● こうせいニッキ●
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2006年9月23日(土)
実験連載 塔 16
「おはよう。やあ、もう食事ができているのか。いい匂いだ。今朝は出発する者が多いようだな。どの卓もにぎやかなのは、たいへんよろしい」
「なんだ、やけに目が赤いな」
「わたしはうなされていなかったか? 夜中に何度も目が覚めてしまったのだ」
「となりの部屋からは、なにも聞こえなかったが、どうした、具合でも悪くしたのではなかろうな」
「夢を見たのだよ。とても長い夢だった。一冊の本を最初から最後まで、じっくり読みふけったような感じだよ。しかもその本ときたら、内容が悲壮なものなので、何度も目が覚めてしまったのだ。はっきりとはおぼえていないのだけれど、またあの塔が出てくるのだ」
「また塔か。で、じいさんも出てきたのか」
「ああ。食事が来たようだな。食べながら聞いてくれ。
切り立った崖を掘って作った奇妙な家のならぶ砂地のなかに、そこだけまるで敷布をしいたように青々とした草の生えている場所がある。その中央に塔があるのだ。
塔の役目は、その村に住まう坑夫たちが逃げないように監視するものだったのだ。
その村は、ちいさな西の国の隠し村で、そこからは、たいへん高価な石が採れる。村を支配しているのは王の一族の者なのだが、その国は、ある大きな国に支配を受けていて、毎年、貢納金をおさめねばならない。
貢納金を払えない場合は、王の一族から子供を奴隷として捧げねばならないのだ。
だから貢納金を必死にあつめようとするのだが、その国には、大国より派遣されている将軍らがいて、あつめている金を、いつも掠め取ろうとする。
そのため、王の一族は、かれらから金を守るために、その村の存在自体を隠しているのだ。
村で石を掘る作業はとても危険で、坑夫たちはいつも逃げ出そうとする。しかし逃げ出されてしまうと、村の存在がばれてしまうので、塔は逃亡者を見つけると、すぐに兵士たちを派遣して、これを捕らえて、たいがいは殺してしまう。
坑夫として選ばれる者のたいがいが、罪人であったり、騙されて連れてこられた者や、拉致された旅人などだ。生活は劣悪そのもので、人間のするものではない」
「おまえの最初見ていた『塔』の印象とは、だいぶちがうものだな」
「そうだよ。そのことも衝撃だ。あんなに血なまぐさい光景を夢で見ることになろうとは。で、つづきがある」
「どんな」
「あるとき、切り立った崖のなかから、五つの石が見つかるのだ。それは、まるで卵のような形をしたふしぎな薄桃色の石で、ほんものの卵のように、触れると温かい」
「昨日の石のようだな」
「そして、『今日の』石でもある。見たまえ」
「………なぜ? 昨日と同じ石ではないか。道端に置いてきたはずだぞ。あと拾いに戻ったのか?」
「まさか。ちゃんと捨てたさ。道端に転がしておいて、そのままにした。だが、目が覚めたら、枕元にこいつがあったのだ」


※まずは先にこうせいニッキだけをアップという、いつものパターン。本アップは夜になりそうですm(__)mおおまかなストーリーすらよく考えずに発進したこの物語、ようやく頭の中でしっかりラストまでお話が決まりました(^v^)本編やおばか企画ともちがう「ありえねぇ!」なお話になるやもしれませぬ。そのあたりの荒唐無稽さを楽しんでいただけたらと思います(*^^)v ところで三国志のアーケードゲームって生憎とプレイしたことがない…本当に三国志はいろんなきっかけがありますね(^^♪ それではまたお会いしましょう(^o^)丿
2006年9月24日(日)
実験連載 塔 17

