● こうせいニッキ●
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2006年12月10日(日)
実験連載 塔 91

「昂じた、とは、つまり」
「想像のとおりだ」
「つまり、俺は、いま、あんたに向けているような心を、やはり持っていて、それで、苦しんで、忘れるために、石を使ったというのだな」
「そうだと思う。あなたは石に願いをかけたとき、口に出さなかったから、わからないのだけれど……大丈夫か、子龍、顔色がわるい」
「わるくもなる。なんと情けない」
「情けなくなどないよ。ともかくいろいろあって、立場が危うくなったときもあったのだから、自分を責めてはいけない。わたしがあなただったら、同じことをしたかもしれないのだ」
「あんたが俺だったら、ということは、つまり、あんたは俺と一緒というわけではないのだな」
「それは」
「答えてくれ。最初の質問だ。俺はあんたのなんだったのだ?」
「親友であり、兄弟のようなものであった、志を同じくするもの。おなじ主君に仕える者だ」
「それだけ? ほんとうにそれだけか」
「ことばにするのは、とてもむずかしいのだよ。それ以上ではあったけれど、でも、心のなかだけのことだった」
「あんたは、ということだろう。なるほど、納得がいった。おかしいとは思ったのだ。すべてを忘れたいなどと、たとえふざけたにしても、ふつうはそこまで考えないだろう。
過去に、よほどの失敗をしたか、恥を受けたことがあり、それを忘れるためにそんなことを願ったのではないかと考えていたのだが、そうではなかったのだな」
「すまない。子龍、ほんとうにひどい顔色だぞ。気休めにしかならぬかもしれんが、気分が多少まぎれる煎じ薬がある。飲んでみるか」
「気遣いは無用だ。かえってつらい。しかしぶざまなものだな。せっかく忘れたはずなのに、しかし結局、おなじところへ心が戻っているのだから。もしも本当に苦しみから逃れたいのなら……いや、これは愚痴だな。さらにぶざまなところをみせたくない。
なるほど、あんたが俺を故郷に帰したがったのも、やっと理由がわかった。あんたは、俺がまた元に戻ることを、ほぼ確信していたわけだな」
「確信していたわけではないよ。あなたがどれだけ苦しんでいたか、知っていたから、元に戻ってしまうまえに、ちがう道を見つけられるなら、それが一番だろうと思ったのだ。そして、もし道があるとしたら、それは故郷からやり直すべきではないかと」
「つまり、俺はいまもって、あんたに迷惑しかかけない人間なわけだ。それはそうだろうな。俺のほうこそ謝らねばなるまい」
「謝ったりしないでくれないか。悲しくなるじゃないか」
「そうか、そうだな。ところで」
「ところでと言いつつ、わたしの手を取るのは何故だろう。こういうところは、やはり、以前の子龍にはなかったな。人間、過去の鬱積が心からなくなると、こうも屈託なくなるものなのだろうか。
でもって、なんだって人の顔を、そうのぞきこむのだろうか」
「そうとわかれば、むしろ迷いも晴れたというものだ。俺は以前は、だいぶ鬱屈していたようだが、それはあまり健康的な心のありようではない」
「うん、かなり不健康だとも。なんだってそう、手をにぎにぎと握るのかな。でもって、やたらと目を見つめるのをやめないか」
「俺はまちがっていた」
「どこをどのように? おかしいな、子龍、なにか誤解があるように感じるのだが」
「いや、誤解はない。あんたの話を聞いて、俺の心はむしろ晴れた。これからは、前向きになろうと思う。そうだろう」
「賛同を求められても、はいとは言えぬぞ。だいたい、前向きとはいえ、どちらの方面に関して前を向いているのだ。
って、ちょっと。おい、ほんとうに、洒落にならぬぞ、やめよう、な?」
「なぜ」
「なぜって、決まっているだろう。自然の摂理に反することだからだ。理路整然と動き、けっして誤まらない。それが趙子龍だろう」
「路線変更をすることに決めた」
「真顔でなにを言っているのやら。勝手に決めるな。そうだ、いまから飲みに行こう。まだそれほど夜も更けておらぬし」
「そう言って、俺の目をよそに向けさせようとするのも卑怯ではないか。俺があんたの代わりに女を買ったとしても、その女が気の毒だとは思わぬか」
「理論で返された……そうだな。浅墓な提案であった。許せ」
「そういうわけで」
「どういうわけだ! 見た目は同じなのに、中身がまるで別人だぞ! 早急にもとに戻ることを要望する! そうだ、石を……って、あれ? ちょっと。おや? 
うわあ、本気で止めよう! ものすさまじい勢いで鳥肌が立った。じんましんも出た気がする! 
冷静になって考えろ。でもって、よいか、おのれがわたしに、なにをなさんとしているのか、客観的に想像してみるがいい。とんでもなくおぞましい像があたまに浮かばぬか」
「そうおぞましくないように思うが」
「………変だ。感覚が狂っておるぞ。というより、かなり厳しい状況だ。絶対絶命だ。いっそ大声をあげるか? しかしそうなれば、長年築いた友情もこれで終わりだ。とはいえ、このまま友情を越えたどこかにいく予定は、わたしにはない!」

