● こうせいニッキ●
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2006年8月21日(月)
椒聊よ、遠き条よ 番外編 おむすび・9

山に入ると馬が通れるくらいの道はひらけていて、鬱蒼としていたが、さかんに往来がある場所であることはわかった。
湿った土のうえに、無数の足跡がある。
たまにけものが横切った痕があり、山の豊かさを物語っていた。

山に入ると、趙雲の口数はぐっと減った。
孔明も黙っていると、たまに、思い出したように趙雲が、想定している『ひみつ』とはまったく違う話題を振ってくる。
新野にきて不自由はないか、襄陽ではどんなふうに暮らしていたのか、友人たちとはどのように過ごしていたのか、旅をしたことあはるか、どこへ行ったことがあるのか、等々。
孔明は、聞くのも好きだが、喋るのも好きである。
問われればすべてに答えた。
ちょうど縦列になって山を登る格好となったが、趙雲は孔明の語る言葉を、ひとことも漏らさず、丁寧に聞いているようで、うなずいたり、相槌をうったり、みじかい感想などもはさみつつ、返してくる。

途中、有名な甘露の水があるというので足を止めて、沢から染み出ている水を汲みに行くこととなった。
触れると、指先の感覚がなくなりそうなほど冷えている水が、苔むした岩の隙間から水が流れているのを、だれがそうしたものか、竹の樋で水を誘導し、だれでもすぐに飲めるように工夫してある。
竹筒でそれを汲み、また、自らも手ですくって水を口にふくむ。
甘い、清らかな味がした。

咽喉に冷たい水がとおったそのあとに、ようやく孔明も頭が冴えてきた。
というよりも、それまで新野のなかで揉まれ、傷つけられてきたためにひねた自分の心が、ここにきて、ようやくすっきりしてきたように思えた。
そして、隣で、おそらく旅人か里の者かが置いたのであろう、休むための石に座って、木漏れ日をまぶしそうに見あげている男が、なにを考えているかを理解した。
『ひみつ』を打ち明けるためだとか、そういった大層な動機ではなく、ごく単純に、孔明が『腐る』といけないために、外に連れ出そうとしたらしい。
それはそれで、うれしい気遣いだ。
まして、そのような気遣いをする男だと思っていなかっただけに、意外であり、やはりうれしい。
うれしいと同時に、つぎに浮かんだ疑問は『なんでまた』ということであった。


※昨日は「こうせいニッキ」と「ブラック関係」を読み返し、ひとり反省会をしておりました。寝たの3時。それもどうかと思いますが、しかし、咽喉元過ぎればなんとやら、頭痛のときにどれだけ苦しんだか、恐ろしい目に遭ったかを思い出し、健康というもののありがたさを、またも忘れている自分に愕然(そして寝てるの3時って……)。
そして、ブラック状態に至るまでの伏線が、日記のそこかしこに散見できることに、われながら「わかってたんじゃん」と呆れた次第。入社して一週間で、休み時間にすでに胸のモヤモヤとした嫌悪感のようなものをおぼえていた、とはっきり書いてあり、それを『霊の仕業』とは申しませんが(そういって辞めたひと、やっぱりすごい理由だなあ)、やはり、なにか不自然さを感じ取っていた様子。
マズイと思った時点で、黙って辞めるべきだったなあ、自分でものすごいストレスを負って、敵を増やしただけだったかなあと、さすがにうんざりいたしました。分かっていて、どうしてそうなる、自分(-_-;) やはりニッキは大切ですね。これからもつづけようと思います。
ところで、昨日はカウンタ回転数が最高記録をマーク。みなさま、ありがとうございましたm(__)m ただ、ずんだ関係のみだったので、「なーんだ」だった方が多かったらどうしよう、とびくびくしているワタクシ。明日のアップはどうしようかな。思案中です(^^♪

