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「ええい、何を考えているのだ、ほんとうに! どういう躾をしているのだ、親は! やめよ、小僧!」
「躾けの問題ではないぞ、駄目だ、間に合わぬ!」
「あ」
「あの女?」
「………」
「………どうなっている」
「奇跡なんて言葉を、簡単に使いたくないのだがな」
「しかし奇跡としか言いようがないであろう。宙に子どもが浮かんでいる」
「まことに翼でも生えたか。おや、ゆっくりと落ちてくる」
「女の様子がおかしいな。具合が悪そうではないか?」
「そうか、わかった。子龍、子供はおそらく放っておいてもよろしい。それよりも女のほうだ! 急げ!」
「どうした。しかし子供のほうがあきらかに尋常ではないぞ」
「ふつうならば、空を飛ぼうと崖から落ちたら、死ぬのだ。ところがあの子供はそうならずに、ゆっくりと落ちてくる。
つまりだ、あの女が、また石を使ったのだ。おそらくは、子どもに石を使わせないでくれということと、子どもを助けてやってくれという願いをかけた」
「なんだと、一度に二個も石を使ってしまったというのか?」
「評判どおりの女だったというわけさ。そして、一気に反動が来た。若い女だったはずだが」
「これは……なにがあったのだ、髪がこんなに白くなってしまって、肌もしわだらけで、手足もやせ細って、まるで老婆ではないか」
「これが反動というものなのか。辛うじて息はしているな。われらがわかるな? おまえがその石を盗んだ者だ。石は、おまえを選んではいなかったようだな。
しかしなんということを。見ず知らずの子供のために、おのれの命を終わらせようというのか。
笑っているな。なぜだ。なにがうれしい。おまえの命の火は消えようとしているのに。おまえは、石をあつめて、どうしたかったのだ?」
「塔へ行きたかったのではない?」
「……そうか、そなたは天晴れな女だ。そなたら夫婦の噂は聞いていた。どのような遠方の者であろうと、病になったと聞いたなら、厭わずに足を向けて治療に専念したと。
最初に石をつかったときに、そなたは賛成し、そなたの夫は反対した。けれどもそなたが引かなかったので、夫はそなたの身を案じ、みずから石を使った。そして、反動によって、夫は死んだ。
そなたは、そのことをとても悔いた。だからこそ、おのれと同じ悲しみを負う者がこれ以上でないようにと、石を集めていたのだ。そこへわたしがあらわれた。
そなたが持っていた石はふたつ。その願いに引き寄せられるように、わたしもふたつの石を持っていた。
おまえの前に、赤毛の男はあらわれなかったのか? 塔へ行けとはいわなかった? そうか、やはり、一度でも石を使用した者の前には、あの男はあらわれないのだな。
安心するといい、石はわたしを選んだ。そして、石を塔に返す役目も、わたしが担う…………そうだ。安らかに眠るとよい。あの世で、そなたの夫と、ふたたび出会えるとよいな」
※最近、どうも夜更かし癖がひどくなっております。うーむ、明日の朝は早起きして、ニッキのアップも早くできますように…(-_-;)
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