「オ邪魔」

「おお、救い主!」
「ぬかった、扉を閉めていなかったか……!」
「よく来てくれた! いま、仏門に下ってもよいなと本気で思ったぞ!」

「半端ナ信心ハ、ムシロ毒ヨ。兄チャンノ、イビキガウルサクテ、眠レナイノヨ。弟ハ鈍感ダカラ、グウグウ寝テイルケド、ワタシハ繊細ナノデ我慢デキナイ。チョット部屋ヲ借リルネ。ア、ワタシノコトハ気ニセズ、続キヲドウゾ」
「どうぞ、ってな……」


※坊主憎けりゃ袈裟までニクイ。そんな声が、なにも言わないあのひとから聞こえてきそうな今日のおはなし。記憶がなくなってまるで別人ですが、これもかれの一面なのであります……たぶんね(えー?)。報われる日が来るのか? それはわたしにも分からない…もうしばし見守ってやってくださいませm(__)m

2006年12月11日(月)
実験連載 塔 92

「遠慮シナクテイイヨ。ワタシハ、理解ノアルオ坊サン。ぎゃらりーハ気ニセズ、ハイ、再開」
「そういわれて再開できるものか。気が逸れた。すこし頭を冷してくる」
「ナンダ、ツマンナイ」
「出歯亀かい。子龍、ちゃんと眠るのだぞ」
「…………」