おまえの部屋に、だれかが忍び込んだ気配はなかった」
「そうだろうね。わたし自身、何度も目を覚ましているのに、だれかがいる気配はおぼえなかった。子龍、今度宿をとるときは、相部屋にしよう」
「それは状況を見てから考えさせてくれ。それよりも、どうする」
「どうするもこうするも、この石には、たしかに、なにかがあるのだろう。それも理屈では説明できないものだ。ここにある、ということは、昨日、われらをつけてきた者の正体が云々ではなくて、どうしてもわたしが持っていなければならない物だからこそ、ここにある、ということではなかろうか」
「なぜ」
「塔に向かう者だからだ。そもそも始めからおかしかった。どうしてこうも、現実に塔があるのだと、自分に確信があるのか、それが不思議でならない。でも、西にいけば、かならずある」
「おまえの夢の話では、村は隠されたもので、近づくことは難しそうだが」
「ああ。それでも行かねばならないよ。夢は途中で途切れてしまってね、五つの石が発見されたという報告を聞いた王は、たいへん珍しいから、これは売れるというので、大喜びした。だが、そこで目が完全に醒めてしまったのだ。
子龍、塔は、どう見ても漢帝国の領域にあるものではない。もっと長城よりも、さらに西にある、異邦の地の彼方だ」
「それでも、なぜという感がぬぐえぬ。どうしておまえが行かねばならぬのだ」
「わからないよ。しかしこうして白羽の矢が立った以上は、下手に抗わず、状況にまかせたほうが、かえっていいのだ」
「それは、おまえの近所にいたとかいう、仙人の教えか」
「うむ。成都に戻って、なにもなかったことにするのもひとつの手だが、どうする」
「どうもこうも。おまえは左将軍府の要だろう。いわば重鎮ではないか。そういう人間が、わけのわからぬ怪異に振り回され、危険な西域への旅に向かわねばならぬ理由がわからぬ。俺は反対だ。
おまえが塔と関わりがあるというのならば、多少はわかるが、西域には知り合いもいなかろう。ならば、おまえでなくてもいいはずだ。どうしても塔に行かねばならぬというのなら、だれか代理を立てたらいい。
そうだ、公琰や趙直。あいつらなら、こういったわけの分からぬことに詳しいのではないか」
「たしかにそうだけれど……おや? この宿屋にも、西域の商人が泊まっているのだな。あの奥の席にいる男だよ。なぜこっちを熱心に見ているのだろう」
「火のように赤い髪をしている男だな。こちら、というより、おまえの手にしてる石を見ているのだ」
「昨日、つけてきた者だろうか」
「いいや、気配がまったくちがう。だが妙だな。声をかけてくるので、おまえはそこで待っていろ」

「その石を、ほかに持っている人間を知っているそうだ」
「本当か? どこにいる?」
「陽平から脇に逸れたところに、ちいさな集落がある。そこで同じものを見たという。以前に道に迷って、そこに入ったときに、同じ石を見て、見事なものだったから譲ってもらおうとしたが、どうしても駄目だったそうだ」
「では、これを代わりに譲ろうか……おや」
「さっきまでいたのだが、いないな。すぐに席を立ったのか」
「変だな」
「ああ」
「矛盾している。どうしても欲しかったという石と、同じものをわたしが持っているというのに、あの男は、どうしてこれは欲しがらなかったのか。傷がついていると、あの席から見えたのだろうか」
「どうするか、だな。また捨ててみるか」
「いきなりズバリときたな」
「昨日は、おまえが捨てたから、今日は俺が捨ててみよう。貸してみろ、ちょうどこの裏手が川だ。さすがに川から這い上がってくることはできまい」


※最近、フト気になったのですが、いわゆるはさみのが本編と呼んでいるものと、ずんだ、この両方を読んでいる人と、本編しか読んでいない人、ずんだしか読んでいない人、現在、この三つに流れが分かれているのかな(?_?)ということ。
なんだか前にも似たような疑問を持ったことがあって、たしか拍手で、『両方見ていますよー』と複数のご意見をいただいたような記憶があります。またか、と思ってやってください。
最近、カウンターの設定を変更し、とりあえずINDEXや更新履歴から入ってくる方については一日90名から100名強ということが判明しました。うち、ほぼ毎日通ってくださる方は約40名ほどかな。ここは定かじゃない。反響を寄せてくれる方のパターンとしては、拍手のみの方、拍手+メール、拍手+アンケート、アンケートのみ、とさまざまにあるようです。みなさまありがとうございます(^^♪
で、前々から気になっておりましたけれど、いわゆる趙孔というジャンルから来たお客様と、単純に三国志サーチなどから蜀ファンだからと定着してくださったかた、おおむね、この二パターンがうちのお客様の主流だと思うのですけれど、そうなると、『本編』の流れがいやだから『ずんだ』、あるいはほかの中篇や短編しか見てない、という人もいるのかな?
いや、全部見てくださいなどと、ものすごい要求はしませんし、路線変更もしませんが、アップの方法として、ずんだに偏ったり、本編に偏ったりだと、バランスがどうかな、と。
リクエストに『ずんだ』関連が多いのは、リクエストしやすいためか、それともこうした傾向が進みつつあるからか? うーん、臨時アンケートをとってみようかしらん。思案中のはさみのでありました(-_-;)

