● こうせいニッキ●
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2006年10月8日(日)
実験連載 塔 31

「消えた」
「あいつ、もしかして、おまえの近所に住んでいた仙人とやらの、知り合いではないのか」
「どうだろう。それにしても、うれしい土産を置いて行ったぞ。見ろ、さきほど祭壇に投げつけたはずの石と、あらての石がもうひとつ。おそらく、さきほどの村にあったものだろう」
「村は大騒ぎになっているだろうな」
「さて、選択はふたつあるようだ。ひとつ。あなたのいうとおり、まったく無視して、このまま成都に戻る。ふたつ。癪ではあるが、言うとおりにして、石をあつめ、塔へむかう」
「議論するまでもない。ひとつめだ。妙な怪異に、これいじょう踊らされてはならぬ。旅は打ち切りにして、近場でゆっくりすればよい」
「近場というと、前に行ったことのある、湖の畔の小屋か」
「行きたければ、そこでもよい」
「そうだな。だれにも邪魔されたくないというのなら、南にむかっても悪くないわけだ。言うとおりにするよ。こればかりは、頭がはたらかない」
「おまえがそんなことを言うなど、めずらしいな」
「小癪なことにね、心は、どうしても『塔』にむかわねばと思っているのだよ。ひどくざわざわして、いやな予感がする。石もふたつに増えてしまったし。
さて、まずはこれを封印せねばならないだろうな。わたしがしてもよいけれど、趙直あたりにたのむか。こういった妙なことに遭遇するのは、あれのほうが多いだろうし」
「趙直が誘惑に乗ってしまう可能性はないだろうな」
「おや、ようやく全面的に信じるようになったのだな」
「目のまえで人が煙のように消えたうえに、捨てたはずの石がおまけつきで戻ってきたのだ。信じたくなくても信じざるを得まい。正直にいえば、はやいところ縁を切りたいのだ。そもそも、こういうものは、」
「理屈が通じないから、いやなのだろう」
「先に言うな。うん? 待て、さんばんめの選択として、壊す、ということもありではないか」
「だめだね。おそらく、この一部が欠けている石、これはおなじことを考えただれかがそうしたのだけれど、結局失敗したのだ。となると、やはりふたつの選択しかない」
「ともかく、ひとまず成都に戻るぞ。しかし、この雨だ。今日は止む終えぬ、ここで野宿をして、それから南下する」
「了解。岩肌がごつごつとしていて、寝心地は保証つきの仮の宿りだな」
「雨に打たれて風邪になるよりマシだろう」


「ああ、雨が止んだのだな。山肌から朝陽がこぼれて、ほんとうにきれいだ。いいながめだな、子龍、早いな。もう起きたのか。そんな奥でうずくまっていないで、こちらへ来て、一緒にながめてごらんよ」
「………」
「どうした? 道はぬかるんでいるが、天気になったようだな。これならば、今日中に馬で梓潼のそばまで行けそうだ。あちこち背中が痛いよ」
「………」
「ほんとうにどうした。なにかあったのか? なぜ、そんなふうにわたしを見る? いまさら、じっくりながめなければならない顔でもあるまい」
「あんたは誰だ」
「は?」


※しかし、今後の展開で『セリフだけ』というのが難しいなあと思う面もあれば、「ちょっと驚かしちゃおう」と思う部分もあり、さて、どうなるか、「まー、はさみののことだから」と期待せず見てやっていただければと思います。
ところでキャラ別人気投票、法正に4票! というのはうれしいのですが、それに並び立つ徐庶。おおー、頑張ってるなあ。でもって、今回の集計の特徴として、趙雲への票が集まっている、というところがあります。孔明に迫っているこの数。うれしいのですが、ナゼ(?_?)
でもって、うさぎはもなかがダントツでありますね。さて、これからの展開でどうなるか、チェックするのが楽しみです(^^♪

