなたが謝ることではないよ。いけないな、感傷的になってしまって。さあて、それでは、塔を目指そう。ここに、ニキが描いてくれた地図がある。ほら、これが、かれらの先祖の隠し村のあった場所だ」
「遠いではないか。片道で十日はかかろう………待て」
「つまり、そういうことだ」
「なにを平然と! いかん、引き返そう」
「引き返してどうする!」
「俺は、自分がせっかく助けた命が、また危機にさらされているというのに、見棄てることはできん性分でな。なにが十日だ。石がなんだという! あんたもあんただ。片道だけの日数を言われて、そこでどうして反対しない!」
「ニキにも、太守の命がもうもたないということは、わかっていたのだ。いいか、死にかけた太守、戻さねばならぬ呪われた石、この二つの問題を同時に解決するのは不可能だ。ニキは、太守と石のどちらかを取らねばならぬというのなら、石を塔に戻すことのほうを選んだのだ」
「なぜだ。十日のうちに戻らねば、自分の命もなくなるし、そうだ、あんたの名前だって、明らかになるわけだろう?」
「それも、もとより覚悟のうえだ」
「待て。あんたの持っている石の、残り三つを俺に貸せ」
「だめだ。まだ願いをかけていない石を使うつもりだろう。ゆるさぬぞ。太守の死は、なんでも願いをかなえるなどという不自然なものによる悲劇ではない。定めなのだ。天の授けた定めならば、これは仕方ないとニキは判断したのだ。無情かもしれぬが、どちらかを選ばなければならないとしたら、あなたはどうする」
「どうもこうも、まだ手段が残されているではないか。論議は無用、石を出せ!」

「お取り込み中、失礼いたします」

「だめだ。どうしても石をというのなら、わたしを斬って手に入れよ!」
「馬鹿なことをいうな。そんなことができるか!

「おーい、お取り込み中、失礼いたしますー」

「ならば、黙ってわれらに従え!」
「それはできぬ!」

「うおい、聞けというに! お取り込み中、失礼いたしますと丁寧に言ってて、無視とはよい度胸ぞ、ええ?」
「む、なんだ、貴様は」
「おや、貴殿はたしか、首がぐるぐる回るへんなやつ」


※終わる、終わると言いながら終わらない、というのが当HPのパターン。うさぎもずんだも、この塔も、終わるのかなあ。塔はもうすこし遊んでみたいところです。え? いい加減にしろ? まあまあ、そういわず、もうちょっとだけお付き合いくださいませ(^.^)

2007年1月4日(木)
実験連載 塔 112

「首がぐるぐる回る? 人間か?」
「初対面の者に対してなんと無礼な物言いか。これではその卑しい育ちもおのずと明らかになるというもの。ああ、いやだいやだ、世の中、なぜにかような卑しきやからばかりがはびこるのであろうか。かつてこの世にあったという、堯舜の時代に生まれることができたなら、どんなによかったことであろう」
「む、孔明、この妙に芝居がかった物言いの、なんとも無礼な顔の濃い男、ぼこぼこにしてよいだろうか」
「ふ。そこな武骨者よ。その力に恃み、わたしとやりあうつもりか。身の程しらずな田舎者めが。あえて匿名希望だが、世に聞こえたる名を持つこのわたしを敵にまわしたこと、骨の髄まで後悔するがよい。いくぞ! S拳奥義!」
「えす拳ってなんだ」
「いにしゃるで失礼します、なのだ! そのまえに主題歌! ♪YOUはショーオック! 愛で空が落ちてくーるぅー♪」
「なんだかよくわからぬが、売られた喧嘩は買う。孔明、下がっていろ」
「下がるけれどね、なんというか、すぐに決着がつきそうな」