2006年9月25日(月)
実験連載 塔 18

「……………」
「……………なにか喋れ」
「ずばり言う。怖くて、なにも触れたくない」
「夢は見たのか」
「ああ、またあの塔だった。話は、以前の夢のつづきなのだ。この石は……ええい、なぜ戻ってくる? たしかに川に捨てたはず!」
「触れているではないか」
「聞きたがったのは、あなただろう。川に投げ落としたのは、わたしもあなたも、たしかに見た。だが、なぜこれが、また戻ってきているのだ? しかも、またもや、わたしの枕元に鎮座ましましていたぞ。
子龍、あの時、手品をしたのではないよな?」
「は?」
「いや、だから、じつは石を投げ落とすフリをして、袖口にすばやく石を隠し、石にそっくりな、そう、あの場合、卓の上にあった徳利のひとつを投げたのだ」
「ばか。俺がそんなことをする意味が、どこにある」
「旅の解放感から、ちょっと遊びたくなったのかもしれないかな、と」
「ない。ありえない。で、おまえが寝ているあいだに、俺が枕元に石を戻しておいて、そしていま、蒼ざめた顔をしているのを見て、楽しんでいるとでもいうのか」
「すまない。あなたはそんなに意地悪ではないな」
「わかったなら、よし」
「いま、危うかったかな? 長年の友情が壊れるところだった?」
「うむ、すこし危なかったかもしれん」
「いかんな。旅はたしかに気分を解放してくれるが、あまりに野放図になりすぎるのは危険だ。しかし、この石は、どうやってわたしのところに戻ってきたのだろう。この石、やはり生きていて、じつは川をせっせと下って、陽平の手前でわれらと合流したのではあるまいな」
「気味の悪いことを」
「夢の話のつづきを聞けば、すこし納得できるぞ。五つの石が発掘されたところまでは、話しをしたな? この石を売れば、貢納金の準備ができると、報告を受けた王は喜んで、慎重に石を村から、王の居城まで運ばせたのだ。
ところが運悪く、その一行が、盗賊に襲われてしまい、石は奪われてしまった。
王はもちろん、この盗賊たちを探させたが、見つからず、石も姿を現すことがなかった。
そのため、貢納金が準備できないことになってしまい、王は、自分の子を差し出さねばならなくなったのだ。人質に取られる、というだけではない。王子を待ち受けている運命は、暗いものであることは、王は知っていた。
それまで、差し出された王子たちは、たいがいが悲惨にも宦官にされてしまう。王女であれば後宮に閉じ込められ、生涯を終えるのだ」
「いやな話だな」
「しかし現実として、わが帝室は、戎や蛮と蔑みつづけた近隣の国々に対し、そうした仕打ちを、長きにわたって平然としてきたのだよ」
「うん? おまえの夢の中の国、それは、漢の属国なのか」
「たぶん。夢でちらりと、宋主国より派遣されたという将軍の名前が出てきたのだが、漢名だったから。でも、聞いたことのない男の名前だった。史書にも残らない男だったのだろう」
「待て、おまえの見ている夢というのは、現実にある国の、過去ということなのか?」
「じつは確証はないのだが、なぜだかそうだろうと思えるのだ。この石がそう訴えているのかな。夢に登場するひとびとの生活ぶりからして、百年は昔の話だと思うのだが」


