● こうせいニッキ●
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2006年9月13日(水)
実験連載 塔 6

「おまえは、唄はうまいな」
「『唄は』とはなんだい、全般的になんでもうまい」
「嘘をつけ、嘘を。しかしいまの唄は、聞いたことがないな」
「公琰が旅先でおぼえてきたのを、教わったのだ。あれも喉自慢だからな。これで休昭に加わらせて笛を奏でさせると、なかなかのものなのだぞ。
欠点といえば、二人とも内気なので、よほど慣れた人間の前でないと、たがいのすばらしい芸を披露しないところだな。そうだ、こんど、身内だけでもよいから宴でもひらこうか。招かれない者がいじけるといけないから、ひみつにね」
「宴はかまわぬ。おまえの屋敷では目立つであろうから、俺の屋敷にでも集まればいいさ。それより、公琰が喉自慢だというのは初耳だ」
「声のよさ、というのは、上に立つものの必須条件だ。それにこの唄、どうだい、鳥肌が立っただろう。西方の異民族の、旅立つ者の無事を祈る唄だそうだが、漢族の唄にはない、独特の雰囲気があるとは思わないか」
「自分で鳥肌が立つかたずねるものかね」
「鳥肌が立っただろう」
「恥かしさで肌が粟立った」
「まーたまた、素直になりたまえ」
「わかったよ、鳥肌が立ったことにしておいてくれ。話が進まなくなる。それにしても、戦場でも思っていたが、おまえは咽喉が丈夫なのかな。ぜんぜん声が嗄れない。二里を歩いている間じゅう、ずっと唄っていただろう。おかげで旅人がいちいちこちらを振り返るので、かなり恥かしかったが」
「気にするな。旅の恥はかき捨て。ところで、祝すべき第一日も暮れようとしているのだが、宿屋はまだ見えないのかな」
「街外れにある大きな屋敷だが、街道から逸れた、ほら、そこの脇道を入って、まっすぐ行けばいい」
「へえ、ほんとうに、知らなければ向かわぬような道の先にあるのだな。このあたりは成都に近いせいか、いろいろ目が行き届いているので、野盗のたぐいも出ないし、郊外に宿を営むにはもってこいであろう。
あの、ちいさな細い煙が出ている家がそうかな」
「いや、あれはちがう。もっと大きくで、立派な屋敷だ。門構えも立派なら、竈も立派で、煙が見えるとしたら、あんなものではない。おや」
「どうした」
「あそこなのだが、なにかおかしいな」
「おや、たしかに赤い屋根は見えるが、うむ、おかしいな。あんなに木が生い茂って。ぜんぜん剪定していないようではないか。
子龍、最近、その宿に泊まったのはいつだ」
「三ヶ月前だ。そう昔ではなかろう」
「そのわりに、なんだか荒れているな。虫もひどい」
「門が開いているということは、だれかいるということかな。おまえはそこですこし待っていてくれ。俺が様子を見てくる」


※あたらしい会社に入ってそろそろ三週間が過ぎようとしております。仙台、一気に涼しくなったためか、みーんな病気。はさみのはお陰さまで元気です(*^^)v さてはて、いやー、アンケート、毎日楽しませていただいております。おもしろすぎますねー。明日のアップ準備を進めつつ、のほのほと嬉しくなっているはさみのでした。
明日も二本立てを目指しております(^^ゞどうぞ遊びにいらしてくださいませー。

