● こうせいニッキ●
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2006年9月18日(月)
実験連載 塔 11

「俺は、おまえを殴ったことはないだろう」
「『気つけ』の意味で何度かあるぞ」
「あれは例外だ。ともかく、そこまで警戒するなら、かえっておもしろい。なにを言いたい。言ってみろ」
「なんだろう、その挑戦的な笑みは。怖いぞ、ふつうに戻れ」
「ほら、戻したぞ。言ってみろ」
「……それなら言うが、これでヘソを曲げて成都に帰ったりしないな?」
「言葉による」
「なんだか、言いたくなくなってきたな」
「でも、おまえは言うだろう」
「そうなのだ。なんだか言わないといけない気がする。あの夫婦を見て、あなたは、自分の両親をどうしても思い出したのだろう。
あなたの両親と、そして兄上たちのことを。ちがうかな」
「そうだな。思い出したな」
「子龍、とても無責任に聞こえてしまったら申し訳ないのだが、そんなふうに、自分を過去に縛りつけるのはやめないか。
何度も言っているじゃないか。あなたは、わたしからすれば、びっくりするくらい、自分を低い位置に持っていこうとする、悪い癖がある。
まるで、そうすることで、自分を罰しているみたいだ。本当は、それではいけないと、ちゃんとわかっているのだろう」
「……………」
「あなたがいま抱えている悩みや苦しみは、たしかにあなたの実家の環境や生い立ちに起因しているのかもしれない。けれど、それは、あなたのせいではないのだよ。
そんなに苦しまなくてもいい。あなたは、なにも悪くないのだから」
「悪くないということはなかろう」
「なぜ」
「本来ならば孝をつくさねばならぬ親兄弟を憎み、そのうえ捨てたというのに、それが許されるだろうか」
「それを言うなら、わたしも一緒だよ。いや、わたしのほうが悪い。家長として育てられながら、長兄と対立し、そのうえ、本来ならばしなければならない『血を残す』ことをしないでいる。
おそらく、わたしは、自分の血を残すことは、これから先もないだろう。そういうわたしでさえも、こうして図々しくも元気に生きている。
自分を責めるくらいなら、わたしを軽蔑するがいい」


※アンケートが面白いことになっておりまして、趙雲がめずらしく票を集めておりますねー。いまのところトップ。そして昨日の休昭についてご反響いただきまして、みなさまありがとうございます。
けっかはっぴょうの後編が遅くなっていますね、申し訳ありません。次回……できるかな? がんばります。塔のほうも、そろそろ本題に入ります。そう、まだOPです。

2006年9月19日(火)
実験連載 塔 12

「ずいぶんと自虐的な励ましだな。俺がおまえを軽蔑したりできると思うか」
「していいぞ。さあ、どんどんしたまえ」
「戯言を。おまえは、ほんとうに、俺がいままで会ったなかで、いちばん変なやつだ」
「それは誉めことばだな」
「変なやつと言われることが、誉めことばか?」
「いちばん変ということは、いちばん特別に見えている、ということではないか。いまのは、あえていい意味で受け取る。はは、なんだかうれしくなってきた」
「能天気なやつだな」
「いまのは照れ隠しだな」
「なにを言っても、上向きに考えるおまえがすごいと、心から思う」
「おやおや、賛辞をありがとう。さて、あなたの気持ちも、すこし上向いたかな。
話ついでに言うけれど、あなたが公孫瓚のもとから去ったあと、ずっと常山真定の家に留まったとして、それで、あなたは満足したかな。むしろ、いまよりずっと後悔しているかもしれないぞ」
「なぜ。主公の家臣に加えていただけなかったからか」
「それもあるけれど、常山真定に引きこもっていたら、わたしという人間に会うことがないままの生涯になる可能性があったからだ。
なんという不幸だろう。想像もできぬ」
「すまん。悪く取らないで欲しいが、俺はあっさりと想像できてしまう。俺は、やっぱりどこからか妻をもらって、子どもを儲けて、長兄の手伝いをしながら、廃れかけている家門をなんとかしようと、躍起になっていただろう」
「うむ、いまのは上向きに考えるのはむずかしいな。いささか傷ついた」
「だから、うまく言えないが、なんというかな、つまらない毎日だから、簡単に想像がついてしまうのだ。
俺は楽しい想像はできない。おまえは逆に、つまらない想像はできないだろう」
「うむ、言われてみれば、わたしの想像はいつも楽しい。新しい発見だ。あなたはいつも、わたしの知らないわたしの美点を見つけてくれる」
「また、よせというのに」
「成都で言えないから、いま言うのさ。やはり旅はいいな。のびのびできるから」
「まったく。しかし、新野にいたときが嘘のようだな。まさかおまえが、これほどに俺になつくとは、夢にも思っていなかった」
「なつくだなんて、どうぶつみたいに」
「不貞腐れるなというのに。ほら、これをやろう」