がごん。

「ほらね」
「何をしに出てきたのだ、こやつは。笑いをとるためか? ううむ、このまま伸びたままにしておくと、あとで追いかけてきそうな気配がある。どうだろう、いっそこのまま埋めてしまうというのは」
「おそろしい提案を真顔でしないように。なぜに追いかけてきたのかはわからぬが、この男は、気の毒な男なのだよ。奥方が恐ろしい女だそうで、家庭内暴力にくわえて、家事を押し付けられるわ、育児は押し付けられるわ、もう大変。そうした家庭での息苦しさを避けるために、視察と称して、たまにこうして、辺境に旅行に来ているのだそうだ」
「さきほどの物言いだと、よほどおのれの出自に自信があるのだな。たしかに、垢抜けた男だ。だが、俺のような武辺者にはなじめぬ」
「まあまあ。そういわずに、埋めるのはやめて、ちょっと話を聞いてみようではないかね。起きられよ、匿名希望殿。なぜにわれらを追ってきた」
「すみませーん、もうしませーん」
「謝罪を受け入れようぞ。理由を」
「心から反省していまーす。だから、玄関を開けてくださーい。さむいですー」
「なにやら悪夢を見ているようだな」
「ああっ、本当にもう、反省しているって言っているのにー、お願いです、子供だけは、子供だけは取らないでぇ! 育てたのはわたしなんです! それはもう、あなただって、よーくわかっているじゃありませんかー! 
師やー! 昭やー! どうして、どうして父上と一緒に暮らすって言ってくれないのだ! 炊事洗濯なんでもしますし、仕事もばりばりこなして高給取りになりますからぁ! ひとりぼっちはいやだよー!」
「切ない悪夢だな………」


※昨日はなぜだかカウンターを一人で25回もまわした方がおりました。カウンターを動かして、音符の位置が変わるのを確かめたかったのかな? そういえば、カウンター画像、そろそろ変えてもいい頃だなあ。
という話はさておき、明日からお仕事。でもまたお休みという奇妙なスケジュール。みなさま、体調には気をつけてくださいましね。でもって、拍手をしてくださった方、どうもありがとうございます(^^♪

2007年1月5日(金)
実験連載 塔 113

「はっ!」
「あ、目を覚ました。だいぶひどくうなされていたようだが、だいじょうぶか、匿名希望どの」
「ええい、触るな。貴殿らは蜀の人間であろう!」
「いまさら隠し立てもおかしいな。いかにも、われらは蜀からやってきた」
「そこだ!」
「どこ? 蜀の場所ならば、ここからはるか南の」
「蜀の位置なんぞ、地図に聞くわ! そうではない。貴殿らが蜀、というところが問題だ。そなたら、このまま蜀に逃げ戻るつもりではあるまいな?」
「いいや、約定は果たすつもりだ」
「ふん、人間の誠意なんぞ、あてにならぬわ。たとえ、最初は太守のために薬を探しても、それが見つからなければあきらめて、自分たちに監視がついていないことを幸い、さっさと蜀に帰るつもりに決まっておる」
「決め付けたものでもなかろう。われらは、人質になっている僧侶のためにも、西へ向かわねばならぬ」
「西か」
「なにを笑う」
「いいや。よろしい、ずばり用件に入ろう。わたしが貴殿らを追いかけてきたのは、宴における、わが不様な姿を、口外しないと約束してほしかったからだ」
「おかしなことを。われらは貴殿の名を知らぬ。われらがもし、『家庭不和から逃れて、視察にかこつけて涼州に遊びにきた男が、緊張がほぐれたためなのかなぜだか女装しながら、首をぐるぐる回しつつ、唄って踊っていた』と言いふらしてもだ、名前がわからねば、広まりようもない」
「ふん、それは凡人の場合であろう。たしかに、わたしはいま貴殿らに名乗っておらぬが、わたしはいまこそ一臥の市隠に等しき身なれど、いずれはこの名を知らぬものは、天下に一人としておらぬというほどの者になるであろう。
そういえば、劉玄徳の軍師将軍は、臥龍などというたいそうな号を持つことで知られているようであるが、あちらはただの看板。わたしこそ、真の臥龍なり」
「ふ、ふ~ん?」
「信じておらぬな。まあ、貴殿ら、見たところ見栄えはともかくとして、いかにも山国育ちの成り上がり者であるような。貴殿らでは、真の富貴に満ち満ちた、このわたしの器は見抜けまい」
「それはすまぬな。で、貴殿が真の臥龍だというのなら、なんだという」
「つまりだ。天下は広しといえど、わたしのように首がぐるぐる回るなどという異相の持ち主はそうそうおらぬ。
貴殿らが『女装して唄って踊る首がぐるぐる回る男』のことを言いふらし、それが世に広まったなら、いつかは世間は気づくであろう。『もしや、巷で噂の女装大好きろくろっ首は、しば……ゴフン、S家の八達のひとりではないかと」
「なに? S家の八達?」
「いやいや! もとい、S家のH達!」
「変な略し方をする。あ、なんであろう、妙にムカムカしてきた。子龍、埋めてしまおう」
「急にどうした」