「行ってしまった。怒ったかな。しかし、あれもまちがいなく、子龍の一面なのだろうな。いささか落胆してしまう。どうあれ、もっと理性的な男だと思っていたのに。
それにしても、あれはかなり慣れているな。人の口にのぼる以上に、若い頃はもっと遊んでいたにちがいない。
いま気づいた。帯なんぞ、ほとんど解けかけているではないか、なんという手の速さだ。ああ、恐ろしい。
なんであれ、部屋に来てくれて助かった、礼を言う。ええと……」
「ニキ。ワタシノ名ハ、ニキ」
「ありがとう、ニキ」
「気ニスルコトナイ。ワレワレノ世界デモ、コウシタ問題ハ、ママアルノヨ」
「そうなのか!」
「マアネ。女ノ子ニ手をフレチャダメナラ、男ナライイカト、男ニ走ルぱたーん。
デモ、アンタタチノハ、モウスコシチガウノカナ。大秦国デハ、男同士ノ絆トイウノハ、ムシロ美化サレテイル。
チョット昔ノハナシニナルケレド、すぱるたトイウ国ガアッタ。イマハ大秦国ノ一部にナッテイルケレド。ソコデハ軍ガ、軍人同士デソウイウ絆ヲ結ブコトヲ推奨シタ。
ナゼカトイウト、同ジ戦場ニ恋人ガイルコトデ、イイトコロヲ見セヨウト頑張ルカラ。オカゲデ、すぱるたハ、トッテモ強イ国ダッタ。コレ本当。
ホカニモ、男同士ノ絆ヲ称揚シタ芸術作品ナンカモ、大秦国ニハ、イッパイアルヨ。アンタタチ、チョットソッチニ近イカモ」
「本当か。恐るべし、大秦国。やっぱり行くのはやめておく」
「ヤメルノ、賢明。アンタキット、モテマクル」
「女みたいだからか? 子龍はそうではないと以前に言っていたけれど、いまはどうもわからぬな。落ち込んでしまうよ。好きでこんな姿に生まれてきたわけではないのに」
「見タ目ハ、タシカニ女カシランッテカンジダケド、アンタ、中身ハ、ゼンゼン女ッポクナイ。女ミタイナ男ダカラモテルンジャナクテ、ヤッパリ男ダカラコソ、モテルワケ」
「なにやら複雑であるが、なぐさめてくれているのだな、ありがとう」
「マア、イイッテコトヨ。ゴンタクン、チョット気ノ毒ダネ。アリャ手近ナトコロデ手ヲ打トウッテイウンジャナサソウダケレド、デモ、力ヅクハ、ヨロシクナイ」
「なんだ、鼾がうるさいから避難してきたというのは口実で、やはり助けにきてくれたのだな」
「一応、人助ケハ、僧侶ノ仕事ダシ」
「あらためて礼を言わねばな。わたしにとって、趙子龍という男は、だれより失いたくない人物なのだ。もっと言ってしまえば、おそらく誰よりもわたしが、かれを案じているだろうけれど、かといって、かれが望むとおりにしてしまうと、逆にかれを失う日がくるような気がして、恐ろしいのだ。そう言って、わかるだろうか」
「フーン。ナントナク、ワカル。ナントナク、ダケドネ。アンタノ言イタイノハツマリ、愛欲ハ、競争デモアル。ドウシタッテ、同ジ強サデオ互イヲ思イアウコトハデキナイ。ドコカデ差ガ生ジルモノ。
ソノ差ガスレチガイヲ生ミ、ヤガテ疲レテ、壊レテシマイ、結果トシテ、失ウコトニナルノガ怖イ、ッテコトデショ?」
「そうだな。わたしが求めているのは、どこまでも一緒に歩いてくれる人なのだ。贅沢なのかもしれないけれど、わたしが女であり、命をつなぐ役目を担える者ではない以上、われわれのあいだには、われわれしかなく、ひとたび道を外れてしまったら、もう元に戻れないだろう。
わたしが行く道は険しいから、やはり道連れがほしいのだよ。でも、かれが求めているのは、そうではないのだな。
いままで、黙って我慢してくれていたのか。それが記憶をなくすことで、はっきりと表にあらわれたのかもしれない。
してみるに、わたしがかれを常山真定に追いやろうとしたのも、そうなることが怖かったといえないだろうか。ああ、わたしはなんと嫌なやつだろう」


※なんか忘れてるなあ…なんだろう、と思って、はっと気づきました。今日はニッキをまだアップしてなかった(>_<) お待たせいたしました~。でもって、本日拍手をくださったJさま、いつもいつも温かいおことばありがとうございます。感謝感激であります。ほんとうにうれしいです。また復活しますよー!(^^)!

