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「おまえの部屋に、だれかが忍び込んだ気配はなかった」
「そうだろうね。わたし自身、何度も目を覚ましているのに、だれかがいる気配はおぼえなかった。子龍、今度宿をとるときは、相部屋にしよう」
「それは状況を見てから考えさせてくれ。それよりも、どうする」
「どうするもこうするも、この石には、たしかに、なにかがあるのだろう。それも理屈では説明できないものだ。ここにある、ということは、昨日、われらをつけてきた者の正体が云々ではなくて、どうしてもわたしが持っていなければならない物だからこそ、ここにある、ということではなかろうか」
「なぜ」
「塔に向かう者だからだ。そもそも始めからおかしかった。どうしてこうも、現実に塔があるのだと、自分に確信があるのか、それが不思議でならない。でも、西にいけば、かならずある」
「おまえの夢の話では、村は隠されたもので、近づくことは難しそうだが」
「ああ。それでも行かねばならないよ。夢は途中で途切れてしまってね、五つの石が発見されたという報告を聞いた王は、たいへん珍しいから、これは売れるというので、大喜びした。だが、そこで目が完全に醒めてしまったのだ。
子龍、塔は、どう見ても漢帝国の領域にあるものではない。もっと長城よりも、さらに西にある、異邦の地の彼方だ」
「それでも、なぜという感がぬぐえぬ。どうしておまえが行かねばならぬのだ」
「わからないよ。しかしこうして白羽の矢が立った以上は、下手に抗わず、状況にまかせたほうが、かえっていいのだ」
「それは、おまえの近所にいたとかいう、仙人の教えか」
「うむ。成都に戻って、なにもなかったことにするのもひとつの手だが、どうする」
「どうもこうも。おまえは左将軍府の要だろう。いわば重鎮ではないか。そういう人間が、わけのわからぬ怪異に振り回され、危険な西域への旅に向かわねばならぬ理由がわからぬ。俺は反対だ。
おまえが塔と関わりがあるというのならば、多少はわかるが、西域には知り合いもいなかろう。ならば、おまえでなくてもいいはずだ。どうしても塔に行かねばならぬというのなら、だれか代理を立てたらいい。
そうだ、公琰や趙直。あいつらなら、こういったわけの分からぬことに詳しいのではないか」
「たしかにそうだけれど……おや? この宿屋にも、西域の商人が泊まっているのだな。あの奥の席にいる男だよ。なぜこっちを熱心に見ているのだろう」
「火のように赤い髪をしている男だな。こちら、というより、おまえの手にしてる石を見ているのだ」
「昨日、つけてきた者だろうか」
「いいや、気配がまったくちがう。だが妙だな。声をかけてくるので、おまえはそこで待っていろ」
「その石を、ほかに持っている人間を知っているそうだ」
「本当か? どこにいる?」
「陽平から脇に逸れたところに、ちいさな集落がある。そこで同じものを見たという。以前に道に迷って、そこに入ったときに、同じ石を見て、見事なものだったから譲ってもらおうとしたが、どうしても駄目だったそうだ」
「では、これを代わりに譲ろうか……おや」
「さっきまでいたのだが、いないな。すぐに席を立ったのか」
「変だな」
「ああ」
「矛盾している。どうしても欲しかったという石と、同じものをわたしが持っているというのに、あの男は、どうしてこれは欲しがらなかったのか。傷がついていると、あの席から見えたのだろうか」
「どうするか、だな。また捨ててみるか」
「いきなりズバリときたな」
「昨日は、おまえが捨てたから、今日は俺が捨ててみよう。貸してみろ、ちょうどこの裏手が川だ。さすがに川から這い上がってくることはできまい」
※最近、フト気になったのですが、いわゆるはさみのが本編と呼んでいるものと、ずんだ、この両方を読んでいる人と、本編しか読んでいない人、ずんだしか読んでいない人、現在、この三つに流れが分かれているのかな(?_?)ということ。
なんだか前にも似たような疑問を持ったことがあって、たしか拍手で、『両方見ていますよー』と複数のご意見をいただいたような記憶があります。またか、と思ってやってください。
最近、カウンターの設定を変更し、とりあえずINDEXや更新履歴から入ってくる方については一日90名から100名強ということが判明しました。うち、ほぼ毎日通ってくださる方は約40名ほどかな。ここは定かじゃない。反響を寄せてくれる方のパターンとしては、拍手のみの方、拍手+メール、拍手+アンケート、アンケートのみ、とさまざまにあるようです。みなさまありがとうございます(^^♪
で、前々から気になっておりましたけれど、いわゆる趙孔というジャンルから来たお客様と、単純に三国志サーチなどから蜀ファンだからと定着してくださったかた、おおむね、この二パターンがうちのお客様の主流だと思うのですけれど、そうなると、『本編』の流れがいやだから『ずんだ』、あるいはほかの中篇や短編しか見てない、という人もいるのかな?
いや、全部見てくださいなどと、ものすごい要求はしませんし、路線変更もしませんが、アップの方法として、ずんだに偏ったり、本編に偏ったりだと、バランスがどうかな、と。
リクエストに『ずんだ』関連が多いのは、リクエストしやすいためか、それともこうした傾向が進みつつあるからか? うーん、臨時アンケートをとってみようかしらん。思案中のはさみのでありました(-_-;)
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