2006年9月14日(木)
実験連載 塔 7
「どうだった?」
「奥で死んでいた。二人ともだ」
「盗賊か?」
「いいや、中はきれいなものだったよ。どうやら、病を得て、そのまま夫婦仲良く逝ってしまったらしい。しかも死んだのは、今日かもしれぬ。腐敗していない。親族が絶えてしまったため、二人が病になっても、おとずれて看病してくれるものもなく、そのまま逝ってしまったのだろうな」
「宿屋をしていたのであれば、商人かなにかが出入りしていなかったのだろうか」
「出入りはあったのだろう。そいつに聞かねばわからぬが、こういうことではないかな。俺が知っている夫婦というのは、頑として他人の世話になりたがらないところがあった。
もともとは財産家で、本来なら宿屋なんぞしなくても十分に食っていけたのに、あえて老いた身でそれをしていたのは、『寂しいから』などと言っていたがそうではなく、生活が苦しかったからなのではないかな。
どうやら、出入りの商人だか農家だかが置いていった野菜が、手を付けられていない状態で厨にあった。まだ新鮮なので、もしかしたら、今朝までは、片方は生きていたかもしれない」
「つまりなにかい。本来なら、身動きもむずかしい病気に夫婦して罹っていたのだが、他人の世話になりたくないあまり、ひたすら寝て休んでいた。
ぎりぎりまでふつうに振る舞っていたが、さすがに家の外の用事まではできなくて、こんなに屋敷は荒れてしまっている。で、今朝になり、とうとうお迎えが来た、と」
「まいったな。そのままにしておくわけにもいかぬ。途中の民家に戻って、事情を話して、二人の埋葬を手伝ってもらおう」
「親族がまったくいないのか? 祭祀はだれが中心で行うのだろう」
「このあたりの地主か、そうでなければ仕方ない、顔見知りの俺が、喪主の代わりを務めるさ」
「第一日目から波乱含みの幕開けだな。おや、子龍、向こうから、轍の音が聞こえてくるよ。ありがたい、家に帰る途中の農夫かな」
「いや、ちがうな。見ろ、女馬車が三つもうしろにくっついている。行商隊だ。あいつらも泊りに来たのだろう。
ちょうどいい。連中にも協力してもらって、今日は葬儀だ」
「嫌がるんじゃないか?」
「そこはそれ、おまえの得意の弁舌で説得してくれ。嫌だというのなら、せめて近所に訃報をつたえるくらいのことはしてもらおう」
「それはかまわぬが、しかし、子龍、大丈夫だろうか」
「弱気だな。どうした」
「いや、先頭の安車の御者を見たまえ。赤い髪をしているよ。かなり遠方からやってきた行商隊のようだ。ことばは通じるだろうか」

※「はまったきっかけアンケート」、僅差ですがやっぱりGAMEが多いですね。無双なのかな。趙雲でしか、しかも2しかクリアしていないというダメはさみの。そしていま、まだクリアしていない三国志Ⅹを仮想モードの登録武将で挑戦中。登録武将は羅乙女(ラ・ピュセル)羅射(ラ・イール)参虎(サントライユ)馬蛇(バタール)という、どこの暴走族だろうという布陣。いま、成都をめぐって馬超と対立中。ちなみに参謀は孔明と龐統、徐庶が全部揃ってます。どうしてクリアまでたどり着けずに飽きてしまうのかなー。今度こそ、目指せ、クリア!と、どうでもいい話でした。おそまつさまですm(__)m
2006年9月15日(金)
実験連載 塔 8

「どうだ」
「そちらは?」
「さっきの民家な、この家の、遠縁の遠縁だった。近所でもあったし、いまから、村の人間をあつめて葬儀をしてくれるそうだ。とりあえず、部屋数は多いから、ここに泊まってもらってかまわないと言ってくれたよ」
「そうか。しかし葬儀の準備であわただしくなるだろうな。眠れるだろうか」
「べつに急がねばならない旅でもあるまい。明日はゆっくり出立すればいいさ。ところで、そちらはどうであった」
「いやはや、困ったよ。とりあえずこちらの言葉がわかる男がいたのだが、これがひどい訛りで、文字も読めないときた。
身ぶり手ぶりなのだが、それが聞いてうんざりしたまえ、あの行商隊には、わたしが最初に交渉した男の、さらに通辞がいて、その通辞の、またさらに通辞がいる。そうして、行商隊の隊長に、やっと話が通じる、というふうなのだよ。
つまり、相手が目のまえにいるのに、伝令を三人はさんで、やっと話が出来る状態なのだ」
「それはご苦労だったな。で、どうすると言っていた?」
「いまから成都に向かうにしても、すでに門は閉まってしまっているし、それにかれらは、どうやらはじめて成都に来た者たちらしく、このあたりの勝手がさっぱりわからないというのだな。
この宿屋のことは、おなじ行商人仲間から聞いていて、ここを拠点に、成都の動向を見て、商売の進め方を測ろうとしていたものらしい」
「ふむ、まっとうな連中のようだな。なにを扱っている?」
「丈夫な麻の衣や、金銀の装飾品だな。武装した連中が用心棒で、女たちは、行商隊の家族ということだ。子供もいる」
「ちょっとした輜重隊のようだな。しかし、色鮮やかな連中だな。ひとり、ひとり、区別がつきやすくてよいが」
「髪が赤やら金やら濃い茶色やら、そのうえ、目の色まで玉石のようだ。大秦国にむかう道の途中の、海のように大きな湖のほとりに、かれらの故郷があるらしい。
発音がむずかしくて、聞き取るのがむずかしかったが、たぶん安息国のどこかの街なのだと思う」
「名前だけは聞いたことがあるな。行商隊となれば、験をかついで、不幸のあった家に泊まるのを嫌がるのではないか?」
「ご指摘のとおりだ。やはり嫌がったし、これから葬儀をおこなうというのに、かれらがいては、村人たちも困るだろう。とはいえ、いまからでは成都の門は閉まってしまう。
そこで、下西門の厳将軍に一筆したためて、かれらのために門をあけて欲しいと書状をつくって渡した。あれを見れば、厳将軍は門を開けてくれるであろう。
羽振りのよい連中だから、遅くなっても宿はすぐ見つかるだろうさ。ほら、その証拠に」
「なんだ、その包み」
「売り物の一部をくれた。西域の服だそうだ。通辞の通辞の通辞がいうのには、嚨西から西は、漢族にあまりなじみのない人々が住んでいるから、いまのわたしたちの格好では、目立ちすぎて危ないというのだよ。わたしがしたためた通行証のかわりに、これをくれたのだ」
「嚨西を過ぎたら、これを着るのか?」
「不満そうだな。しかし、身の安全を考えれば、そうするのが一番だ。それと、おもしろい情報を手に入れた。わたしの話をしたところ」
「この状況で、夢の話をしたのか」
「もちろん『夢で見た光景なのだが』などと正直に言ったりしなかったけれど、そういう街なら、見たことがあるそうだ。嚨西を超えたさきの、山中に、似たような光景があるらしい」
「嚨西のさらに向こうなのか……二ヶ月で帰って来られるのだろうか」