2006年12月12日(火)
実験連載 塔 93 

「思イツメルノ、ヨクナイヨ。今日ハ寝ルノガイイ。兄チャンニハ、ワタシカラ、スコシ出発ヲ遅ラセテモラウヨウニ言ウカラサ」
「重ねてすまぬな。これでは、今日はまともに寝られまい。そうなると炎天下のもと、子龍もわたしも、まともに歩けるか怪しいからな」
「気ニスルコトナイ。ワレワレ、アンマリ急イデナイモノ」
「そうなのか?」
「実ヲイウト、兄チャント弟モ、がんだーらニ行ッテモ、イマトアンマリ変ワラナイダロウナ、トイウノハ、ワカッテイルンダヨ。御祖父サンノ、ソノマタオ祖父サンカラ、ズーット、『ナンデモ願イガカナウ石』ヲ探シテキタ。
トハイエ、生活ガ苦シカッタカラ、片手間ダッタケレドネ。父上ガ商人ニナッタノモ、石ヲ探スッテノハ名目デ、ヤッパリ遊牧ダケダト生活ガ苦シイシ、贅沢シタカッタカラトイウノモアルノヨ。
ケド、ワタシガ覚エテイルカギリ、商人ニナッタアトノホウガ、父上ハ楽シソウダッタ」
「なぜ兄弟そろって僧侶になったのだ」
「父上ノ遺言、ッテコトニハナッテイル。兄チャンヤ弟ハ、父上ガ、母上ニ先立タレタカラ、世ニ無情ヲオボエタカラダト信ジテイルケレド、本当ハチガウ」
「どういうことだ?」
「兄チャント弟ハ、母上ガ死ンダト信ジテイル。ケレド、本当ハソウジャナイノヨ。
アレハワタシガ子供ノコロダッタ。夜ニ厠ニイクタメ起キタノネ。ソウシタラ、母上ガ、知ラナイ男トイッショニ、家ヲコッソリト出テイクトコロダッタ。
父上ハ、母上ガ死ンダト言ッタケレド、子供心ニ、ソリャ嘘ダッテ、スグニワカッタヨ。ケレド、父上ノ名誉ヲ考エテ、ワタシハ黙ッテイタ、孝行息子」
「それは辛かったな」
「父上ノコトガ好キダッタシネ。イイ父ダッタ。デモ、ズット気ニナッテイタワケ。
ダッテ、父上ハ羽振リガヨクッテネ、安息国ニ建テタ家ダッテ、トッテモ大キナモノダッタシ、使用人ダッテ私兵ダッテイタワケヨ。母上ヲ追オウト思ッタラ、デキタハズナノニ、父上ハソウシナカッタ。
ダカラ、父上ガ病デ寝ツイタトキ、思イキッテ、尋ネテミタ。ソウシタラ、父上ハ教エテクレタヨ。
モトモト、母上ハ、天山山脈ノフトコロデ、牛ヲ飼ッテイル貧シイ遊牧民ノ娘ダッタ。アルトキ、父上ハ母上ヲ見テ、一目ボレシチャッタノネ。思イ立ッタラ即実行。トイウワケデ、父上ハ母上ヲ掠奪シタノサ。マ、ワレワレ遊牧民ニハヨクアルコト。
ケレド、母上ニハ、好キナ人ガイタラシイ。デモッテ、縁談モマトマッテイテ、嫁グノヲ楽シミニシテイタラシインダナ。ケレド掠奪サレテ、シラナイ土地ニツレテコラレテ、ウレシイハズガナイ。
母上ハ、ワタシガ覚エテイルカギリ、笑ウコトガナイ人ダッタ。ワタシニシテモ、コンナニ愛ラシイノニ、可愛ガッテモラッタ覚エガナイ。好キジャナイ男ノ子ヲ、可愛ガレナカッタノカモシレナイネ。
母上ハ、ズット待ッテイタノヨ。自分ヲ助ケテクレル男ガヤッテクルノヲ。父上モ、予感ガアッタンダロウネ。子供ノ目カラ見テモ、母上ハモウ、若クモ美シクモナカッタケレド、男ハ母上ヲ連レテイッタ。
思ウニ、アノ男ハ、母上デナクチャ、ダメダッタンダロウ。
父上ハ、優シイ人ダッタ。ダカラ母上ヲ追ウコトヲアキラメタヨ。コノアタリ、チョット遊牧民ノ長ニハ向イテナイヨネ。本人モワカッテイタンダト思ウンダ。ダカラコソ、ワレワレニ、僧侶ニナレト遺言シタ」
「僧侶は子供を作れない。つまりは子孫はいなくなり、絶える」
「ソユコト。父上ハ、母上ヲ略奪シタコトヲ、気ニヤンデイタンダト思ウヨ。石ノコトニシテモ、コレダケ探シテミツカラナインデアレバ、モウ終ワリニスルベキダト思ッタノカモシレナイネ」
「父上はどうして亡くなったのだ」
「ヨクアル話。悪イ漢族ノ商人ニダマサレテ、一文無シニナッテシマッタ。安息国ヲ基盤ニ頑張ッタケド、借金ヲ返スタメニ、家屋敷、ゼーンブ売ルコトニナッチャッタヨ。
ソレデ、ガッカリシチャッタノダロウナア。チョットシタ病デ寝タキリニナッテ、ドンドン弱ッテシマイ、ポックリト逝ッテシマッタ。カナシイヨ」
「そうであったか。尋ねるが、もし、石が手に入ったら、家を再興したいと思うか」
「イマサラ、過去ニハ戻レナイ。モシ石ガアルナラバ、母上ガ幸セニ暮ラセテイルカ、ソレヲ知リタイ」
「もしかしたら、最初に掘り出した者の血を引く子孫ならば、正しく使えるのではないかとは思わないか」
「思ワナイヨ。正シク使エルナラ、ドウシテゴ先祖サマハ、失敗シタンダロウ。ゴ先祖サマヨリ、ワレワレノホウガ優レテイルトモ思エナイシネ」
「尋ねるが、もし石がずっとみつからなかったら、やはりおまえたちは、えんえんと大地を彷徨いつづけるわけか」
「マア、ソウナルネ。宿命ッテヤツ」
「………石があると言ったらどうなる」
「ヤッパリネ」