※うわあ、丹波哲郎が亡くなったとは……かなりショック。若い頃の丹波哲郎はすごく格好よかったんですよ。晩年はお茶目さんでしたけれど。やっぱり印象に強いのは映画『砂の器』かなあ…最近の中居君のほうより、原作に忠実かつテーマが深かった作品。後半は泣きっぱなしでした。追悼作品で放映しないかな。むずかしいかしら。謹んでお悔やみ申し上げます…(/_;)
ところで人物別アンケートにコメントつきで一票入りましたヽ(^。^)ノが、これは蒋琬でよろしいのでしょうか。そのほかの2票の内容も「珪麗1、姜維1」でいいのかな?さてはて、明日は本アップの日でありますが、『歳華春』最終回スペシャルであります。ぜひに遊びにいらしてくださいませね(^^ゞ

2006年9月26日(火)
実験連載 塔 19

「さて、どこまで話したのだったか。そうそう、五つの石を王のもとへ運ぶ途中、盗賊がこれを掠め取った。そのため、貢納金を納められなくなった王は、王子を宗主国に差し出さねばならなくなり、国は悲しみにつつまれた。
そのことに責任を感じたのは、塔の管理人の男だった。それが、わたしが最初に夢で見た、塔から顔を出す、あの老人だ。老人は、王族の一員でもあったのだ。
老人は、自分たちの息子をあつめて、なんとしても石を取り戻すことにした。
ところが、同時に、ふしぎな噂が世間をにぎわしはじめた。大きな美しい、卵のような形をした石があるのだが、これを持っていると、どんな願いでも叶うというのだ」
「どんなものでも?」
「そう、どんなものでもだ。噂を聞いた老人は、これは盗まれた石のことにちがいないと確信した。そうして、息子たちに、噂を辿らせることにしたのだ」
「で、つきとめられたのか?」
「いいや、あにくと、そこで目が醒めて、いやな予感がしてふと見たら、この石が、わたしに『ご機嫌いかが』とでも言いたそうに、枕元にいた、と」
「やめろ、その石を生き物のように言うのは。ただでさえ気味が悪いのに!」
「ほーお、天下の趙子龍を怯えさせるとは、たいしたものだな。しかし、わたしは『この石と縁を切りたい』と願ったのに、願いがかなっていないから、きっと『どんな願いも叶う』というのは、でまかせにちがいない」
「そして、また尾行もつづいているな。くそっ、気配だけは、はっきりわかるが、姿がどうして分からぬのだ! もうすぐ陽平だぞ。ずっとついてくるつもりか? どうする? このまま無視をして、まっすぐ陽平の関を越えて天水に入るか、それとも、俺が商人から聞いた、その石に似た石があるという村に立ち寄るか?」
「さあて、どうするもこうするも、そうするしかなさそうじゃないかい? 見るがいい」
「なんだ、あれは。土砂崩れか?」
「そうらしいな」
「……冗談だろう。そうか、昨日、急に夜中に豪雨があった。あれのせいか」
「石が雨を呼んだのかも」
「やめろ、なんでもかんでも石に結びつけるのは! ちがう。単に天気が崩れただけだ! この土砂崩れも偶然にちがいない!」
「ほら、わざわざ土砂を掻き出すために兵卒が借り出されているよ。
ごくろうさま。やっぱり迂回しろって? だろうね、これを待っていたら、いつ関を越えられるかわかったものじゃない………ふうん、村は、やはりあるのか。そこの脇を抜けていくと、険しいけれど、道はあるって? その途中に村がある、と。ほらね」
「ほらね、じゃない。よし、村に行くとしても、だからといって、何をするわけでもない。ただ通り過ぎて、余裕があったら石があるかどうかを確かめる。というよりも、その石を村に押し付けて行こう。それがいい」
「あなたにしては、ずいぶん消極的ではないか。意外な弱点を発見したな。そんなにこれが嫌か」
「俺は理屈がまったく通じないものが、いちばん嫌いなのだ。いまは、その石がそれだ」
「はいはい、わかったよ。そこまで不機嫌になられると、こちらとしてもいい気はしない。村に行ったなら、これを押し付けて、そしてわれらは気持ちよく北ヘ向かおうではないか。そうして普通の、のんびりした旅を取り戻すのだ」