2006年8月22日(火)
椒聊よ、遠き条よ 番外編 おむすび・10

「なんでまた、って?」
素直に疑問をぶつけると、趙雲のほうが、ふしぎそうな顔をして孔明に尋ねかえしてくる。
話が進まないではないかと苦りつつ、孔明はさらに話をすすめた。
「わかっていると思うが、わたしはいま、新野でいちばんきらわれている人間だ」
「ああ、そうだな」
端的な言葉で、あっさり肯定されると、それはそれで傷つくものだ。趙雲に他意はないようだが。
「あー、つまりだな、わたしにあまりかまうと、あなたまで悪く言われてしまうぞ。そういうことは考えないのか」
すると、趙雲は奇妙なものを見る目で孔明を見返してきた。
「あいつらは、もともと口が悪いんだ。それを直せというのは無茶な注文というものだ。あんた、高望みはしないほうがいいぞ」
「いや、そう言う意味ではなく」
「たしかに、あんたを批判する声が高いのも事実だが、だからといって、いま新野で起こっている問題のすべてを、あんたに集中させて語る連中はおかしい。
俺からすれば、これまでだって新野では問題が山積みだったんだ。それを解決できる人間がいなくて、そのままになっていたのを、焙りだして見せたのが徐軍師だろう。
けれど、徐軍師は、焙りだしてはみたけれど、解決に乗り出す前に曹操の元に降らねばならなくなった。だから解決する人間が必要だったのだが、徐軍師と同等か、でなければそれ以上の能力をもつ人間でなければ、それは無理だった。
それを見抜いておられたからこそ、主公は、あんたを軍師として招聘した。あんたが来てからめちゃくちゃだ、なんていうヤツは、問題意識のないばか者だ。ほっといてよろしい」

ほっといてよろしい。
劉備でさえ、こうもはっきり新野の人間を断罪することはなかった。
上に立つ者としての立場があるからこそ、あえて口にできなかったのもあるだろうが、『仲間』というどこか美しく、汚すものの許されない言葉を理由に、内部の批判をすることが許されない空気が、新野には、たしかにある。
それを、趙雲はしごくあっさりと破ってみせた。

「ずいぶんはっきりと言うものだな」
「俺はいつもこうだ」
その言葉は、そのとおりで、あとになって孔明は、趙雲が、武将のなかでは唯一、孔明を庇う言動を一貫してくりかえし、孤立しはじめていたことを知る。


※昨日は愚かなことに遅くまで憂さ晴らし(なんの…)に「金色のコルダ」に夢中になっておりまして(果てしなくヘタレ)、体内時計の調整もそっちのけで朝、ぐうぐうと遅寝をしておりましたら、書類選考で落ちたとばかり思っていたところから、今日、面接しませんかと連絡が!
眠気も吹っ飛び、あわてて支度をして面接。OA入力を希望しておりましたが、お話を聞いたところ、OA入力より、ファイリングと受電が中心になりそうだ、というお話。
ファイリング……大好きだ!キラリと目を輝かし「ぜひ!」とお願いしたワタクシ。そして来週からのお仕事が決定いたしました。応援してくださったみなさま、ありがとうございます(^o^)丿
さーて、来週月曜までにHPもらくらくアップが可能なようにしておかなくちゃ。
ところで最近はうれしいことに、アンケートに動きもあって、チェックするのが楽しみです(^^♪ 追う法正、そして逃げる文偉。休昭も3票になりました。そうそう、寒蝉も書き進めておりますよー。アップが遅くなってしまってすみません。慎重に進めておりまして…もうちょっとお時間くださいませ。
ずんだのほうも、くっきーが人気のようですね。「笹かま」の影響か、ジャンヌたちに票が入っているのもうれしいです。まーすます頑張らなくちゃ!(^^)!
久しぶりに晴れ晴れとしたはさみのでありました(^^ゞ 皆様、本当に多謝です~m(__)m

2006年8月23日(水)
椒聊よ、遠き条よ 番外編 おむすび・11

「あなたの夢はなんだ」
唐突にされた孔明の問いに、水場から離れて、さらに上を目指す趙雲は、面食らったように振り向いた。
「なんの謎かけだ、それは」
「思いついたことを口にしたのだが、答えづらいようだったらいい。本当に思いつきだから」
自分でも、なんで急にそんな言葉が口をついたのやら。
趙雲には、新野で浮きつつある二人だから、仲よくしようという、派閥意識があるわけでもなさそうだ。
さきほどの言動からするに、こちらを認めてくれているようであるし、『なぜ近づいてくるのか』という問いには、『興味があるから』という単純な答えが、いちばん真意にちかい気がしてきた。
でもやはり、孔明は不思議に思う。
これまでのなかで、人から好かれることは少なかった(ような気がする)。
しかも、こういう世の酸いも甘いも噛み分けた感のある、年長者からは、生意気だといわれるばかりで評価されたことは少ない。
張飛や関羽といったふたりに代表されるように、反発、あるいは無視をきめこむ、そういった態度をされるのが、ふつうだった。
趙雲はあきれた口調で孔明にいう。
「ずいぶんと漠然としたところを聞いてくるものだな」
「でも、あるだろう。夢。主公にお仕えして、いずれかは一国一城のあるじとなり、名領主として歴史に名を残してみたいとか、あるいは敵将の首をたくさん取って、天下の名将と呼ばれるようになりたいとか、そうでなければ、天下に平和を取り戻したいとかな」
「天下に平和を取り戻したい、か」
「お、そう思うのか」
孔明が身を乗り出すと、しかし趙雲は腕を組み、首をひねっている。
「いや、あまりそういうことは考えたことがなかった。いまの世は、いまにはじまったことではなく、そういうものだと思って過ごしてきたからな。軍師はちがうのか」
問い返されて、孔明のほうがうろたえた。
「そういうものじゃないからこそ、世の中が乱れているのだ」
「そうなのか?」
「そうなのか、って、いや、そうなのだよ」
あたりまえではないか。
呆れる孔明を前にして、趙雲は考え込んでしまったようである。