※12回目にして、重要アイテムちょっぴり登場。セリフだけ、というのは、話が長くなりすぎる面もあるな、となんとなく掴めて参りました。キリ番リクエストはご申告がなかった様子ですねー。これは、いまある連載を頑張って仕上げなさいということかな。ハイ、がんばります。
で、あれ? 明日もアップの日ですね。明日こそ早めにできますように。明日も二本立てを目指してがんばります(^^ゞ みなさまぜひぜひ遊びにいらしてくださいましね♪

2006年9月20日(水)
実験連載 塔 13

「なんだ、唐突に。これは、石? 薄桃色の玉石ではないか。めずらしいな」
「葬式を手伝った礼にもらった」
「へえ、卵のような形をしている。こんなに美しいのに、面白いな、なにか細工を施そうとした痕があるが、途中でやめたらしい。
この亀裂のような傷さえなかったら、もっとよかったのに。
でも、細工を途中でやめた気持ちもわかる。たしかに、これだけきれいな石だもの。下手に手を加えないほうがいい。
それにしても、これは高いぞ。手伝っただけだというのに、なぜもらえたのだ」
「死んだ老夫婦は、たがいに手を握り合って死んでいた。あまり時間が経つと硬直がひどくなり、二人を離すことがむずかしくなると思ったので、おれが手を分けたのだが、その掌から、これがでてきた。
見るからに高価そうだし、遠縁の遠縁という男に、事情を話して、渡そうとしたら、断られたのだ」
「へえ、なぜ? 大切なものだからこそ、石を握りしめていたのではないのかな」
「そこがよくわからん。遠縁の遠縁が言うには、その石はただの飾り物ではなくて、なにかの証だったそうなんだ。奥方がとても大切にしていたものだという。
ならば、なおさら、形見になるだろうと思ったのだが、どうしてもいやだというのだ。この石は、奥方がどこからか貰ってきて、いつも肌身離さず持っていたものらしい。
そのせいかはわからないが、いろいろと奇妙なことがあって、家にのこすと不吉な気がするし、かといって一緒に墓に入れるのもどうかと思うので、持って行って、適当なところで捨ててくれないかというのだ。けれど、捨てるのも惜しい。
おまえなら、これを持っていても、なぜだか問題ない気がする」
「気になる話だな。この石に、奇妙なことって?」
「触ってみて、おかしいと思わないか。その石には、熱がある。まるで本物の卵のようだから、嫌なのだと」
「ああ、もしかして、葬式のときにきいた、あの話かな。
奥方が、行き倒れになりかけていた旅の者に親切にしてやったら、そのお礼にお守りをもらった。そのお守りの効果があったから、夫は戻ってきたが、しかし家門は傾いてしまったうえに、家も絶えてしまったわけだから、あまりお守りの意味はなかったようだと。
そういえば、奥方は、旅に出たいとずっと言っていたそうだよ。なぜだろうね」
「さあ。それは聞いたことがなかったな。
で、嫌な感じはするか? ならば、あの男が言っていたとおり、どこかで適当に捨てるが」
「これに、嫌な感じはしないけれど、なぜだろう、たしかに掌にずっと持っていたからというだけの温かさではないな。ほんとうに卵かもしれないぞ」
「なにが生まれるというのだ」
「さて、わからないけれど、すこし持ってみよう。危険な感覚が兆したら、すぐに捨てればいいだろう。
面白いものをもらったな。これだから、旅はおもしろい」
「おまえ、不安とかないのか」
「なぜ? あなたが同行しているのに不安の要素がどこにある」
「……………もういい」


※なかなか計画どおりとは難しいものですねぇ…人員不足のため、いまの職場はともかくとんでもない忙しさですが、まあ、それはそれで楽しいです。忙しいの大好き。短期とはいえ、いい仕事に就けたと思いますが、体がついていってないこの厳しい現実。
すみません、今日に二本立てできなかった分、どこかでボリュームアップしたいところです。どこかでサプライズを…作れるかな? どうぞお楽しみにー。

