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「僧侶たちはどうした」
「寝入ったようだ。まったく、僧侶というのは、肉食は禁じられているのだが、そのかわりといわんばかりに、野菜をあんなに大量に食べては意味がないではないか。宿屋の主が、あの三人を化け者を見る目で見ていたぞ」
「おかげで、わたしたちが目立たなくてよい」
「あんたは見た目より肝が据わってるな。さて、作戦会議をせねばなるまい。なんだ、その地図。どこからもらってきた」
「うん、さっき市場に行って、隊商から譲ってもらったものだ。これを見て移動したそうだから、まず間違いはないと思うよ。
いま、われらがいる武威は、ここ。そして、僧侶たちがいう『かんたーら』は,
ここ」
「ほとんど地図の端ではないか」
「何十日どころか、何年もかかるな。砂漠の道に慣れていない者が向かうには、遠すぎると隊商の者にいわれた」
「やはり、あいつらとは途中で別れるべきだな。俺たちが『かんたーら』に向かわねばならぬ理由はないのだし」
「おや、言い切るのだな。塔が『かんたーら』にある可能性とてあるわけだぞ」
「そうだろうか。いろいろと思い出していたのだが、月氏が趙国と戦っていたころ、本拠地にしていたのは、この涼州を含めた、漢に近い場所だ。
月氏の領土がどれだけのものであったかはわからぬが、塔が月氏のものだとすると、『かんたーら』ほど遠くにあるとは思えない」
「ふむ、となると、すこしは見通しがたつな。わたしが夢で見た塔は、そう西ではない。おそらくは敦煌までは行かなくてよいと」
「おそらく」
「かれらが夢で見た国の王家の末裔であるなら、隠し村の所在を知らないだろうか」
「知っていても、どうやって聞き出すのだ。あの口調では、あいつらは、石による災厄への恨みを強くもっている。あんたが石をすべて持っていると知ったなら、下手をすると襲ってくるかもしれないぞ」
「そうだろうか。僧としては滅茶苦茶だが、さほどわるい連中ではないようなのに」
「気持ちはわかるが、ここでの情けは不要だ。冷たいかもしれんが、僧侶とはいえ、漢によい感情を抱いていない蛮族なのだ。いまはうまくやっていても、ひとつのきっかけでがらりと変わる」
「おや、それは経験からの言葉なのかな。白馬義従には、白(鮮卑)と対立する蛮族の若者も多くいたと聞いたが」
「もしかしたら、そうなのかもしれん。思い出せないんだ。すまないな」
「謝ることはないだろう」
「いや、記憶があったなら、もっとあんたの助けになっただろうと思うと、歯がゆい」
「記憶がなくても、子龍は子龍だな。あなたがいてくれるだけで十分に心強いのだから、謝ったりしなくていいのに」
「そうか」
「うん。あの僧侶たちとは、なるべく何事もなかったように、別れたいものだな。情が移ったというわけではないが、わたしも旧い家の人間として生まれたから、家訓の重みはよくわかる。
……なんだ、わたしの顔になにがついている」
「いや。そういえば、俺は、自分のことばかり知りたがって、あんたの経歴の細かい部分をよく聞いていなかったなと」
「知ったところで、面白くないぞ」
「昔は知っていたのだろう。なら、これからも知っておきたいではないか」
「わたしは琅邪の出身で諸葛家の次男坊として生まれた。はい、それでおしまいだ。くわしい話は、成都に帰って、弟にでも聞いてくれ。わたしのことはともかく、あなたのことは、弟は評価していたから」
「あの僧侶たちとちがって、兄弟仲がよくないのだな」
「いろいろあってね。と、先に言っておくが、その『いろいろ』は、前のあなたにも教えていないからな」
「要するに言いたくないのだろう。ならばかまわぬが」
「が? なんだってそんなため息をつくのだ」
「あんたにとっての俺は、やはり石を使う前の俺なのだな。とすると、いま、目のまえにいる俺は、あんたにとってなんだ?」
※今日がんばれば休みだなあ…とはいえ、いまの会社に入ってから、ほんとうにあっという間に夕方になります。いいことだ…。来週末は、ひとあし早い冬休みをいただいて、実家に帰ります。うむ、その前に! その前に復活をしたいところ! 土・日のいずれかに、プチ復活目指しますのでどうぞ遊びにきてやってくださいませm(__)m
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