※明日から三連休ですねー(^^♪ HPの更新物に対して、いろいろとアイデアはあるのですが、なかなか書く、ということまでたどり着きません(-_-;)時間の使い方、かな。やっぱり。
いろいろと自分の頭を刺激させていかなくちゃと思う反面、どうも保守的(怠惰?)なワタクシの脳みそがそれを拒絶する。いけませんなー。やはりいろんなものに触れないと、こうして書いているものも、やはり素人の悲しさ、どんどんマンネリになっていく。
対策を考えなくっちゃ、と思います。さーて、充実した三連休になりますように。みなさまもドーゾ遊びにいらしてくださいませ(^o^)丿

2006年9月16日(土)
実験連載 塔 9

「初日から葬式、つづいてその手伝い。そして今日で三日目。梓潼にすら辿りつけてない。先が思いやられる」
「ああ」
「しかしこの天気。まるで死者の魂が、この世の名残に、なんの邪魔もされずに大地を見渡せるようにと、天がねぎらいの意味もこめて、晴天をめぐんでくれたようではないか。
最初はどうなることかと思ったけれど、近在の家が総出で葬式を手伝ってくれた。わたしたちは、むしろ邪魔なほどだったな。面倒見のよい夫婦だったようだな。あなたの印象も良かったのだろう?」
「そうだな。夭折した子供、といっても、生きていれば俺くらいだったようだが、泊り客が自分たちの子供に見えると言って、まめに世話をしてくれた」
「おや、元気のない。めずらしいな。あなたがここまで落ち込むとなると、よほどいい夫婦だったのだろうな」
「いや、俺が落ち込んでいるのは、ふたりのもてなしが良かったからというだけではない。あのふたり、俺が見つけたときには、手をつないで折り重なって死んでいた」
「へえ、死ぬ時も一緒とは、よほど仲のよい夫婦だったのだな……なぜため息をつく」
「なんでだろう。純粋に気の毒だと思う気持ちよりも、苛立ちにちかい気持ちがある。こういうと、おまえは軽蔑するかな」
「軽蔑なんぞするものか。なぜそう思う」
「これは、羨望なのかもしれないな。共に生き、そして同日に死にたい、取り残されるのは嫌だと、想いあった相手ならば、そう思うものだろう?」
「そういう話題をわたしに振るかね。まあ、そうじゃないのかな。あなたが昔に付き合ってきた女たちは、そう言っていたのか」
「だいたいは言っていたな。それこそ、戯言だったのかもしれないが、そうでしょうと返事をうながされると、不思議と、俺もそう思うということばが出てこない。とても大事な約束だろう。軽々しくそうだと言うのがためらわれたのだ」
「子龍、たぶん、わたしが思うに、それは女からの、一種の求婚だったのではないだろうか」
「やはり、そうか」
「なんだ、気づいていたのか。たぶん女としては、一緒になってくれと、なかなか言わないあなたに、そういった話題を向けることで、『おまえと共に生き、共に死にたい、だから夫婦になろう』ということばを引き出せるかもしれないと、期待していたのさ。あなたは、なにも答えなかったのか」
「ああそうだ。ひどいことをしたな。恥をかかせてしまったのだからな。おかげで朴念仁だの鈍感だの冷淡だのとさんざん言われたが、罵倒されて当然だ。
そうはいっても、俺は今日まで、そんなことを思い出しもしなかったのだから、余計に救いようのない男だな」
「あの夫婦を見て、思い出したのか」
「ああ。よく知っている夫婦というわけではないが、仲がよかったのはほんとうだ。共にいたいという願いが天にとどいて、共に死ねたのかな。しあわせな夫婦だ。
子供をつぎつぎと亡くしたと言っていたけれど、それでも、血のつながりのない者たちに、あそこまで涙を流してもらえるのだ。みのりの多い人生だったのではないだろうか」
「ふむ、ほんとうにそう思うか