2006年10月9日(月)
実験連載 塔 32
「悪い冗談をいうものだ。あんな怪異のあったあとに、そういう冗談は悪趣味だぞ。やめてくれないか」
「その口ぶりでいうと、あんたは俺のことを知っているようだな。弟……ではなさそうだな」
「手鏡で自分とわたしの顔を見比べるとは、芸のこまかいことを。ふん、ならば名乗ろうではないか。わたしの名は諸葛孔明。徐州は琅邪の出自で、劉左将軍により左将軍府事および軍師将軍を任じられておる。年齢や、家族構成もいおうか?」
「俺は、なんという名前の男なのだ。あんたの何だ」
「これまた冗談が過ぎる。あなたは姓は趙、名は雲、字は子龍。冀州にある常山真定郡のそこそこ名前のとおった家の出身。ふるくは趙王の血筋に遡れるらしいと自分でいっていたことをくわえておこうか。
でもって、あなたはわたしの主騎で、おなじく劉左将軍にお仕えする同僚である。称号は翊軍将軍。その主な勤めは、成都の守備。
どうだね、ほかになにがひつようだ」
「ここはどこだ」
「これは本格的に物忘れがひどいようだな。ここは陽平関からはずれたところにある山道で、陽平関が土砂崩れで通れなくなっていたので、わたしたちはここを回って、天水を目指していたのだよ。どうだ、寝ぼけ将軍、思い出したか」
「諸葛とは、めずらしい姓だな」
「なんという反応の悪さ。いまさらそれを指摘されるとは」
「俺の身分は、なんとなくわかった。いや、じつをいうと、さっぱりわからぬが、俺はあんたの敵ではないし、あんたは俺の敵ではない、ということだな」
「敵なものか。わたしが、敵と同宿すると思うか」
「そうだな。ふつうは、敵と同宿することはない。ならば、なぜここにいる」
「………ほんとうに忘れているのか?」
「敵ではないのなら、なぜ一緒にいる。ここが陽平関のそばで、天水にむかっているというのなら、敵地にむかっているということではないか。
あんたの説明でいけば、俺は蜀の将ではないのか。なぜ、魏の領域に入ろうとしているのだ。もしや、亡命を考えていたのか」
「そういうことはおぼえているのだな。亡命ではないよ。何度も話したではないか」
「なんと?」
「いや、だから、夢で見る『塔』を探しに西域へいくのだと」
「『塔』とは、どこのことだ。あんたは、自分が軍師将軍だといったな。要職にある人間が、なぜ従者のひとりもつけずに、俺だけをつれてそんな旅に出ている」
「それは、旅先で手に入れてしまった石のせいで」
「石?」
「おぼえていないのか?」
「だからたずねている。俺はだれだ」
「………」
「………」
「………これが『反動』なのか? 子龍、石になにを願ったのだ?」

※さてはてー♪三連休も終わりに近づき、あとはお風呂に入って、明日の服の準備をして、ええと、お皿を洗って、明後日のアップの準備して…けっこうやることあるなあ。まあ、それはさておき、日曜日にお待たせして申し訳ありませんでした。明後日は早めアップを目指します。でもって、ふふふ、ただいま愉快な企画進行中。くわしい予告に関しては、土曜日のアップで明らかになります。今回は、はさみの世界のみならず、いろんな方を巻き込んで?の大掛かりなものとなる予定。なんだそりゃあ(?_?)と思われた方、ぜひぜひ土曜日に遊びにいらしてくださいましね♪
2006年10月10日(火)
実験連載 塔 33

