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「さあ、持ちたまえ」
「なんの荷物だ、これは。みたところ、なにやら俺の物のような」
「そうだ、ずばりだ。さすが文武両道の蜀将・趙子龍。というわけで出かけるぞ」
「どこへ。そもそも、おまえが俺をやたらと誉めるときは怪しいな。それに、『というわけで』の意味がわからぬ。だいたいなんだって、そんなに興奮しているのだ」
「興奮するに決まっているではないか。夢を見たのだ」
「夢ごときでそんなに興奮するとは……まるで肉つきの骨にしゃぶりついている野良犬のような」
「龍を犬ころに表現するとはすばらしい。しかし、あなたの言葉だから、許してさしあげよう」
「それはどうも。で、なんだって? 夢? 公琰の懇意にしているという夢占い師に、ちゃんと診てもらったのか」
「趙直か? まあ、あれも悪くはないが、わたしは自分で自分の夢解きができるのだよ。非常に興味深い話だったのだ。どうする、聞くか? いいや、時間がもったいないな。見たまえ、この、蜀にしてはめずらしい快晴! おそらくはわれらの旅立ちを祝しているにちがいない。これは吉夢であろうぞ。さあ、いざいかん、『未知なる塔』へ!」
「ますます、待て。だれが行くといった。だいたい、左将軍府のほうはどうした。俺とて仕事があるのだし」
「ああ、それな。大事無い。左将軍府のほうは、こういうときのために劉曹掾(劉巴)がいらっしゃるわけであるし、あなたのほうは、ちゃんと主公に、しばしお借りする旨をちゃんと伝えてある」
「俺は物かなにかか。というより、劉曹掾? あの方に任せて大丈夫か。あの方は、おまえの困り顔が見るのがなにより大好きな、妙な癖がある。おまえの留守のあいだ、困り顔見たさに、なにもしないかもしれないぞ」
「呆れたな、子龍。劉曹掾は、そのあたりは官僚の鏡だぞ。公私のけじめはきっちりつけておられる。そうだな、まあ、旅から戻ったあとに、わたしの部屋に、落とし穴だの、隠し扉だの、文庫を開くとカエルが飛び出してくるだのの仕掛けができているかもしれないことは、覚悟しておいたほうがよかろうな」
「よくそんな人物を主公に推挙したな。でもって、そんなふうで、本当に仕事ができる人物なのか」
「劉曹掾のように癖のある人物を使いこなせるのは、おそらくわたしと曹操くらいなものだろう」
「………きわどいことを。声を落とせ。おい、そこの二人、奥から掃除をはじめてくれ。そう、よろしい」
「あなたの家人にとっては、馬が主人のようなものだな」
「俺の家の事情はどうでもよい。劉曹掾のやることがわかっていて、なんのために出かけるのだ。いや待てよ、変なことを言ったな。『未知なる塔』とはなんだ」
「言葉のままさ。ああ、わたしの話を道すがら聞く気がないのであれば、馬の体を洗いながらでいいぞ。歩きで行くつもりだからな。じっくり名残を惜しんでおけ」
「歩き? おい、全員聞け。おまえたち、俺と、特に軍師にはかまわず、ほかの馬の世話に移ってくれ」
「そうそう、みな、励みたまえ。もてなしなんぞいらぬぞ。てきぱき厩の掃除に励んでくれ。ええと、なんであったかな。そうそう、旅だがね、一ヶ月…いや、二ヶ月は見たほうがよいかな。たぶん西のほうだと思う。周囲が砂地だったから」
「知っている土地なのか? だったら『未知なる』というのはおかしい」
「うまく説明できないな。行き先を見てはいるのだよ。ただし、夢でなのだが」
※みなさま、早速のアンケートへのご協力ありがとうございます。いままでにないコメントの多さにびっくり。でもって、コーエーの雑誌って、『ゲームパラダイス』のことですよね? 一部の方はご存知かもしれませんが、はさみのもその雑誌に何度か投稿し、アンソロジーなんかにも作品を掲載させてもらいました。なつかしー(^。^) そして犬たちにすでに2票。同情票でも二匹は喜んでいることでしょう。さてはて、土日のゲリラアップですが……いささか無理のようです(>_<)ごめんなさい。その代わり、月曜日の本アップはがんばります!なんか時間が経つのが早いなあ。なんでだろう…。でもって、本日よりはじまりました実験連載も、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
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