※早いものでもう九月も残すところ四日となりましたねー。早い…いまの仕事の契約も11月末までなので、あと二ヶ月というところ。
はさみの好みの、やたら忙しく、いろいろ頼まれて電話もじゃんじゃん架かってくるところです。仕事が終わったあとの達成感がとっても気持ちがいい(^。^) やっぱり、おなじ働くなら、『働いたー!』という充実感がなくっちゃ。
さーて、残り二ヶ月を切ったら次を探さねばなりませんが、どんなところがいいかなあ。いまのうちにパソのスキルを伸ばしつつ、あれこれ探してみようと思います。本日はまったくの私信でありました(^^ゞ 本日はアップ分を楽しんでいただけると幸いです~。

2006年9月27日(水)
実験連載 塔 20
「子龍」
「ああ。いきなり終着点か?」
「似ては……いるな。煉瓦を積み重ねて、そのうえに土を塗っただけの簡素な円筒のような塔。頂上に近づけば近づくほどに細くなる。塔の四方にある見張り用の窓。
しかし、夢で見た光景は、荒地のなかだった。こんなに豊かな山水に囲まれていなかったよ」
「しかし面妖な。漢族の村に、こんな異国の塔が、ひとつだけぽつんとあるとは」
「襄陽にいたころに、徐兄たちと一緒に、羌族の集落をおとずれたことがある。そこにある塔に作りが似ているな。
羌族の集落は見たことがあるかい。まさに土でできた要塞のようなのだよ。簡素で飾り気のなにもない、頑丈な砂色の土壁に石畳の道。そうだな、村がまるでひとつの城のようであった。
全体としてみて、漢族のそれとちがって、色が単調だが、そこにふしぎな美しさがある。集落にはかならず塔があって、そこは、実用的にも宗教的にも、重要な意味を持っているのだ。
わたしたちが訪れた集落は、漢族の旅人になれていて、排他的な様子もなかったが、やはり、あれこれ探られるのを嫌がった。
あの塔は煙突にも似ていてね、その吐き出し口が十字だったり、星だったりするのだ。変わっているだろう。宗教的にどういう意味をもっているのか、さぐろうとしたけれど、嫌がられたので断念したことがああるよ。
羌族の移住者が、故郷をなつかしんで、塔だけをここに建てたのかな」
「村人も、混血が多いようだな。こんな山中で、羌族と漢族の交流が深いというのは意外だ」
「これは偏見かもしれないけれど、ふしぎと混血の者というのは容姿が美しい者が多いな。馬平西将軍も、あまり見ないような、華やかな風貌をしておる。
ここにも、こんな山深いところに置いておくのがなにやら惜しいほどに、垢抜けた雰囲気をもっている者さえいるじゃないか。ここだったら、あんまりわたしの容姿も浮かないかもな」
「おまえは、自分の容姿のことになると、とたんにうしろ向きになるな。目鼻立ちでは、ここの連中はたしかに、目立っているが、おまえはどんな山の中にいようと目立つやつだよ。
目立つやつは、自分で隠そう、隠そうと思っても、人の目につく。つまりは、やはり同じように、あれこれとくだらぬことを言ってくるやつもいるだろう、ということだ。おまえはそういう宿業に生まれたのだ」
「いやな宿業だ。好きでこんな姿に生まれたのではないのに。あなたや馬平西将軍のように、いかにも男らしい風貌に生まれることができたなら、どんなによかっただろうと思うよ」
「愚痴が増えてきたのは疲れてきた証左だな。あまり気が進まないが、ここから先の道は長そうだし、途中で宿をとるのもむずかしそうだ。天候もあまりよくないし、ここで宿をとることにしよう」
「そうだな。あの塔に近づいてみたいし、この石に似たものが本当にあるかどうかを知りたい」
「山深い田舎村だと想像していたが、そうでもないな。ほら、あんなに立派な宿屋がある。関が通れないためか、泊り客も多いようだぞ」
「相部屋になるかもな」
「…………」
「なぜ黙る」
「べつに」


※さてはて、今日はすごい雨でありました。お昼から止んでくれてよかったです。秋ももう終わりですが、どうやら週末は晴れそうな気配。博物館にでも行って来ようかなーと思っています。愉快なネタが拾えますように(^^♪その前に金曜日のアップに向けてがんばります。遊びにいらしてくださいねー。