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「危険な賭けに出たものだな。太守のあの顔色は尋常ではなかった。あれは死相だ。死に掛かっているものを救い出せる薬など、いったいこの世のどこにある。いっそ、石を使えばよかろう。そうすれば、あるいは」
「あるいは、あの太守は救われるであろうが、しかし、石はわたしの手から離れ、そしてまた不幸を呼ぶであろう。それでは意味がないのだ」
「あんたは律儀にすぎる………どうした、顔色がわるい」
「すこし思い出したのだよ。ずっとわたしたちを、無言のまま睨みつけるように見送っていたのは、あの男の息子だろうね。怒りをどこにぶつけたらよいのかわからないという顔をしていた。泣くこともできず、怒りをぶつけることもできない。すでに父を害したものは死んでいるのだし、薬を取りにいくこともできない。つらいだろうな」
「太守の息子と同じ経験をしたことがあるのか」
「あまり思い出したくない」
「そうか、すまない」
「あなたが謝ることではないよ。いけないな、感傷的になってしまって。さあて、それでは、塔を目指そう。ここに、ニキが描いてくれた地図がある。ほら、これが、かれらの先祖の隠し村のあった場所だ」
「遠いではないか。片道で十日はかかろう………待て」
「つまり、そういうことだ」
「なにを平然と! いかん、引き返そう」
「引き返してどうする!」
「俺は、自分がせっかく助けた命が、また危機にさらされているというのに、見棄てることはできん性分でな。なにが十日だ。石がなんだという! あんたもあんただ。片道だけの日数を言われて、そこでどうして反対しない!」
「ニキにも、太守の命がもうもたないということは、わかっていたのだ。いいか、死にかけた太守、戻さねばならぬ呪われた石、この二つの問題を同時に解決するのは不可能だ。ニキは、太守と石のどちらかを取らねばならぬというのなら、石を塔に戻すことのほうを選んだのだ」
「なぜだ。十日のうちに戻らねば、自分の命もなくなるし、そうだ、あんたの名前だって、明らかになるわけだろう?」
「それも、もとより覚悟のうえだ」
「待て。あんたの持っている石の、残り三つを俺に貸せ」
「だめだ。まだ願いをかけていない石を使うつもりだろう。ゆるさぬぞ。太守の死は、なんでも願いをかなえるなどという不自然なものによる悲劇ではない。定めなのだ。天の授けた定めならば、これは仕方ないとニキは判断したのだ。無情かもしれぬが、どちらかを選ばなければならないとしたら、あなたはどうする」
「どうもこうも、まだ手段が残されているではないか。論議は無用、石を出せ!」
「お取り込み中、失礼いたします」
「だめだ。どうしても石をというのなら、わたしを斬って手に入れよ!」
「馬鹿なことをいうな。そんなことができるか!
「おーい、お取り込み中、失礼いたしますー」
「ならば、黙ってわれらに従え!」
「それはできぬ!」
「うおい、聞けというに! お取り込み中、失礼いたしますと丁寧に言ってて、無視とはよい度胸ぞ、ええ?」
「む、なんだ、貴様は」
「おや、貴殿はたしか、首がぐるぐる回るへんなやつ」
※終わる、終わると言いながら終わらない、というのが当HPのパターン。うさぎもずんだも、この塔も、終わるのかなあ。塔はもうすこし遊んでみたいところです。え? いい加減にしろ? まあまあ、そういわず、もうちょっとだけお付き合いくださいませ(^.^)
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