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この男が、いわゆる『甘い囁き』とやらで女を口説いているところを、孔明はどうしても想像できなかった。
とことん、生真面目なのである。
本当に真面目にその気持ちに向き合わなければ、趙雲は本気にはならない。
まさに真剣勝負。
それでは商売女は疲れてしまうだろうし、耳に挟んだ話では、たまに浮いた噂も出てきたようだが、いまもって独り身であるとか。
それも分かる気がする。
よほどの教養をもち、おのれの生き方に哲学をもった女でなければ、趙雲を正面から受け止めるのはむずかしかろう。
でなければ、その真逆、底抜けに陽気で享楽的。しかしそうなると、あまり長続きしそうにないな、とも予測できる。
追いかけるかたちとなっているその背中が、見るからに落ち込んでいるようだ。
いかん、今度こそ、いかん。失言だった。
孔明は穴埋めをすべく、つとめてほがらかに、言った。
「あなたが口下手だというのなら、わたしは社交下手なのだが、やはり人とこうして交流する、ということは大切なことなのだな」
追従ではなく、実感して思うことであった。
こうして実際に話をしてみなければ、趙雲の本質は、ここまでつかめなかっただろう。
新野城の一室で、不貞腐れた子供のように過ごしていては、なにも気づかなかったにちがいない。
「いろいろ考えていたら、憂さも晴れたよ、ありがとう」
連れ出してくれた趙雲への、感謝の意味もこめて孔明がいうと、趙雲のほうは、なぜだか怖い顔を向けてくる。孔明はうろたえた。
「なぜ怒る」
「直言にすぎる。そういうことを言われるのは嫌だ」
今度は、孔明が顔をしかめる番であった。
「でも、わたしは言いたいのだ」
「なぜ。あんたは士大夫にしては、直言が多いな」
「士大夫だろうとなんだろうと、そんなものに構っていられるか。子龍、もしかしたら、突然、虎が襲ってくるかもしれない」
「は?」
「想像したまえ。それはとんでもなく凶悪で巨大な虎で、あなたの武力を持っても、制することができない。足場も悪いしな。そう、そいつはもしかしたら、この山の神から使わされた虎なのかもしれぬ」
「はあ」
「奮闘努力の甲斐もなく、あなたは虎に倒され、わたしだけが生き残る」
「おい」
「そうして残されたわたしは、泣きながら、こう思うだろう。『ああ、こんなことになるのであったら、さっき、あなたに、山に連れ出してくれてありがとうと言うべきだった』とな」
「で?」
「だからだ」
※八月も最後になりました(^v^)アップダウンの激しい月でしたが、新しい仕事が見つかっただけよしとしなくてはいけませんね。明日より二日おきアップとなりますが、二日おきであるがゆえに濃い内容でお届けできたらなと思います。八月はアップ数の割りに、ほかの連載が進んでいなかったりしますが、「アップするために早く筆の進む連載」のほうがアップが先に出来上がってしまうゆえでりまして…反省。九月から、どんな内容となりますか、みなさま、どうぞお楽しみにー(^^♪
本日のキャラ別アンケートは、これは孔明ですよね。いやあ、二ヶ月で70稼いだよ、このひと…みなさま、ありがとうございましたm(__)m
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