● こうせいニッキ●
本文へジャンプ XX月XX日 

 

2006年10月3日(火)
実験連載 塔 26

「いま、なにをした? 額に石を当てるなどという真似をして! しかも、あなたがいま、石に触れさせた部分というのは、医術的にも、第三の目がある場所だといわれているほどに、体のなかでも重要な意味をもつ場所なのだ。もしや、石に願いをかけたのではあるまいな?」
「石をめぐる夢が、事実であるかどうかの実験だ。もし、俺に異常がなにもなかった場合は、この旅は嚨西で終わりにする」
「異常が起こった場合は?」
「石を壊し、成都に戻る。どちらにしろ、おまえは怪異にふりまわされ、劉玄徳の軍師という立場を忘れてはならぬ。
捨てても捨てても戻ってくる石のことは、たしかに異常で気味がわるいが、かといって、それを理由に、危険な旅を続ける意味はないはずだ」
「言いたいことはわかった。しかし、聞かせてくれ。なにを願ったのだ?」
「教えない」
「そこで意地悪を言うかね」
「拗ねるな。聞いたところで楽しい願いではない、ということだ。叶ったら叶ったで、旅は終わりだな」
「ますます気になる。なにを願った」
「だから、秘密だ。さて、本題に戻るぞ。この石は」
「あっ! また投げるか!」
「われながら、いい場所に飛んでいったな。祭壇の中央にまるで吸い込まれるように飛んでいったぞ。すごいな、内も外も、まるで蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。これに紛れて、俺たちも逃げるぞ」
「ええい、まるで子供のころに、一族の廟の供物を遊びで盗んだときのような。待て、そんなにつよく手を引っ張るな!」
「へえ、おまえも、意外にやんちゃな子供だったのだな」
「弟に誘われて、つい。あとで姉からものすごーく叱られたのだ。二度と盗みなんぞしないと、心から誓ったね、って、そういう話をしている場合じゃないぞ!
混乱なんてものじゃない。みな、奇跡が起こった、石が増えたと大喜びしているではないか!」
「そう思わせておけばよい。ほら、じきに朝陽が完全に空にのぼる。そのまえに、村を出るぞ!」

※睡眠不足というのはすべての敵ですねぇ。なんだか疲れが貯まっています。こういうときこそ、早く寝なくちゃー、とか思うのですが、いつもの時間まで起きていてしまうこの不思議。
それはさておき、あさってのアップは、ずんだ関係が集中するかもしれません。ずんだを読んでいないよう、という方はすみません、ニッキがこれから本筋に突入していきますので、そちらを見ていただければ…なーんて、お願いをしてみるワタクシ。ニッキの連載はまだまだつづきます(^^ゞ

2006年10月4日(水)
実験連載 塔 27
「なんだ、さっきから、手ばっかり見て。もしかして、痛かったのか?」
「いや、痛くはなかったよ」
「では、なぜ手を見ている」
「いまさらだが、不思議だな、と思ったのさ。子どもの頃から、屋敷に閉じこもりの暮らしをしていて、遊び相手といえば弟くらいなものだった。徐州が危なくなって、父が死に、叔父のところに引き取られたわけだけれど、そのあいだもあとも、だれかと手をつないだことがあったかな、と思い出していた」
「ふうん? おまえの家は、すこし変わっているからな。姉君や、乳母どのや、おまえの偏屈じいやは、手を引いたりしなかったのか」
「それは一回や二回はあったと思うけれど、みんな叔父が死ぬ前だ。そのあとだよ。ほら、よく親しい人間同士で、腕を組んだり、手をつないだりして歩くだろう。わたしはそういうことは出来ない人間だったからな」
「徐軍師や崔州平どのや、白まゆげの君は?」
「うん、たしかに仲は良かったけれど、みんな思慮ぶかいというか、わたしの癖を知っていたから、必要以上に体に触れようとしてこなかった。子龍、ひとつ聞きたいのだが」
「まじめな顔をして、なんだ」
「わたしの手は、引っ張りたくなる手か?」
「藪から棒に、なにかと思えば……ふつうの手だ」
「これはわたしの印象だが、あなたはよく、わたしの手を引く。嫌ではないから、いままで気にしてこなかったけれど、手を引いて、楽しいのかな」
「楽しいとか、楽しくないという話ではなくて、単におまえを牛みたいに引っ張っていかなくちゃいけない場面に遭遇するときが多い、というだけさ。
ほら、たとえば、こんなときだ。
雨が降ってきた。これだから山の天気は当てにならぬ」
「あんなに晴れていたのに」
「しかも山の一本道で雨とはな。ちょうどいい、あそこの岩肌にくぼみがある。あそこまで走るぞ、と、こういうときに手を引くことが多いのだ!」
「ああ、そうかい。解説ありがとう。要するに、わたしがとろいということだな」