※季節の変わり目になると体調を崩しやすくなりますが、みなさま如何でしょう。はさみの、おかげさまで体調はすこぶるよいのですが、病気は完治する類いのものではないので、油断大敵です。
こちらの体調が復活したと見てか、それともその人なりのサイクルがあるのか、ヘンテコさんが復活した様子でして、アイタタタ…困ったものです。HPに通ってくれるということは、こちらの作品が気に入ってくれているからなのか、と思っていましたが、この拍手の文章からすると、そうじゃないのだなあと、ちょっとガックリ(-_-;)そのせいで今日のニッキのアップが遅くなった、というわけでもないのですけれど、イカン。明日アップの日なのに、なんにも準備ができていない…(>_<)すみません、明日一作品だけになったら、明後日にさらに一作品、という具合に二日に分けてのアップになるかもしれません。あらかじめご了承くださいませm(__)m

2006年9月17日(日)
実験連載 塔 10

「どういうことだ」
「いや、葬式に集まっていた者たちが話していたのを聞いたのだがね、あの夫婦、たしかに仲むつまじい夫婦だったようだが、それもここ数年のことで、以前は、夫のほうが、女癖がわるくて大変だったらしい。いつも妻のほうは、泣いてばかりいたそうだよ」
「ほんとうか?」
「ふつう、葬式となると、故人に遠慮して、あまりあけすけな話はしないものだろう。それなのに、そういった話題が次から次へと出てきたわけだよ。
例によって、あなたはかいがいしく、喪主の手伝いをひたすらしていたから、聞かなかったのだろう。いやはや、あなたはなんでもできる人だ。感心する」
「感心してくれるのはうれしいが、話が逸れているぞ。あの夫婦に、そんな過去があるとは思わなかった」
「こんな話を聞けたのも、話手のほうに、わたしがよそ者だからという安心感もあったのかもしれない。
奥方はよく我慢していたとか、家が傾いた原因も、夫の若い時の放埓さが原因だとか、いろいろとね。
それでも数々の坂を乗り越えて、夫婦仲が円満になったのは、子どもたちが次々と死んでしまってからで、それで夫も改心したらしい」
「そうだったか…」
「最初から最後までしあわせだったわけではなかった。懸命に手探りで、自分たちの幸福を探しつづけた夫婦だったのだろう。
でも、子龍、あなたの気持ちもわかる。わたしには、きっとかれらの気持ちは、おそらく一生涯わからないだろうから」
「まだおまえは若いだろう。状況が変わることだってあるかもしれない」
「変わらないよ。いや、変えることはしない。だから、あなたがそんな落ち込むことはない」
「うん? いや、そういう意味で落ち込んでいたわけではないのだが」
「そうか? ならばいいが」
「おまえ、なんだか成都から離れているうえに、ほかにだれもいないからといって、大胆に過ぎやしないか」
「それは、これがわたしなのだから、仕方がない。それに、あなたがそこまで落ち込んでいるのは、自分のことばかりではないだろう」
「なぜわかる」
「あなたがいま、何を考えているか当てようか。『俺の親が、あんなふうだったら、俺の人生はどうなっていたかな』だ。そうだろう……おや、黙り込んだな。その顔は図星だ」
「いちいち指摘するな」
「つっけんどんにしてもだめだ。そんなふうに、あなたのどんよりした横顔を見ながら歩くのは、こちらとしても辛いから言うのだよ」
「と、いいつつ、なぜ後退する」
「いまから言うことばは、場合によっちゃ、あなたの手の届く範囲のところにいると、ぶん殴られる可能性があるからさ」


※九州および中国・四国地方の方、台風はいかがですか。仙台も今日は曇りであります。明日も雨みたいだなあ…。
さてはて、本日のアップは予定としては一本だけとなりまして、明日、またアップというふうに分けて行います。もし間に合えば、二本一気に、と思うのですが、無理しないでおこうかな、と。
おそらく本日のアップは椒聊のつづきです。アップは夜になる予定です。それではまたあとでお会いしましょう(^o^)丿