※またも遅くなってしまいました。ごめんなさい。明日は朝アップできるかな~。今日はカタカナいっぱいで読みづらいかもしれません。ごめんなさいm(__)m そして旅はまだつづく…果たして終わるのか? どうぞご注目くださいませ(^_^;)

2006年12月13日(水)
実験連載 塔 94

「やっぱり?」
「ウン。夢デ見タ。ワレワレノ故地ノナカニ、塔ガ建ッテイル。ソコデゴ先祖サマガ塔ノテッペンデ手招キヲシテイルノデ、登ッテミルト、地平ノカナタカラ、白イ龍ガヤッテクル。
同ジ夢ヲ、ココノトコロ、毎日ノヨウニ見テタ。コリャ、御仏ノオ導キデ、宿願ガカナウ日ガ近イト思ッテイタヨ。
アンタノ名前ヲ知ッテイル。隴西ノ太守ノ屋敷デ宴会ガアルト、アンタノ名前ガ出テキタ。変ワッタ名前ダッタカラ、特ニ印象ニ強イ。号ガ臥龍ダトカ。アア、コイツガ、石ヲ持ッテイルンダト、ワカッタヨ」
「なんと、気づかれていたとは。では、ほかの二人も知っているのか」
「ウンニャ。兄チャンハ、父上大好キッ子デ、一族ノ宿願ニコダワッテイル。弟ハ兄チャンノイイナリ。二人ニ話シタラ、マチガイナク、アンタタチヲ襲オウトスル。ケレド、石ヲモッテイルアンタヤ、ゴンタクンニ勝テルトハ思エナイ。
ソレニ、二人ニ人殺シナンテサセタクナイヨ。ダカラ、アンタモイママデドオリ、知ランプリシテテホシイ」
「うむ、約束しよう。シラを切るのは得意だ」
「ソノヨウネ。石ハ、タブン、ワレワレヲ選ンデイナイ。兄チャンヤ弟ガワタシノヨウナ夢ヲミテイナイトコロヲ見ルト、キット、ソウイウコトナノヨ。血ハ関係ナインダネ」
「なんだ、石はおまえに渡すつもりであったのだが、その口ぶりでは駄目なようだな」
「ウン、正直、イラナイ。渡サレテモ困ル。夢ニヨレバ、石ハ元ニ戻リタガッテイル。塔ニイカナケレバ、石ハ、マタ悪サヲスル。ワタシガソレヲ持ッテ、石ガ誘惑シテキタ場合、勝テル自信ガナイ。
アンタニハ、塔マデ石ヲ持ッテイテモラウヨ。兄チャンタチハ、ウマク誤魔化スカラ、協力シテホシイ」
「塔がどこにあるのか、知っているのか?」
「知ッテイル、トイウヨリモ、知ッテイタ、トイウノガ近イカナ」
「どういうことだ」
「塔ハネ、ワレワレノゴ先祖ガ匈奴ニトドメヲササレタトキ、一緒ニ崩レテシマッタノ。今ハ、コノ世ノ、ドコニモナイ」
「矛盾しているぞ。どこにもない塔へ、どうやって行けというのだ」
「困ッタネ」
「あのな」
「思ウニ、アンタハ漢族ノナカデモ、タッタ一人、誘惑サレルコトモナク、石ヲスベテ揃エテ、ワレワレノ前ニアラワレタ。ソレダケデモスゴイ奇跡ヨ。
トナレバ、モシカシタラ、二度、三度ノ奇跡ガオコッテモオカシクナイ」
「どんな奇跡だ、それは」
「想像モツカナイケレド、キット、終ワリハ近ヅイテイル。石ハ、ワレワレデハナクテ、アンタヲ選ンダノ。最後マデ、付キ合ッテチョウダイヨ」
「まだ、当てのない旅はつづく、というわけか……やれやれ、子龍がこれを聞いたら、なんというだろうか」