※一週間の真ん中が過ぎました。明日のアップはうさぎ番外編(リクエスト作品)と、ずんだ本編というずんだづくしになる予定です。ドーゾ、見てやってくださいませm(__)m 今日は早めに休んで残り二日のために体力を保存する予定。それではまた明日お会いしましょう。お休みなさいませ…(-_-)zzz
2006年10月5日(木)
実験連載 塔 28
「ひどい雨だ。ここから先が、また土砂崩れで、通行止めなんてことにならなければよいな」
「そうしたら、成都に帰ろう」
「わたしはこの旅を楽しんでいるのだけれど、あなたがそうではないようで、ほんとうに残念だよ、子龍。成都にやり残した仕事でもあったのか?」
「そういうわけではない」
「なら、なぜ。こうして二人だけでいろいろと語り合う時間がこんなにあるなんて、荊州にいたときのようだ。あのときは、ほかのことで大変なこともあったけれど、やはりいまほど忙しくなかったからな。
臨烝から桂陽も往復したし、孫夫人のことで、あれこれ相談もしたな」
「早いものだな。年数で数えたら、それほど昔でもないのに、ひどく昔の話のように思える」
「主公とお会いして、軍師になってから、毎日がどれも忘れがたいものばかりのものになった。こうして、ゆっくりした時間を持つのはいい。
わたしは、やはり働くのがすきなのだね。のんびりしているよりも、あれこれと悩んで頭を働かせたり、あなたに愚痴を言ったり、相談したりするのが好きらしい。
前にも言ったかな。ときどき、あなたが、わたしの人生のはじめから、ずっと一緒にいるのではないかと錯覚するときがある。実際はちがうわけだけれど、もしかしたら、生まれる前から、なにか縁があったのかもしれないな」
「おまえは、ほんとうに夢想家だな」
「おや、嫌かな」
「嫌ではないけれど、どうしてこう、そういう言葉がぽんぽんと、臆面もなく出てくるのやら。こう言っちゃなんだが、おまえに『ひとに触れられることが怖い』という奇癖がなくて、そこいらの男と変わりがなかったら、とんでもない遊び人になっていただろうな」
「ほーお。このわたしが好色漢になっていたかもしれないと、本人を前にして言うか」
「おまえの『言いたいときに言っておく』の真似だ。男であれ、女であれ、おまえに毎日のようにそんなふうに直言で口説かれたなら、だれであれ、気持ちがぐらぐらと揺れまくって、変な方向に考えが向かう」
「なんだ、変な方向って」
「言葉のままだ。気にするな」
「いいや。気にする。なんだ、どういう意味だね」
「気にするなというのに……誰か来るな」
「話を逸らすな。おなじ雨宿りにきた旅人だろう……ではないようだな」
「気を抜くな。これは偶然ではなかろう」
「あの赤毛の男だな」


※さてはて、『この話はいったいどこへ向かうものなんだろう。のんべんだらりんと旅をつづける話なのかな(?_?)』と思われていた方も多いはず。いやあ、最初ははさみのも、起伏のないお話を考えておりましたけれど、途中で『これはどうだろう』というものがありまして、本日のアップ分より、世にもキミョーなお話がはじまります。これを読めるのは、はさみの世界だけ!(←ジャンプのアオリ風に)。というか、みなさまに呆れられないことを祈ります(-_-;)
2006年10月6日(金)
実験連載 塔 29

「………」
「…………」
「北の言葉で話そう。通じるよな?」
「わかる。わたしは徐州訛りで話すとしよう。うん、言葉が通じていないようだな。さすがに千里をいく商人といえど、琅邪にまでは足を運んだことがないらしい」
「なにやら新鮮だな。おまえが故郷のことばで話すのを聞くのは、はじめてかもしれぬ」
「それを言うなら、こちらもだよ。お互いに、わかりやすいように、荊州のことばで話をしていたからな。それはともかく、この男の目的はなんだ? わたしたちは、もうあの石とは、縁を切ったはずなのに」
「見れば見るほどに、あざやかな赤い毛をしているな。これではいかに異国人を見慣れた巴蜀の者の目にも、めずらしかろう。自分が目立つ容姿をしていると知りながら、俺たちをずっとつけていたのなら、この男はどうかしている」
「狙いは石だろうか。どうだ、いっそ、こちらから、石はもう捨てたのだと切り出してみるか」
「交渉は俺がやる。おまえはそこを動くな。こいつが、なにかおかしな素振りをみせたら、すぐにここを出て、村まで戻れ。
たしかに奇妙な宗教に毒されている村だが、おなじ巴蜀の村。おまえの名前を出せば、役人のだれかは動くだろう」
「この雨の中でか。あの石、やはり災厄をまねく石だ」
「途中で転ぶなよ。護身用の武器はあるな? おい、おまえ」

