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構えなくていい。
その言葉がひっかかり、孔明は、手鏡をのぞきこんでみる。
指摘されてみれば、たしかに暗い、疲れた顔をしているようだ。
「腐る、か」
あの男の指摘ももっともだな、と苦笑いをうかべつつ、孔明は手早く旅支度をすませた。いつもであれば、気に染まぬものに対しては、いやだときっぱり跳ね除けることができるのに、なぜかできなかった。
つまり、本心の、自分の心の奥のほうで、そんなにいやではないと判断しているためであろうか。
そんなことを考えながら手を動かすのであるが、用意するもののほとんどは、衣類や身だしなみを整えるための道具だけだ。
司馬徳操の私塾の仲間たちと旅をくりかえしたため、旅に慣れている、というのもあったが、徐州の故郷から、戦火をのがれて揚州、そして荊州へと転々とした経験から、身の回りのものは、最低限のものしかおかない習慣がみについていた。
そのかわり、その最低限のものに関しては、どんな小さなものでも、こだわりにこだわりぬいた逸品ばかりである。
さて、そうして旅支度をととのえ、さらに文官たちに、自分が留守のあいだの仕事の引継ぎをすませてしまうと、孔明は、趙雲の待つ門へと向かった。
最低でも、視察というからには、小隊のひとつくらいはくっついてくるのだろうと想像していた孔明であるが、意外なことに、待っていたのは、趙雲ひとりであった。
ふつう視察といえば、城と離れている地方の有力者たちに、自分たちの威光を示すため、正装したり、あるいは立派で派手な衣裳に身をつつんで赴くのが常であるが、これまた意外なことに、趙雲は武装はしていても鎧姿ではなく、鎖帷子に上衣を簡単に羽織っただけの、簡素な姿であった。
むしろ、あらわれた孔明の姿を見て、顔をしかめたほどである。
「派手だな」
「視察なのだろう?」
むしろ軽装なのが場違いなのだと口をとがらすと、趙雲は、なにを納得したのか、仕方ないか、とつぶやきつつ、出発の言葉を告げるでもなし、さっさと馬を門にくぐらせようとする。
あわてて孔明はたずねた。
「待て。二人だけか? ほかに随行する兵卒はおらぬのか?」
「おらん」
あっさり言って、趙雲は馬の腹を蹴って、どこへいくと地名も告げず、西へと馬を走らせる。
孔明もあわててそれを追う形となった。
※ こうせいニッキのファイル数が増えてきました。なにがなにやら書き散らした部分、再読に値しないようなものもあり、再編成してまとめようかと考えています。
が、大変だなあ…われながらすごい数。やらなくちゃいけないことはたくさんあるのに、だるさが抜けないのはナゼ(?_?) 早いところ体内時計の調整を進めたいと思います。少しずつですが夜型から朝方に戻りつつありまして、ですから日記の更新もすこしだけ早め。
ところでアンケートの「そのほか」に一票が増えていましたが、「徐庶」でいいのでしょうか。分からぬ(-_-;) メッセージがまた不具合で届かなかったのかな。独断と偏見で「徐庶」に一票とさせていただきます。ちがう!「趙雲の馬」に一票だ! とかいう場合は拍手などでお知らせいただけたらと思います。
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