※「悪魔が来たりて笛を吹く」を見ながらのアップです。しかし見事なタイトルだなあ、これ。お話も面白いですけれど、タイトルの効果がばつぐん。やっぱり名作ってタイトルのインパクトも大きいですよね…うーむ、そのセンスにあやかりたいなあ。さてはて明日は雪かもしれません。はさみのの周囲でも風邪が流行っている様子。みなさまもお体には気をつけてくださいませ(^^)/

2007年1月6日(土)
実験連載 塔 114

「埋めるの、待った。しまいまで話を聞くがいい」
「貴殿の話は横道にそれまくる。まっすぐ結論を言え」
「ふん、ならば言おう。つまりだ、貴殿らに妙な噂を立てられると、わたしの将来 に傷が付く。それでは、わたしがあんまり可哀相! わたしは自分が大好きなのだ !」
「そのようだな」
「というわけで、取引と行こうではないか。どうやら、貴殿らは太守の解毒の薬を 採りに行くと安請け合いをしたようであるが、しかし、先ほどの言い争いの様子か らして、向かう先は解毒の薬のある場所ではあるまい。というよりも、解毒の薬が どこにあるのかすら、知らぬのではないか」
「聞こえていたか」
「あれほど大声でぎゃあぎゃあ騒いでいたら、耳を塞いでいても聞こえるわい。ど うやら貴殿らは、あの僧侶と西に行く約束をしているが、それは、なにかを届ける というもので、解毒の薬云々は、まったく関係がない。
僧侶も、自分の命を質にして、その約束をなんとしても果たさせようとしている。
約束を果たすためには、十日で城に帰ってくるというのは不可能。ちがうか」
「あっておる」
「だが、解毒の薬が、案外近くにある、と聞いたらどうだ」
「なんだと?」
「わたしは解毒の薬の在り処を知っている。貴殿らに、それを教えてやってもよい 。ただし、そのかわり、貴殿らの見たわたしの姿のことは、だれにも口外せぬと約 束するのだ」
「もとより、われらは人の噂話など好まぬよ。第一、ひっそりと暗所にて女装をし て遊んでいたというのならともかく、あのような派手な場において、堂々と騒いで いたのだから、我らに口止めをする意味がないのではないか」
「そこがそれ、田舎者というのだ。わたしの同行者も、太守や城の者も、わたしに 関する噂なんぞ、わが家の権勢をおそれて、なにもできぬわ。いざとなれば公子に 頼んでもみ消しを」
「公子?」
「もとい、子牛!」
「牛に頭を下げるとは面妖なやつよ。首がぐるぐる回ることといい、やはり人間で はないのではないかな、どう思う、孔明」
「ほう、貴殿の名は孔明と申すか。劉玄徳の軍師将軍と同じ字だな」
「え、いや、まあ、そうだな」
「しかし、軍師将軍がわざわざ敵地に自ら足を運ぶような真似はすまい。あの男は 深謀遠慮の士である。迂闊な真似はせぬであろう。聞けば諸葛孔明は、わたしほど ではないにしても、双眸はまさに宝玉のごとく煌き、顔色はつややかにして気品に 満ち溢れ、唇は夕陽のごとく赤く、まさに龍の号にふさわしい容色の持ち主。くわ えて立ち居振る舞いたるや慎み深く、言動にも思いやりあふれ、不正を嫌い、公平 を尊び、大手柄ばかり追うような浅ましい真似はせず、小なりといえどもおろそか にせず、普段は勤勉で大人しいけれども、ひとたび有事の際には、だれよりも早く 戦場の状況を把握し、諸将を鼓舞し、一介の兵卒にいたるまで思いやるために、だ れもがこの者のために戦わんと意気を奮い立たせるという。まさに千年に一度の器 と形容するにふさわしい男で、わたしが聞いたところによれば、劉玄徳がわが主公 に追われて新野から逃げ出したときにも、いずれは東呉もこの戦火の脅威にさらさ れると読みこして、電光石火の速さで呉への使者へと赴き、あれやこれやと知力を つくして呉と劉玄徳の同盟に成功したとか。それにより、残念ながらというべきで あるが、主公の天下一統の野望は、はかなくも費えたのである。まさに絶体絶命の 危機から、みごとに主君を生還させたその手腕たるや見事といわざるを得まい。そ のほかにも蜀を攻めるというときに…………ぺらぺらぺらぺら、ぺぺーらぺらぺら ぺらぺーら(一時間つづく)」
「……………………………」
「……………………………」
「というわけで、貴殿も、おなじ字ならば、すこしは見習うがよいぞ」
「……………………………」
「……………………………」


