|
「ほら、その者に、わたしの上衣を着せてやるといい。ひどいものだ。殺して衣を奪ったか、そうではなく、より苦しめるために裸にして引きずったか……後者でないといい。人のすることではない。
本格的に雨雲がせまってきたな。これは涙雨か。雨宿りできる場所もない。子供たちのなかで、弱っている者はないか? わたしの袖の中に隠れるといい。さあ、みなで身を寄せて、雨が行過ぎるのを待とう。向こうの空は晴れているから、すぐにやむであろう。
子龍はどこまで行ったかな。矢のように行ったきり、戻って来ない。
ああ、わたしか? ただの旅人だよ。大丈夫、ありがとう。雨に濡れたところで、感冒にかかることもなかろう。わたしは石に守られているからな。
それよりも、おまえたちを元の集落に戻してやりたいが、気にかかることがあるな。そこも魏の兵卒に占拠されているのであれば、戻るのはかえって危うい。いくら子龍がおそろしいほど強いとはいえ、ひとつの集落にあつまっている兵卒たちすべてを相手には出来まいよ。さあて、困った。おまえたちと仲のよい部族の集落へ連れて行くしかなさそうだな。
これこれ、あれは雷だよ。落ちてこないかって? わたしのそばにいる限りはだいじょうぶだ。安心して隠れていなさい。
どうしたのだね?
…………赤毛か? いや、ちがう、人ちがいか。雷とともに登場とは、派手なやつだな。風体も派手だが。貴殿は?」
「神威将軍」
「神威将軍? それは馬孟起のあだ名のひとつであろう」
「馬孟起どのと、知り合いか? ことばが、このあたりの者とちがう」
「やはりわかるか。襄陽から来た、ことにしておこう。神威将軍か。よく考えると華があるというか、派手なあだ名だな。わたしの号といい勝負だ。
貴殿、みたところ羌族のようだが、馬将軍のお身内かなにかか。なぜに馬将軍のあだ名を名乗っている」
「漢族の支配から脱するために立ち上がり戦った、かつての神威将軍は、敗れ、漢族に魂を売った。そしていまは、故地を見棄てて山中の土地にて安穏と暮らしている。いわば、儂らの英雄は死んだも同然。だから、儂がその名を継いだのだ」
「なるほど、馬孟起はまことの英雄であった。それにあやかって、勝手に派手なあだ名を使用しているというわけか。
怒るな、莫迦にしたわけではない。この者たちを助けにきたのならば、もう心配は無用だぞ。わたしの連れが、そなたの部族のものを救うべく、片っ端から魏兵を片付けているところだ。
眩暈がするほどつよいやつだから、朗報を待て」
「そいつは羌族か?」
「ちがうが、どこの民であれ、女子供が理不尽に痛めつけられているのを見るのが許せない性質で……おや、言っている側から帰ってきた、のに、やれやれ、なんだってそう好戦的なのだね。
矢をつがえなくともよい。この者は敵ではないよ、子龍。だいたい、弓なんぞ、どこから持ってきたのだ」
「奪った。おい、そこの派手な羌族。そいつから離れろ。いますぐだ」
※ニッキだけですが朝にアップ敢行(^^♪ ブログは夕方にアップ予定です。仙台、月曜日から天気が崩れ気味ですが、がんばっていってまいります!(^^)!
|