「つまり、だいたいはつかめた。俺は公孫瓚のもとを去ったあと、うまく劉予州の部下となった。そこまでは覚えている。忘れているのはそのあとだ。荊州は新野でおまえと会い、主騎になって、いまに至る、と」
「わたしのことから、忘れてしまっているのか? かなり細かい部分をはしょったが、来歴の大筋はそんなものだ」
「ぼんやりだが、いわれて見れば、なんとなく思い出せるという程度だな。あんたのその顔から察するに、俺は、公孫瓚のところで、あまりよい働きをしなかったようだな」
「ちがう。逆だ、逆。働きがよすぎて、公孫瓚と衝突し、身の危険をおぼえたために実家の不幸を理由にして出奔したのだよ。
公孫瓚は袁紹によって滅んだ。その袁紹も、曹操によってほろび、いま、天下に残っている勢力はだいたい三つ。
曹家の魏と、江東の孫家の呉、そしてわれらが劉左将軍の率いる蜀だ。まだ北に公孫氏だの南に蛮だのがいるが、これは頭数に入れなくても、とりあえずはよかろう」
「それも説明されると、なんとなくわかる。地理や国勢はおぼえている。だが、奇妙だ。自分がどんな人生を歩んできた男で、あんたがだれか、それがわからない」
「主公のことはわかるのか?」
「ぼんやりとだが。俺は、十五のときに、主公にお会いしたのではなかったか。最初は仕官を断られたが、そうだ、袁紹のところに身を寄せていた主公のところへ赴いて、ようやく家臣になることを認められたのだ。
だんだん思い出してきたぞ。だが、それ以前もわからない。
常山真定の出だというが、家のことも忘れているし、公孫瓚のもとにいた、という事実はおぼえているが、細かいことも消えてしまっているし、劉左将軍のところへたどり着くまで、なにをしていたのかも、思い出せない」
「つまり、十五までの年月と主公のもとにたどり着くまで、それから、わたしと出会ってからのことが思い出せない、ということか……じろじろ見るな」
「見なければ、思い出せないだろう。いや、しかし、奇妙なことだ。あんたのように、派手やかな者の姿を忘れてしまうとは」
「そりゃどうもありがとう」
「あんたのことを、俺はなんと呼んでいたのだろう」
「『軍師』だよ。ただ『軍師』と」
「そうか、軍師将軍を拝命していると言っていたな。だからか」
「ぴんと来ないのであれば、呼び捨てでかまわぬぞ。亮でもかまわぬし」
「あんたは、俺の義兄弟というわけでもないのだろう。それなのに、名を呼び捨てにするのはおかしい」
「そういうところだけは律儀だな。変わらないというか」
「なんだか変な質問になるが、なぜ俺は、あんたと二人だけでこうして旅に出ているのだろう」
「答えるのも変な感じだが、つまり、わたしたちは義兄弟ではないけれど、とても仲よしでね、それにあなたはわたしの主騎であるから、わたしの旅に同行したというわけだ」
「従者もつけずに? ふたりだけで? なんでまた?」
「さてねぇ、なんでだったろうねぇ」
「そこをごまかすな。もしや」
「なんだ?」
「やはり、亡命か?」
「ちがう! この旅は、劉左将軍の許可をいただいているものだ。
まったく、本当になにを願ったのだよ。さあて、あなたに関するあらかたの説明を終えたところで、今回の旅についての説明をするぞ。よーく聞くがいい」


※自分でも呆れるわけでありますが、ちょっぴり鼻風邪風味なはさみのです。本当に弱いんですよ、体。鍛えてもあんまり効果でてこない…カナシイ。薬を飲んだので眠いったら。明日のアップ準備をしてから、今日は早く寝ます。
でもって、明日のアップ予定は、『椒聊』とリクエスト作品であります(^^ゞ遊びにいらしてくださいましね。いまから準備しますので、このあいだのように遅くなる、ということはないハズ! でもって、土曜日に明らかになる企画、ただいま予告状を作成中。こちらもご期待くださいませね(^^ゞ

2006年10月11日(水)
実験連載 塔 34
「つまり、俺は、石が本物かどうかを試すために、わざわざ怪しい石に、願をかけてしまったというのだな。
で、おまえの見立てでは、どうやら、『願い』の反動がおこって、俺は物忘れがひどくなっている、と。俺はなにを石に願ったのだろうな?」
「それはわたしが知りたい。まいったな。このまま成都に帰って、医者に見せるべきだろうか。しかし、これは医者の領域ではないような気がする」
「うん、ちがうだろう」
「自分で言うな! ああ、困ったな。そうなると、高名な道士に見てもらうのがよいのだろうけれど、趙直は夢見が専門で、退魔の力はない、と自分で言っていたし、ほかの怪しげな有象無象に、あなたのことを任せるのも不安だし。
ほんとうに、何をねがったのだ」
「だから、わからないのだと言っているだろう。それより、肝心なことを聞いていいか」
「なんだね、言ってみるがいい」
「俺は、どういう男だったのだ」
「どう、って。そうか、世の仕組みや情勢などはおぼえているが、自分の記憶だけは、すっかりなくしてしまっているというわけか。自分がどんな人間であったかもわからないだなんて」
「落ち着かなくて困る。俺は、どういう人間だったのだ。それがわかれば、あんたとの付き合い方もわかるであろうし」
「自分が何者かなんて、そんなこと」
「『そんなこと』? どうした、なぜ答えぬ」
「もういちど確認する。幼少の頃から十五までの記憶、それから主公にお仕えするまでの数年間の放浪の記憶、さらにわたしに出会ってからの記憶が、根こそぎなくなっているのだな」
「うん。そうだ。ずいぶん顔色がわるいが、俺はそんなに、口にしにくい男だったのか」
「そうではない。あなたはとても立派な人だったよ。いや、これでは故人を語るようだな。不安になる要素なんてひとつもない、ほんとうに立派な人だ。
あなたほどに、完璧ということばに、もっとも近い人はいないだろうと思う」
「誉められているのだろうが、すまぬ、漠然としすぎていて、さっぱり参考にならぬのだが」
「すこし動けば思い出すのかもしれない。ここでこうしていても埒が明かぬ。出立しよう」
「どこへ行く。成都にもどると言っていなかったか。南へ向かうならば、山を下らねばならぬだろう、ええと、軍師、だったかな?」
「孔明でいい」
「ならば、孔明、なぜ山を登る?」
「北ヘ行くのだ。石を集めて、『塔』へ行く」