※雪は降らねど、雨でした。しかも寒い(>_<) 休みの日は晴れてくれたほうが、やっぱりうれしいですね。さてはて、1/5の23時に拍手をくださった方→紳助さんのは見なかったです。悪魔が来たりてピーロロロ(タイトル誤りあり)を見ておりました。孔明が3位かあ。演義版ならたしかに。好きな人物がTVで紹介されると、なんだか恥ずかしいワタクシ。うーん、天才……三国志なら曹操が一番に浮かびます。日本なら、えーと、えーと、豊田佐吉?(誕生日が一緒なので贔屓)。つぎは英雄編の様子。やっぱそれはナポさんだと、サイトとは関係ない人物を挙げるはさみの。照れゆえです…

2007年1月7日(日)
実験連載 塔 115

「いま聞いた、完全無欠の天才はだれだ」
「少なくとも、わたしではないな」
「貴殿のわけがなかろう。ふーう、よい汗をかいたぞ。わたしほどの才がある男ではないが、しかし諸葛孔明のことを語りだしたらとまらぬのう。わたしは魏における『諸葛孔明を観察して、ひそひそ話し合う会』の支部長をしているのだ」
「支部長! 本部は?」
「うん? 『諸葛孔明を観察して、ひそひそ話し合う会』の入会希望者か?」
「なぜ、ひそひそ……堂々と語れ」
「堂々と語ったら、ただの評議になってしまおう。ひそひそ、というところに、なんといおうか、微妙なわれらの心が籠められているのだよ。ちなみにひそひそする内容に、ちょっとでも批評めいた言葉や悪口を混ぜてはいかん。本部長のさだめた細かい罰則があってだな、違反したら、諸葛孔明が「困るなあ」という顔になる、なにか謀を仕掛けねばならぬのだ。
これは矛盾しているようであるが、そも、この『諸葛孔明を観察して、ひそひそ話し合う会』の前進は『諸葛孔明が困っているところを観察して、ひそひそ話し合う会』であったがためのことなのである」
「嫌な予感がする。本部長というのはだれだ」
「聞いておどろけ。軍師将軍とともに成都で曹掾の地位についておられる劉子初(劉巴)どのである」
「やっぱり……」
「む、知り合いか? そうか、貴殿らは蜀の人間ゆえ、われらより軍師将軍や劉曹掾になじみがあろう。うらやましいのう」
「あこがれの眼差しで見ないでくれぬか」
「ちなみに、いま入会すると、先着5名様に、劉曹掾が自ら収集した『諸葛孔明書き損じこれくしょん』のなかから、お好きなものを贈呈する。早い者勝ち。
ちなみに会費は無料。月に一度、各支部より『諸葛孔明月報』が届く。その月の諸葛孔明の活動予定や、先月の活動の結果、現在の人間関係、好きなもの、嫌いなもの、うれしかったこと、かなしかったこと、いつになっても忘れないあんなこと、こんなことが詳細にわたり紹介された充実の内容なのだ」
「ほう」
「あ、なんだろう、その目のかがやき! 子龍、入ろうとしているのか? そうなのか?」
「仲間って、いいよ?」
「勧誘するな! おのれ、劉子初……なーんかやっていると思ったら、そんな大々的な全国組織を作っていたのか。おそるべし!」
「ただ観察されて、ひそひそされるだけだろう。害はあるまい」
「その『ひそひそ』が嫌なのだ! ちょっと待て。ほかに会員は?」
「個人情報なのでお教えできません」
「……………」


※現在もまだ製作中ではありますが、『うさぎが観察日記』、最終回ということでどーんとアップできそうですm(__)m またうさぎかあ、というお声があるかもしれませんが、ほかの作品も随時制作中です。うさぎアップがひと段落したら、今度はずんだだったりしますが、合い間になるべくアップしたいところです。本当ですよー。はたして、ほんとうにうさぎは終わるのか? 明日、どうぞご確認くださいませ(^^ゞ