※月曜日までにということで調整をおこなっておりますが、夜勤で染み付いた夜更かしの癖がなかなか直りません(>_<)
明日アップの日だぞー、しっかりしろ、と自分を励ましてみるものの、なめくじのようなワタクシ。薬を飲んでいなかったからかな?
今日は早めに寝て、明日に期待な、「あすなろ生活」はあいかわらず。ところでモーラでエビータのブロードウェイオリジナルキャストの大好きなOP曲「WHAT A CIRCUS」は、これはこれで上手いなあと思いますが、映画版のアントニオ・バンデラスのほうがかっこよかったなあ。
エビータのサントラは何回聞いても飽きません。それはともかく、目指せ、健康生活! 明日のアップにご期待くださいm(__)m

2006年8月24日(木)
椒聊よ、遠き条よ 番外編 おむすび12

思い出されるのは春のこと。

孔明は、当初、主騎がいらないといって、劉備に趙雲を解任してもらおうと考えていた。
そうして意気込んで劉備のところへと向かったのであるが、孔明が用件を切り出さないうちから、劉備は察したらしく、こういった。
「子龍は、あれはおまえの、一番邪魔にならないヤツだぜ」
「邪魔にならないとは、細作のように人の気配を消す訓練を積んでいるから、ということでございますか」
口を尖らせると、劉備は、いやいや、そうじゃない、と手を振った。
「ともかく口は重いし、秘密は守れといったら、かならず守る。でもって頭もいいから、指示以上のことも楽にこなしてくれる。おまえは、横からああだこうだと言われるのが嫌なほうだろう。
子龍はよほどでないかぎり、口をはさんでこねぇ。逆に、口をはさまれたときは、こりゃヤバイのだなと、自分を点検するいい機会になるんだ」
孔明は憮然としたまま答える。
「そのような貴重な人材でしたら、ずっとお側に置かれては如何ですか」
「子龍は、おまえより五つ上なんだよ」
「それは本人の口から聞きました」
すると、劉備は、顔をぱっと上げて、びしりと孔明を指さした。
「それ!」
「は? どれでございますか」
「おまえ、子龍にそれを聞いて知ったか? それとも子龍が言ったので知ったか?」
劉備の問いに、孔明は首をかしげて、どうであっただろうかと考える。
「子龍は、よほどでないかぎり、自分からてめぇのことをいわねぇんだ。ところがだ、あいつは、おまえには言うんだよ。おまえら、普通にしゃべるだろ?」
「普通に、とおっしゃいますが、まあ、世間話などもいたしますが」
「世間話していると、どっちかが聞き手になる一方だったり、語り手になる一方になったりして、なんだか疲れる相手っているだろ。子龍は、おまえにとってはそうじゃないだろ」
「たしかに、対等、というと言葉がまちがっているかもしれませんが、たがいに、ふつうに意見をやりとりします」
あたりまえのことではないか、主公はなにを言わんとされているのだろうと怪訝に思っていると、劉備は、ずいっと身を乗り出してくる。
「それ。そこがとても重要なのだ」
「それとは?」
「ふつうに、ってとこだよ! 子龍は、おまえが相手だと、自分のことを打ち明けるのに抵抗が無い様子なのだ」
「面妖なことをおっしゃる。それでは、子龍は、ほかの者たちには、ほとんど自分のことを語らぬというのですか」
「うん」
あっさりと劉備は答え、孔明をうろたえさせる。


※なんだか残暑が厳しくなってきた仙台であります。ともかくいまのうちにと小説を『各12本分二週間分ストックつくっとく(リクエスト除く)』作戦敢行中。いや、たぶん、終わらない…
でもって三ヶ月ガーッとがんばって、12月の頭に実家に一旦、実家に帰り、なおかつまた小説をガーッと用意しておく、という計画。去年のように年末年始インフルエンザ→群発頭痛で二ヶ月悶絶死にかけ、という状況に陥らぬようにせねば。うむむ。今回のおむすび、ほんとうになにがある、というお話じゃありませんが、ご感想いただけるとありがたいですm(__
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