2006年9月21日(木)
実験連載 塔 14

「山道を行ってもいいが、かえって日数がかかる。ここは山を避けて街道沿いにまずは梓潼、つづいて葭萌からさらに北上し、白水、陽平、ふたつの関を越えたあとに、武都に向かい、つづいて天水だ。涼州を抜けて、そのあとは、嚨西。そこからさらに、長城を越えて、西、か」
「ため息なんぞ、なぜつくのだ」
「地名をならべてみただけで、気が重くなってきた。あわてて出てきてしまったから、ちゃんとした遺言も残せていない」
「わたしも遺言なんて残していないよ。だって、ちゃんと生きて帰るつもりだからな」
「あのな、簡単に言うなよ。西に向かうということは、魏の領域を抜けていくということだぞ。それに、さすがに俺も、天水から西のほうは、まったく勝手がわからない。
大回りにはなるが、馬平西将軍のところに寄って、それから涼州の案内役をだれかつけてもらったほうがいいのではないか」
「そんなことをしていたら、時間ばかりが過ぎてしまうよ。あなたは気が重いといったけれど、わたしは、なんだか地名を並べるだけでもわくわくするな。馬援の気持ちも、こんなふうであったのだろうか。ともかく、嚨西にだけでもいってみたい。行ったことがないのだ」
「行ってみるのもかまわぬが、敵地だぞ。それにあそこは羌族が多いところだから、漢族である俺たちに、あまりよい感情はないだろう。慎重にならねばならぬ」
「嚨西といえば、馬平西将軍の父である馬騰の故郷であったな。なにか土産をみつくろうことにしよう。喜ぶであろうか」
「どうかな、はっきりした男だから、過去を思い出したくない、余計なことをするなと言うのではないかな」
「ああ、そうか。では従弟のほうに土産を贈ろう。ところで子龍、わたしのいまの姿は、他者から見て、どんなふうに見えるかな」
「やたらと背が高いことをのぞけば、身なりも地味で、旅なれたふうの、どこにでもいるような旅人だ。俺のほうはどうだ」
「おなじく、いかにも武人らしい雰囲気をもった、しかし地味な旅人の用心棒。とはいえ、金があるようには見えない。わたしもそういうふうに見えるだろうな」
「そうだな。金があるふうではない」
「では、なぜ、あとを尾行されているのだろう。いつからだ?」
「あの宿屋を出たあとからだ。おまえに気づかれるくらいだ。気配を隠す気はまったくないらしい。威嚇しているつもりか」
「となると、刺客かな。こちらの不安を、日々、じわりじわりと煽ってから、満足したあとに、ぐさり、ととどめをさそうとする、陰湿な性格の刺客」
「どうかな。気配は、はっきりとわかるが、殺気は感じられない」
「捕まえて話を聞くか?」
「いいや、しばらく様子を見よう。俺たちの正体を知っているうえで、ついてきているのなら、呉か魏の細作だろう。めんどうな。
つかまえて、夢の話を聞かせるべきだろうか。俺たちの目的が、あきれたことに、ほんとうにあるのだかどうかわからない『塔』探しなどと知ったら、あきれて引き返すかもしれぬ」
「ある。わたしが言うのだから、あるのだ」
「その自信はどこからくるのだ、まったく……ともかく、梓潼まで様子を見よう。もし、ついてくるのが魏の連中だったら、俺たちの先回りして、俺たちが魏の領内に入ったとたんに、捕虜にする作戦を取ろうと考えるかもしれない。
だが、相手が何者かわからないのだから、下手に動かないほうがよかろう」


※アンケートへのご協力、みなさまありがとうございます(*^^)v 趙雲がトップだなあとこのあいだ申し上げましたところ、孔明が一気に、いやもうあっさりと抜き去りました。そして、キツネや文偉にもいつのまにか……名前のみ登場なのにすごいぞ(^_^;)
アンケートをチェックするのが楽しくて仕方ありません。重ねてみなさま、多謝! であります(^v^) 次回アップ時はアンケート集計の後編がつづきます。充実のおばか企画になる…かな? 土曜日です。どうぞ遊びにいらして下さいませね(^^ゞ

2006年9月22日(金)
実験連載 塔 15

「以前に視察に寄った時は、公道しか通れなかったが、こうして歩きで地元の民の歩く道をいくのも楽しいな」
「このあたりの賑わいというのは、あまり成都と変わらないな。雲南から北上してくる商人も、成都からつぎに移動するのは、この街であろうし」
「知った顔に会う確率がひくいところが、成都とちがってよいところだ」
「いったん、ここで宿をとり、つづいて一気に葭萌へ行こう。初日に時間をとられたから、馬を雇うべきだ。どうだ」
「なるべくなら歩きにこだわりたいところだが、そうだな、仕方ない。ところで、まだついてくるな」
「一定距離をぴったりと保ってついてくる。かなり訓練を受けた者だとわかるが、しかし」
「しかし?」
「いや、変なことを聞いていいか? 気配ははっきりわかるし、どこにいるのかもわかる。だが、どんな姿をしているか、見えるか?」