※明朝もう一回アップをしてから旅立ちます(^^ゞ月曜日までお休みいたしますのでよろしくです。明日は早起きできるかしらん…不安をちょっぴり残しつつ、今日は寝ます。お休みなさいませ~♪

2006年12月14日(木)
実験連載 塔 95

「ニキ、知ラナイアイダニ部屋カライナクナッテタカラ、心配シタヨ。武威ハ治安ガ、カナリ、イマイチ。昨夜モ、魏ノ兵卒ガ暴レタッテサ。オカゲデ、家ノ扉ニトリツケル錠前ガ、飛ブヨウニ売レテ、鍛冶屋ガ、ウハウハダッテ」
「太守ノ母丘興ハ、悪クナイケド、チョイト大人シイネ。兵卒ノもらるガ下ガリマクッテイルウエニ、羌族ヤ胡族ノ叛乱ヲ押サエキレナイ。羌族ニイロイロ勉強ヲ教エテイルミタイダケド、時間ガカカル政策ヨ。タマニハ、がつんトヤラナクチャ、ココノ民ハ言ウコトヲキカナイサ」
「ニキニキハ、時流ヲ見ル目ガアルネ」
「ニキ兄チャンニ誉メラレタ。今日ハトッテモイイ朝ネ。ニン兄チャンモ、ソウ思ワン?」
「ウン、兄弟、仲良シガ一番。ウレシイネ」
「うん? 待て、おまえたちの名をまだ聞いていなかったな。長男がニンで、次男がニキ?」
「ソウヨ。上カラ順ニ、ニン・ニキ・ニキニキ」
「ニンニキニキニキ……あえて突っ込むのはよそう。ところで、子龍がまだ戻っていないようなのだが、おまえたちは見ていないか」
「知ラナイヨ。ゴンタクン、ドコヘ行ッタノ?」
「それがわからぬのだよ。兵卒が暴れていたって? この土地は、やはり印象だけではなく、本当に治安が悪いのだな」
「ソリャソウネ。馬超ト組ンダ韓遂ッテノハ、野心ノ強イ男ダッタ。デモッテ、トッテモ強引。軍資金ヲ集メルタメカ、ナンダカワカラナイケド、目ニツイタ集落トイウ集落ヲ、片っ端カラ掠奪シタヨ。
オカゲデ、コノアタリノ人口ハ激減。オマケニ、羌族ト漢族ノアイダニ、マスマス深イ溝ガデキテシマッタ。コレジャ、ヨッポド有能ナ太守デナイト、治メルノガムズカシイ。
馬超ハ、ナンダッテ韓遂ナンカト組ンダカネー。馬超ハサッパリシタ気性ダケレド、韓遂ハ、ヨロシクナイ漢族ノオ手本ミタイナモン。アレジャ、最初ハヨクッテモ、イツカ決裂スルッテ、ワレワレ識者ハ思ッテタ」
「予想ドオリダッタヨネ。馬超トソノ兵隊、メチャクチャ強イケド、軍師ガイナイカラ、状況ニ右往左往スルバッカリニナッチャッタ。チト気ノ毒。イマ、ドウシテイルンダッケカ」
「蜀にいるよ。なるほど、われら漢族から見れば、馬孟起は青羌兵のなかでは神のように崇められている、信望あつい人物という印象があるが、おまえたちから見れば、ちがうのだな」