※昼過ぎると鼻がぐずぐずしてくる、これは風邪ではなくてアレルギー? どちらにしろ寝不足がいけませんね。さてはて、8万HIT、みなさまありがとうございました(^^♪ しかしこのあいだのキリ番のときに浮かれたこと→(年内に一万いくか?)を書いておりましたが、物理的に考えて、そりゃ無理だ。それはともかく、さらなる向上を求め、ゆかいな企画が現在進行中であります(^.^) 土曜日のアップ時にあきらかになります。どうぞお楽しみにー!(^^)!
2006年10月12日(木)
実験連載 塔 35

「三回に一回」
「なんだ、それは」
「あんたが、俺が話しかけて、あんたが答える回数がだ。こうしておなじ道を歩いているというのに、自分が何者かわからないうえに、あんたがどういうやつかもわからないまま、よくわからぬ『塔』へ向かっている、俺の身にもなってくれ」
「それはすまなかった。あなたは、いつもわたしが黙り込むと、どうしてくれていたかな。一緒に黙ってくれていたかな。それとも、ぜんぜんちがう話をして気を紛らせてくれたかな」
「すこし手がかりが出たな。俺はあんたに合わせるのがうまい男だったのだな」
「合わせる、というのとは、すこしちがう。あなたは、ほんとうに、ふつうにわたしのとなりにいてくれる人だった」
「その『ふつう』の度合いがわからん」
「困ったな。言葉にして伝えるのがむずかしい。あなたと会話するときには、こんなふうに困ったことは少なかったよ。あなたは口で『わからない』とは言っても、ほんとうはわかっている人だった」
「俺はあんたに似ていたか?」
「似ていると、人は言うけれど、わたしからすれば、正反対だよ。得意とするところがまったくちがうし、なにひとつ取っても、あなたの受け止め方はわたしとちがっていた」
「それでは、よく衝突をした?」
「衝突は、それはたしかにすこしはあったけれど、深刻なものになったことはなかったな。
これは、あなたが言ったことだけれど、わたしたちは、物の見方や捉え方が多少ちがうだけで、根本は同じなのだろうと。だから、突き詰めていけば、結局同じ結論を引き出せた。
衝突といっても、悪いものじゃない。あなたといろいろと、たがいの意見を突き合せて、それぞれに考えるのは、楽しいことだったよ。
わたしだけではなく、あなたもそう思っていたからこそ、ずっとうまくやっていけたのだと思っていたけれど、もしかしたら、わたしは、あなたに、かなりの無理を押し付けていたのかもしれないな。
どうだ、なにもかも忘れた状態で、わたしと言葉をかわすのは、きつくないか」
「不安さが先に立って、そこまで気が回らなかった。きついことはない。むしろ楽だ。俺はあんたと、ほんとうに仲が良かったのだな。ところで聞いていいか」
「なんだ」
「あんた、俺がなにを石にねがったのか、わかったのではないか」
「わからないよ。さあ、きつかった山登りも、そろそろ終わりだ。さあて、あとは一路、下弁を目指そうか」


※ さー、ニッキをアップしようと準備に取り掛かったのが19時前。しかしモウレツな眠気に襲われ……気づけばこの時間。なんだって、こんな半端な時間に寝ちゃったんだ!
それはそうと、みなさま、アンケートへのご参加、どうもありがとうございます!(^^)! 偉度やくっきーが票を伸ばしているのがうれしいかぎり(^^♪ でもってこのニッキを気に入りましたら、『こうせいニッキ」ものがたり編」 にぽちっと…おねだりですか(-_-;)
明日がんばれば、またお休みですね。気合入れなおさないと!(^^)! 土曜日アップも早めのアップを目指します(^^ゞ