「…………」

「そうか、おまえにも見えないか」
「道々、おかしいなと、わたしも感じていた。人ではないのかもしれないな」
「おまえが言うのではなかったら、ふざけるなと言いたいところだが、妙に説得力があるな。人ではないというのならば、では、なんだ? もしや、あの宿屋の夫婦が、石を取り戻すために、ついてきているのではなかろうな」
「あなたにしては、想像豊かな答えだな。鬼(幽霊)ならば、夜になると力を得て、襲ってくる可能性がある。しかしちゃんと葬儀もして、埋葬もしたのに、鬼になってしまうとは面妖な」
「どこぞの道士に頼んで、祓ってもらうか」
「いいや、このわたしに付いてきてしまうくらいのものだから、相当に力が強いものだろう」
「やけに自信があるのだな」
「そうさ。幼少のころより、わたしは身に纏う気がとても強いから、なまじの雑鬼は近づけないと、よく言われた。実際に、物の怪や鬼に悩まされたことはないぞ。よほどの力のある鬼か妖怪でないと、わたしは弾いてしまうのだと」
「だれが言った」
「近所の仙人」
「なんだって?」
「近所の仙人さ。あなたの近所に、仙人はいなかったのか?」
「いない。見たことない。ふつうは近所に仙人は住んでいない。さすが古都琅邪。おまえがホラを吹いてるとも思えぬし」
「ほんとうにいたのだよ。そういうわけで、ついてくる者の目的がこの石ならば、あとが面倒だ。これはここに置いておこう」
「おい、道端に置くな。蹴飛ばされるぞ」
「大丈夫。蹴飛ばされたら、そっちについて行くだろう。ともかく先は長いのだから、鬼に構ってはいられぬ。冷たいかもしれないが、こちらとしても、この石にさほどの執着があるわけではない。欲しい者にくれてやればよいさ」


※例の坂東氏の反論がMSNに掲載されておりましたね。やっぱりよくわからぬ(?_?)
たぶんモノを書いたことがある人なら、この人の癖に気づいたのではないでしょうか。
言葉や喩えの引き合いが強すぎる。そこでナチスやハンセン氏病の例を持ってくるかね。
歴史事実ですが、こういった衝撃的な例を出して、論点をたくみにずらしている。
記事でも物書きとしてどうか、と指摘してましたけれど、でもこのずらし方、ずいぶん技法が稚拙だなあ。はさみのが見破れるくらいだもの。みなさんも感じるのでは。『なんか違うぞ』と。
はさみのがともかく腹立たしく思うのは、この人類最大の悲劇ともいうべき歴史的事実を、自分のヘンテコ論理の『道具』に用いている点。
ペットに避妊手術をさせている人への脅迫か? ナチスのこの蛮行を知らなかった人で、なおかつペットに避妊手術を受けさせた方、この記事を読んで、ええ、どうしよう!と、凹むことはありませんし腹を立てることもありません。
モノ書きとしてのモラルのないヘンテコな人が、『論議を呼びたかった』と適当なことを言って、自分のヘンテコさを、言葉の技能でごまかそうとしているだけです。
これに同調できる人はいるのだろうか……ごまかされちゃいかんよ。でもって、避妊手術云々の以前に飼わなけりゃいいじゃん。自分の愛情の泉を涸らさないためってね、それで子猫を取り上げられて殺されている猫は、またすぐに妊娠しては、飼い主は子猫を殺しに海に向かうわけだ。
それをくりかえしているわけで、猫に子猫への哀悼があるわけじゃなし(あるはずもなし)、なんだ、この不毛な愛のカタチ。そっちのほうが、よっぽどホラーだろう。
猫に『人格』を見ようとしすぎてないか。
猫は猫だよ…悲しいけれど、その悲しさも含めて、ふつうはペットを愛するのではないかしらん。問題提起の根本からしてずれているので、論議が広がらず、『不愉快だ』『人格がおかしい』という感情論しか呼べないんです。論客としてはダメダメ。
日経は、なんのためにこれを掲載したのだろう。言葉の強さに引きずられて、『話題を呼べる!』とかん違いしたか。たしかに話題になったが、むしろ編集能力の程度の低さや読みの甘さをPRしたカタチになってしまったのでは? 現状ではそんな感じ。なんだか交通事故を目のまえで見てしまったときの、あのいやーな感じがあります。
ポリネシア政府はしっかり訴訟をすべし。仮にも文化人を名乗るなら、自分のことばの責任を負うべきであるし、言論弾圧かどうか、しっかりと司法の場で吟味してもらえばいい。
とはいえ、モノ書きを目指す一人としては、なんかやっちゃいそうなごまかし方だな、と反省した次第m(__)m
と、真面目な話をあとがきでするワタクシ。しかも長い。明日はアップの日です。どうぞ遊びにいらしてくださいませね(^o^)丿