「韓遂ノ一族ハ滅亡シタカラ、馬超ハ蜀ニ逃ゲラレテ、マダマシ。生キテイレバ、イイコトモアルダロウシ」
「そういうものかな」
「ソウヨ。トハイエ、韓遂ヤ馬超ノ影響ハ、イマダニツヨイ。羌族ヤ胡族ヲ背後デアオッテイルノハ、カツテノ韓遂ヤ馬超ノ部下ダッタリスル。
コレデ馬超ガ涼州ニモドッテクルヨウナコトガアッタラ、キット、羌族ハ呼応シテ叛乱スル」
「なるほど」
「ッテ、ノッポサン、目ヲ輝カセテイルンジャナイヨ。ヤダネ、軍略家ッテノハ。ソンナコトニナッタラ、迷惑千万ダッツーノ」
「安心してくれ。いま、蜀には北進する国力はまだないのだ」
「国力ガデキタラ、来ルヨッテコトジャン。ヤダヤダ。早イトコ、がんだーらヘ向カオウ」
「その前に、子龍を探させてはくれぬか」
「インヤ、ソノ手間ナイミタイヨ。ホラ、向カラヤッテクルノ、役人ッポイ」
「役人っぽいどころか、まさにそのものではないか。いかん、子龍は、もしや捕らえられてしまったのか?」
「アリャ、武装シテルジャン。ヤバシ。逃ゲルベシ! 八方散ルノガオリコウサン!」
「あっ、待て、置いていくな! わたしはどうなる!」
「アンタ、トロイネ。サッサト走ルコト」
「おお、ニキ、戻ってきてくれたか」
「石ヲ持ッテイルカラッテ、油断シテイルトヒドイ目ニアウヨ。ウチノゴ先祖サマ、匈奴ニ首ヲ刎ネラレタ挙句、ソレヲ加工サレテ、匈奴ノ宴会ノトキニ杯ガワリニサレタヨ。同ジ目ニアッテモイイノ?」
「よくない。それは実によろしくない。けれど、子龍がとらえられたかもしれないのに」
「ダカラヨ。ココデアンタモ捕マッタラ、助ケラレナイデショ? トモカク、ココハ逃ゲルノガ一番。ソレ走レ!」
「おい、ニキ、まさか、このまま走って酒泉まで行こうなどという話ではなかろうな」
「ソレデモイイケド、ソレジャ、ゴンタクンガ、カワイソウ。アンタハ知ラナイダロウケド、涼州ハ、ドノ町モ、ミンナ荒レテイル。兵隊ノ質モワルクテ、盗賊ト変ワラナイ。地元ハ太守ニ従ワズ、マスマス土地ガ荒レル。
ソレハトモカク、アンタミタイニ目立ツ人ガツカマッタラ、ドンナ目ニ遭ワサレルカ、ワカッタモノジャナイ。ココハヒトマズ引イテ、様子ヲ見ルノヨ」


※そろそろ出発です。起きることができました(^_^;) 新鮮な空気を吸って、頭をクリアにして戻ってまいります。HPにもいい影響がでるといいなー。それでは次回のニッキ&ブログの再開は早くて月曜、確実なところで火曜日となります。それではまたお会いしましょう(^o^)丿