「つまらぬ願いをかけたものだ。願いは受理された。おまえは代償を払わねばならない」

「北の言葉……おまえ、冀州にいたことがあるのか?」
「子龍。そうではなかろう」
「どういうことだ」
「よく見るがいい。この男、いま唇を動かしていなかった」
「ではどうやって言葉を」
「人間ではないのだ。やはり、ここはわたしに任せるがよい。
あやかしよ、我が名は諸葛孔明、そうしてこの男は、わたしの主騎である趙子龍だ。おまえは何者だ。名乗らぬ者に、話はせぬぞ」

※せっかく薄を買って待機していたのに、なんなのさ、この雨! 仙台、ざんざか降っております。明日は晴れるそうなので、明日にでも月見饅頭を買いに駅までてくてく行こうかしらん。仕切りなおし!
それはともかく、本日はたくさんの方にお越しいただいて恐縮ですm(__)m 次回アップは頑張って準備中。どれとどれになるかはお楽しみにー。そして『塔』は本格的に奇妙な動きを見せてまいります……コレから先の展開に、ナニカンガエトンジャと読み流していただければと…書いている人はすっかり楽しんでいます。ナニカンガエトンジャとみなさまが呆れるだろう展開は次週に本格始動予定(引っ張るなあ)。これまたお楽しみにー。

2006年10月7日(土)
実験連載 塔 30

「わたしの名は、このさい、なんの関係もない。もとより、名は、この魂をつない でいたはずの肉体が滅んだときに、心とともにほろび、ともに葬られたもの。好き に呼ぶがいい」
「器用なやつだな。唇を動かさずに話をするだけではなく、徐州のことばまで操る か」
「はるか北東の、ふるいふるい血の匂いがする。おまえが選ばれたのは、その血の 匂いに、石たちが惹きつけられたからにちがいない。おまえは、石を五つ集め、『塔』へ行かねばならぬ」
「なぜ」
「選ばれたからだ。何百年と、だれも選ばれることはなく、石は人界に歪みをもた らしつづけてきた。多くの涙が流され、また血も流された。これを止めるには、石 を本来の場所に戻すしかない」
「おまえは、わたしの夢に出てきた国の出自か?」
「石を手にした者は、かならず、おなじ夢を見るのだ。そうして、『塔』へ行こう とするのだが、みな、途中で石の誘惑に負けて、石を集めることもできずに、倒れ てしまう。そんなことが、何百年とくりかえされていたのだよ。
しかし、おまえは石を手にする前から、われらの夢を受け止めた。石がおまえを選 んだのだ。この宿命からは逃れられぬ。これを果たさぬかぎり、成都に帰ることは かなわぬぞ」
「こちらのことは、どうやら、なにもかも知っているようだな。なぜ、わたしは『 塔』にむかわねばならぬのだ」
「おまえは夢で見たはずだ。砂礫の王国、そこにある隠し村、見張りをつとめる塔 。もはや国はなく、そこにあるのは瓦礫の山でしかない。旅慣れた商人でさえ、そ こには夜になると王国の亡霊があらわれるとおそれて、近づかない場所となってい る。
五つの石は、いつも元にあった場所に戻りたがっているのだ。そこが、本来の居場 所であるからだ。
だからこそ、人を誘惑し、夢を見せるが、しかし、人は石が思っている以上に弱い 生きものなので、夢におどらされて、しまいには悲惨な終わりをむかえる。
おまえたちは、うまく石と縁を切ったつもりかもしれぬが、ひとたびあれを持ったが最後、石はおまえたちを追いかけつづけるだろう」
「粘着質な気質の石のようだ」
「そのとおりだ。なぜだか人は、あの石に誘惑されると、すぐにまどわされて、願 いをかけてしまう。しかし、おまえは、夢をすべて見たあとでも、なお石を使おうとしなかった。
石は、力の強いものを欲している。誘惑に心を曲げない、はがねのようなこころをもつ者を欲しているのだ」
「誉めてくれているようでうれしいが、断ったならどうなる」
「いいや、おまえは、塔にむかわねばならなくなるだろう。石は五つあるが、もともとひとつのもの。つねに互いに呼び合っているので、ひとつ持っていれば、石は自然とおまえのもとにあつまってくるであろう」
「おまえは何者だ」
「見届ける者。先刻も言ったが、名はない。石をあつめ、塔へむかうのだ」


※仙台、風がびゅうびゅう吹きまくっておりました。船も座礁するってものです。昨夜はひどい風雨だったので、船も座礁するというものです。いやはや、乗組員の方も、この状況では…(-_-;) ところで、はさみのは本日はフツーに起きたものの、昼を過ぎたあたりに我慢ができないほど眠くなり、横たわって、気づけば……ええ? 18時! 一日寝てたようなもの! すごく損した気分に包まれております…ああ。さて、明日はアップの日。できれば三連休だし、家に閉じこもっているわけだから、三作品ほどアップできたらなあ、などという大それた野望を持っていたりします。なんていっておきながら、いつもの二作品だったらごめんなさい。うう、目がパッチリしていて今日はきっと眠れないよう。HPの更新作業に集中します(/_;)